君のような女は僕がいなくても1人で生きていけるだろうと告げて逃げた夫が1年後、愛人を連れて泣きついて戻ってきました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
25 / 38

第25話 愚かな男で助かった

しおりを挟む
 私が呆れている側からジルベールのカジノ話はまだ続く。

「それでとうとう僕達は一文無しになってしまったんだ。当然ホテルに泊まることも出来ないし、それどころか気付いたら借金まで負っていたんだよ。そしてカジノを経営しているオーナーというのに捕まって借金の返済を求められたんだ」

「ふ~ん…そう…」

話を聞きながら私は嫌な予感がしてきた。まさか…ジルベール…クレメンス家の屋敷や領地を借金の担保にしていないだろうか?

「僕とイザベラはオーナーの前に引きずり出されて、借金を返すように言われたんだけど…生憎僕達にはもう何一つ財産が残っていなかったんだ。借金の肩代わりをしてくれる人物のあても無かったし、担保にする物も思い浮かばなかったし…」

「は?」

今…ジルベールは何と言った?

「ねぇ、貴方はカジノのオーナーに借金の肩代わりをする人物や担保にする物を差し出すように言われたのよね?」

「ああ、そうだよ。だけど僕とイザベラはそんな当てが全く無かったからね…何もありませんって答えたんだ」

「それってつまり私やクレメンス家の財産を担保にしなかったってわけね?」

ひょっとして…クレメンス家を犠牲にしない為に…?少しは見込み?があるのだろうか?
しかし…。

「あ、そうかっ!その手があったのか…!すっかり忘れていたよ。君とクレメンス家を利用すれば良かったのか…そうと分かれば、あんなに惨めな奴隷のような生活をしないで済んだのか…」

「は…?」

ひょっとして…ジルベールが私を借金の肩代わりに指名しなかったのも、クレメンス家を担保にしなかったのも単に思いつかなかったからだったのか?
その言葉に私は怒りを覚えた。しかし、当のジルベールは私の怒りに気づくこと無く、自分がいかに東の大陸で苦労していたかを語っている。

「結局僕達はお金を払えない代わりに、身体を使って借金を返すことになったのさ。無償で朝早くから深夜まで働かされてようやく解放されたんだけど、僕達の所持金はゼロ。このままでは生活出来ないから、戻ってくることにしたんだよ。だけど本当に大変だった…。だって僕達は全くお金を持っていなかったんだから。働いてお金を稼ぎながら…1年たってようやくここへ戻ってくることが出来たんだ…」

「あら…そうなの?でもまだ1年経過していないわよ。明日で丁度1年よ」

言いながら、私は心の中で舌打ちした。全く…どうしてよりにもよって今日、戻ってきたのだろう。せめて明日だったら…何もかもうまくいっていたのに。

思わず頭を抱えて自分の運命を呪いかけた時…不意にジルベールが言った。

「そう言えば、この屋敷にいる使用人達…全員僕の知らない使用人たちばかりだったよ。一体どういうことなのかな?」

「え?」

その言葉に顔を上げた。今、ここにいる使用人たちは…全員ジルベールの事を知らない…?つまり、ジルベールが本来の領主である事を知る者は、私とフレデリック、そしてセイラの3人だけ。そして領民達もジルベールの顔を知る者は1人もいない。
けれど知らないのも無理はない。何故ならジルベールは領民達を蔑ろにして、領地の視察にすら一度も行った事がないのだから。

そしてジルベールの両親は…愚かな息子に完全に愛想をつかし、領地経営を成功させた私の腕を買い、今ではすっかり信用されている。


 そう、今や私の周りは味方しかいないということになる。
それなら…事をうまく運べるかもしれない。

フフフ…ジルベールが愚かな男で本当に助かった。

私は心のなかでほくそ笑んだ―。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

【完結】愛してきた義妹と婚約者に騙され、全てを奪われましたが、大商人に拾われて幸せになりました

よどら文鳥
恋愛
 私の婚約者であるダルム様との婚約を破棄しろと、義父様から突然告げられました。  理由は妹のように慕っているマーヤと結婚させたいのだと言うのです。  ですが、そんなことをマーヤが快く思うはずがありません。  何故ならば、私とマーヤは本当の姉妹のように仲が良いのですから。  あまりにも自信満々に言ってくるので、マーヤの元へこのことを告げます。  しかし、そこでマーヤから驚くべき言葉を告げられました。  婚約者のダルム様のところへ行き、助けを求めましたが……。  行き場を完全に失ったので、王都の外へ出て、途方に暮れていましたが、そこに馬車が通りかかって……。

さよならをあなたに

キムラましゅろう
恋愛
桔梗の君という源氏名を持つ遊君(高級娼婦)であった菫。 たった一人、州主の若君に執着され独占され続けて来たが、 その若君がとうとう正妻を迎える事になった。 と同時に菫は身請けをされるも、彼の幸せを願い自ら姿を消す覚悟を決める。 愛していても、愛しているからこそ、結ばれる事が出来ない運命もある……。 元婚約者としての矜持を胸に抱き、彼の人生から消え、そして自らの人生をやり直す。そんな菫の物語。 ※直接的な性描写はないですが行為を匂わす表現が作中にあります。 苦手な方はご自衛ください。 重度の誤字脱字病患者の書くお話です。 誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 そして作者はモトサヤハピエン主義です。 そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんでも投稿します。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

【完結】夫が愛人と一緒に夜逃げしたので、王子と協力して徹底的に逃げ道を塞ぎます

よどら文鳥
恋愛
 夫のザグレームは、シャーラという女と愛人関係だと知ります。  離婚裁判の末、慰謝料を貰い解決のはずでした。  ですが、予想していたとおりザグレームとシャーラは、私(メアリーナ)のお金と金色の塊を奪って夜逃げしたのです。  私はすぐに友人として仲良くしていただいている第一王子のレオン殿下の元へ向かいました。  強力な助っ人が加わります。  さぁて、ザグレーム達が捕まったら、おそらく処刑になるであろう鬼ごっこの始まりです。

ヒロインに騙されて婚約者を手放しました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
地味で冴えない脇役はヒーローに恋しちゃだめですか? どこにでもいるような地味で冴えない私の唯一の長所は明るい性格。一方許嫁は学園一人気のある、ちょっぴり無口な彼でした。そんなある日、彼が学園一人気のあるヒロインに告白している姿を偶然目にしてしまい、捨てられるのが惨めだった私は先に彼に婚約破棄を申し出て、彼の前から去ることを決意しました。だけど、それはヒロインによる策略で・・・?明るさだけが取り柄の私と無口で不器用な彼との恋の行方はどうなるの?

処理中です...