25 / 27
3 ブラッドリー・モーガン 13
しおりを挟む
俺が投げた石は馬の脇腹に当たった。
「ヒヒーンッ‼」
大きく馬がいななき、暴れ出した。
「ど、どうしたんだ⁉」
馬に石が当たったことに気付いていなかったアドルフは自分の愛馬を宥めようと体に触れた途端――
ガッ‼
大きく振り上げた後ろ足がアドルフの腹を直撃した。そのまま後ろに吹き飛ばされて床に叩きつけられ、四方に敷き詰めてあった藁が舞う。
そしてアドルフは倒れこんだままピクリとも動かない。
「……」
俺はその様子を物陰からじっと見ていたが……不思議と罪悪感は感じなかった。
多分、これで三回目だったからなのかもしれない。
「アドルフ?」
アドルフに遠くから声を掛けるも反応は無い。ふ~ん……意識が無いのか。
でもまぁ、死ぬことは無いだろう。何しろあいつが飛ばされた先には幸い藁が沢山敷き詰めてあったのだから。
「きっと、藁がクッションになって守ってくれただろう」
こんな事故になるとはあまり予想していなかったが……俺がやったという証拠は出てくることは無いだろう。何しろ、今までだって俺が咎められたことは一度も無いのだ。
「お前が悪いんだぞ、アドルフ。エディットを俺から奪おうとするお前が……」
身動き一つしない、アドルフに向けて言葉を投げると俺は厩舎を後にした。
アドルフがどうなろうと知った事か。仮に万一のことがあれば、俺がエディットを慰めればいいんだ。
そして、記念式典パーティーにもう一度誘えばいいのだから。
多分、この頃の俺は……もうすでに、どこか壊れてしまっていたのかもしれない。
アドルフをあんな目に遭わせておいて平気でいられるのだから――
****
アドルフが意識を無くして五日が経過していた。エディットは毎日アドルフの元へ足繁く通っている。
それが気に入らなかった。
畜生、これじゃ何の意味も無いじゃないか。いい加減アドルフを諦めさせなければ……よし、アドルフの様子を一緒に見に行こうと声を掛けて何としても説得してやる。もう、あいつのことは諦めろと——
それなのに、とんでもない邪魔が入ってしまった。それはラモンとエミリオだ。
あのふたり、俺がエディットに声を掛けているとあろうことかダーツに誘ってきた。
一緒に今日行く約束をしていた? う~ん……そう言えばそんな話をした気がするが、あいつらの話なんて半分まともに聞いちゃいないから内容なんて一々おぼえちゃいなかった。
――という訳で、俺はエディットとアドルフの屋敷に行くことを断念せざるを得なかった。
ふん、でもまぁいいか。又明日にでもエディットに声を掛ければいいだけの話だ。
多分アドルフの目が覚めることは無いだろう。仮に目覚めたとしても、誰のせいで馬に蹴られる事故が起きたか調べられないに決まっているのだから。
このときまでの俺は余裕の気持ちを持って構えていた。
けれど、その考えは大きな間違いだった。
アドルフは目覚め……あげくにすっかり記憶を無くしてしまっていたからだ——
「ヒヒーンッ‼」
大きく馬がいななき、暴れ出した。
「ど、どうしたんだ⁉」
馬に石が当たったことに気付いていなかったアドルフは自分の愛馬を宥めようと体に触れた途端――
ガッ‼
大きく振り上げた後ろ足がアドルフの腹を直撃した。そのまま後ろに吹き飛ばされて床に叩きつけられ、四方に敷き詰めてあった藁が舞う。
そしてアドルフは倒れこんだままピクリとも動かない。
「……」
俺はその様子を物陰からじっと見ていたが……不思議と罪悪感は感じなかった。
多分、これで三回目だったからなのかもしれない。
「アドルフ?」
アドルフに遠くから声を掛けるも反応は無い。ふ~ん……意識が無いのか。
でもまぁ、死ぬことは無いだろう。何しろあいつが飛ばされた先には幸い藁が沢山敷き詰めてあったのだから。
「きっと、藁がクッションになって守ってくれただろう」
こんな事故になるとはあまり予想していなかったが……俺がやったという証拠は出てくることは無いだろう。何しろ、今までだって俺が咎められたことは一度も無いのだ。
「お前が悪いんだぞ、アドルフ。エディットを俺から奪おうとするお前が……」
身動き一つしない、アドルフに向けて言葉を投げると俺は厩舎を後にした。
アドルフがどうなろうと知った事か。仮に万一のことがあれば、俺がエディットを慰めればいいんだ。
そして、記念式典パーティーにもう一度誘えばいいのだから。
多分、この頃の俺は……もうすでに、どこか壊れてしまっていたのかもしれない。
アドルフをあんな目に遭わせておいて平気でいられるのだから――
****
アドルフが意識を無くして五日が経過していた。エディットは毎日アドルフの元へ足繁く通っている。
それが気に入らなかった。
畜生、これじゃ何の意味も無いじゃないか。いい加減アドルフを諦めさせなければ……よし、アドルフの様子を一緒に見に行こうと声を掛けて何としても説得してやる。もう、あいつのことは諦めろと——
それなのに、とんでもない邪魔が入ってしまった。それはラモンとエミリオだ。
あのふたり、俺がエディットに声を掛けているとあろうことかダーツに誘ってきた。
一緒に今日行く約束をしていた? う~ん……そう言えばそんな話をした気がするが、あいつらの話なんて半分まともに聞いちゃいないから内容なんて一々おぼえちゃいなかった。
――という訳で、俺はエディットとアドルフの屋敷に行くことを断念せざるを得なかった。
ふん、でもまぁいいか。又明日にでもエディットに声を掛ければいいだけの話だ。
多分アドルフの目が覚めることは無いだろう。仮に目覚めたとしても、誰のせいで馬に蹴られる事故が起きたか調べられないに決まっているのだから。
このときまでの俺は余裕の気持ちを持って構えていた。
けれど、その考えは大きな間違いだった。
アドルフは目覚め……あげくにすっかり記憶を無くしてしまっていたからだ——
10
あなたにおすすめの小説
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
追放された公爵令嬢はモフモフ精霊と契約し、山でスローライフを満喫しようとするが、追放の真相を知り復讐を開始する
もぐすけ
恋愛
リッチモンド公爵家で発生した火災により、当主夫妻が焼死した。家督の第一継承者である長女のグレースは、失意のなか、リチャードという調査官にはめられ、火事の原因を作り出したことにされてしまった。その結果、家督を叔母に奪われ、王子との婚約も破棄され、山に追放になってしまう。
だが、山に行く前に教会で16歳の精霊儀式を行ったところ、最強の妖精がグレースに降下し、グレースの運命は上向いて行く
婚約破棄されたら、辺境伯とお試し結婚することになりました
ミズメ
恋愛
婚約者を妹に奪われ、悪女として断罪された公爵令嬢フィオレッタ・グラシェルは、王都を追われ、身分を隠して辺境の町で静かに暮らしていた。ある日、迷子の少女ティナと出会い、川辺で花を摘み笑い合うひとときを過ごす。そこに現れたのは、ティナを捜していた辺境の若き領主ヴェルフリート・エルグランドだった。
ティナに懐かれたフィオレッタは子育てのために契約結婚をすることに。ティナの子守りをしながら、辺境で自らの才覚を発揮していくフィオレッタに、ヴェルフリートや領地の人々も惹かれていく。
「俺は、君を幸せにしたい」
いずれ幸せになる、追放令嬢のお話。
・感想いただけると元気もりもりになります!!
私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね?
みこと。
恋愛
鉛色の髪と目を持つクローディアは"鉱石姫"と呼ばれ、婚約者ランバートからおざなりに扱われていた。
「俺には"宝石姫"であるタバサのほうが相応しい」そう言ってランバートは、新年祭のパートナーに、クローディアではなくタバサを伴う。
(あんなヤツ、こっちから婚約破棄してやりたいのに!)
現代日本にはなかった身分差のせいで、伯爵令嬢クローディアは、侯爵家のランバートに逆らえない。
そう、クローディアは転生者だった。現代知識で鉱石を扱い、カイロはじめ防寒具をドレス下に仕込む彼女は、冷えに苦しむ他国の王女リアナを助けるが──。
なんとリアナ王女の正体は、王子リアンで?
この出会いが、クローディアに新しい道を拓く!
※小説家になろう様でも「私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね? 〜不実な婚約者を見限って。冷え性令嬢は、熱愛を希望します」というタイトルで掲載しています。
幼馴染に夢中の夫を捨てた貴婦人は、王太子に熱愛される
Narian
恋愛
アイリスの夫ロイは、新婚の頃から金髪の愛らしい幼馴染・フローラに夢中で、妻には見向きもしなかった。
夫からは蔑ろにされ、夫の両親からは罵られ、フローラからは見下される日々。そしてアイリスは、ついに決意する。
「それほど幼馴染が大切なら、どうぞご自由に。私は出て行って差し上げます」
これは、虐げられた主人公が、過去を断ち切り幸せを掴む物語。
※19話完結。
毎日夜9時ごろに投稿予定です。朝に投稿することも。お気に入り登録していただけたら嬉しいです♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる