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第7章 3 月光の下で (イラスト有り)
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1
私とドミニク公爵は月明かりの中、無言で家路へと歩いていた。
本来ならば転移魔法を使えば簡単にリッジウェイ家へ帰れるはずなのに、ドミニク公爵はそれをしないで歩いている。
と言う事は、何か私に話があるのだろうか。
ちらりと隣を歩く公爵を私は盗み見る。
一体彼は何を考えているのだろう・・・?
「どうした?俺の顔に何か付いているか?」
バレてたっ!
「い、いえ。何でもありません。」
私はさっと視線を逸した。
それを見た公爵はフッと口元に笑みを浮かべると言った。
「これからジェシカの家に行き、お前の両親に伝える。今回の見合い話は無かった事にして欲しいと。」
「え?」
私は顔を上げた。
「それがお前の望みだろうし、俺に関わらなければお前にも先程のように余計な火の粉が飛ぶ事も無いしな。」
公爵は、私の目をじっと見つめながら言った。
「ドミニク公爵様のご両親と私の家族には何と説明するのですか?」
「そうだな・・・。実は俺には気になる女性がいるから、ジェシカ・リッジウェイとは結婚する気は無い・・・。だから今回の話は無かった事にして欲しい。とでも言おうか?」
公爵は私を見つめながら言った。その話は作り話なのかもしれないが、妙に真実味を帯びていた。
「ドミニク公爵様。もしかしたら、本当にそのような女性がいるのではないですか?」
「え?」
公爵は一瞬目を見開いて私を見た。
「どんな女性かは存じませんが・・・。その方と上手くいくと良いですね。」
「あ、ああ・・・そうだな。」
ドミニク公爵は寂し気に笑った。
「それでその女性には思いは告げるのですか?」
何となく興味が湧いたので聞いてみた。
「いや・・・恐らくは・・無い。だろうな・・。」
「そうなのですか?でも思いを告げなければ、ずっと相手に気付かれないままになりますけど、それでも構わないのですか?」
「いや、いいんだ。俺はそれでも構わないと思っている。」
何処か諦めた風に話す公爵。
そうなると、きっと公爵は将来好きでも無い相手と政略結婚をする事になるのだろうな・・。何となく気の毒に思える。まあ、私との見合いも結局は政略結婚をさせようと両家が目論んだ事だったわけだし。
うん・・・でもお見合い話を無しにしてくれたのは私にとって非常に助かる事だ。
でも、そうなると私のお見合いの話が無くなった事を知ったアラン王子やフリッツ王太子の対応に迫られるのでは・・。
これはこれで、私にとっては厄介な問題になってくる。
私が考え込んでいると公爵が言った。
「でも、残念だったな。」
「?」
「ジェシカとは・・・良い友人なれるかと思ったのだが。」
「友人・・・ですか?」
私は公爵の顔を見上げた。
「私を友人だと・・本当に・・・・そう思って下さるのですか・・?」
私はじっと公爵を見つめると尋ねた。そう、今の公爵は私の事を友人になれるかもと言ってくれているが、果たしてその言葉が何処まで続くのだろう?
だって貴方は私を捕えて、死刑を言い渡す人なのだから・・・。
「ジェシカ・・・・?」
私の名前を不思議そうに呼ぶ公爵。いけない、自分の心の動揺を知られる訳には。
もし知られたら、理由を問い詰められるに決まっている。
私はさっと公爵から視線を逸らした。
「まただ・・・。」
「え?」
「またお前はそうやって俺の視線から目を逸らすのだな。やはり口ではうまい事を言いながら、本当は俺の事を化け物だと思って恐れているのだろう?」
公爵の声が震えている。いけない!私はまた勘違いをさせてしまっている。
「違いますっ!私はドミニク公爵様の事を恐れている訳ではありませんっ!」
「なら、何故なんだ?何故お前は俺の視線を避ける?理由を教えてれ!」
ドミニク公爵は羽織っている黒いマントを風にたなびかせたまま私の頬に手を添えて、まるで必死で縋るような眼つきで見つめてきた。
「そ、それは・・・。」
どうしよう、貴方は私の夢の中で出てきました。そして死刑を言い渡したのです。
だから、貴方を見ると夢の出来事を思い出すので視線を逸らすのです・・・なんて話をしても信じて貰えるのだろうか?
いや、それ以前に気を悪くするかもしれない。
そうなると私は公爵から恨みを買い、裁かれる時期が早まってしまう可能性も出て来る・・・。
だけど・・こんなに必死な公爵にこれ以上はぐらかすのは無理かもしれない。
重要な部分だけ除いて、予知夢と言う事にして話しをする事にしよう。
「わ・・分かりました・・。ならお話します。私はたまに予知夢を見るのです。」
「予知夢?」
私の肩から手を離した公爵が首を傾げた。
「はい、実際に夢で見た事が実はこれから起こる出来事だった・・・そんな夢をみるのです・。」
「夢・・・。」
「信じられないかもしれませんが、ドミニク公爵様は一度だけ私の夢に出てきた事があります。私は夢の中で罪を犯し・・・公爵様に捕らえられ、死刑を言い渡されました。」
「な・・・何だって?!」
公爵は驚愕の表情を浮かべた。
「ですが・・・ある女性の言葉で、ドミニク公爵様は考えを改めて、わ・・・私を流刑島へと送る事に・・・。」
ああっ!ついに言ってしまった・・・・。マリア先生にしか話したことが無かったのに・・。
きっとこんな夢の話、笑い飛ばされるか、失礼な事を言うなと怒鳴られてしまうかもしれない。けれど公爵の反応は違った。
「そう・・・か。だからお前は初めて俺を見た時に気絶してしまったのだな?俺の顔から視線を逸らすのもその為だったのだな?」
公爵は下を向き、声を震わせている。
「あ・・・。」
どうしうよう、酷く傷つけてしまったかもしれない。やはりこんな事公爵には話すべきでは無かったのだ。
「だが・・な。」
公爵は私の顔をじっと見つめると言った。
「いいか、ジェシカ。それは所詮只の夢だ。俺がお前に死刑を言い渡す?そんな馬鹿な事ぜったいにあるはずが無い!」
「ドミニク公爵様・・・。」
「だから・・・そんな不安そうな顔をするな!約束する、俺は決してお前を傷つける事は絶対にしない!この先もずっと・・・っ!それに俺では無い他の誰かがお前を傷つけるような事をする者がいたとしたら、俺が必ずお前を守るから・・・っ!」
そして公爵はきつく私を抱きしめると言った。
「・・・俺達・・・友人同士なんだろう・・・?」
公爵の身体がまるで自分を捨てないでと訴えているかのように震えている。
それなら私はその言葉を信じてみよう・・・。
「はい、私達は・・・ドミニク公爵様は私の大事な友人です。」
そしてそっと背中に手を回した—。
「あの、公爵様。私の友人として、一つお願いした事があるのですが、よろしいですか?」
「うん?何だお願いとは?」
公爵様が私の事を寒くならないように自分の羽織っているマントを私にも被せてくれ、2人で並んで歩いていた時に私は言った。
「公爵様さえ良かったら・・・もう少しだけお見合いの話を断らないで頂けますか?とりあえずは保留という事で・・・。」
「ああ・・別に俺は構わないが・・・良ければ理由を教えて貰えないか?」
「はい・・。私がアラン王子とフリッツ王太子に結婚を申し込まれているじゃ無いですか。」
「そうだな。確かに。全く・・・・。」
公爵が何故か不機嫌そうに返事をする。
「私、それがすごく困っているんです。」
「何?困っているのか?」
「はい、私はアラン王子ともフリッツ王太子とも結婚する気は無いんです。でも相手は王子様ですから、無下に断る事が出来なくて・・・。」
「確かに・・・な。」
「だから・・ドミニク公爵様。お見合いの話、どうかアラン王子とフリッツ王太子が私との結婚を諦めてくれるまで、保留という形にしておいて頂けないでしょうか?」
「な?何だって?本気で言っているのか?」
何故かドミニク公爵が動揺しまくっている。
「ええ・・・ちょっとした時間稼ぎと言うか・・・・何か他にお2人を諦めさせる良い方法が見つかるまでの間は・・。」
そうだ、その間に逃亡の準備をしておけば良いのだ。うん、我ながらナイスな考えかも。
「あ、ああ・・・。成程、そう言う訳か・・。」
ドミニク公爵は軽い溜息をつくと言った。
そう言えば・・・・私は1つ思い出したことがあった。
「あの・・ドミニク公爵様・・。もう一つお願いしたい事があるのですが・・・よろしいでしょうか?」
「うん?何だ?言ってみろ。」
どうしよう、こんな事お願いするのはひょっとすると恥ずかしい事なのかもしれないが・・・他に頼めそうな人物が思い当たらない。
「じ、実は・・・私、以前・・アラン王子にマーキングされているんです・・。まだ残っているでしょうか・・・?もし、残っていた場合、消す事は可能ですか・・?」
「何?マーキング?」
公爵の足がピタリと止まった。
あ・・・やっぱりそうなるよね?
「いつマーキングされたのだ?」
「この・・・半月以内・・です。」
「半月以内なら、余程強いマーキングで無い限り、消えていると思うが・・・。」
そこまで言いかけて、公爵の顔つきが変わった。
ああ!やっぱり・・私とアラン王子の関係がバレてしまったかもしれないっ!
しかし、公爵はそれには触れずに言った。
「分かった・・・それでは確認してみる。」
公爵は私の頭に手を触れると、目を閉じた。
「・・・。」
暫く意識を集中させていたようだが、やがて目を開けた。
「そ、そうだな・・・。まだ若干マーキングが残っている。これを消せば良いのだな?」
「はい、よろしくお願いします。」
すると再び公爵は私の頭に手を乗せて目を閉じ、暫く無言だったがやがて目を開けて言った。
「よし、これでマーキングは消した。もう誰からのマーキングもついていないから安心しろ。」
「ありがとうございますっ!」
私は笑顔で挨拶した。
それに対して、黙って頷く公爵。
良かった、これで私は誰からの監視も受けずに済むんだ—。
2
「お父様、お母様、お兄様、ただいま戻りました。」
ドミニク公爵と帰宅した私を家族とアリオスさん、そしてマリウスが出迎えた。
家族とアリオスさんは笑顔でドミニク公爵に挨拶したのだが・・・ただ一人、マリウスだけは公爵を射抜くような鋭い視線で睨みつけていた。
ドミニク公爵はそれに気付いているようだが、素知らぬ顔をして挨拶をした。
「いきなりジェシカ譲を連れ出してしまい、申し訳ございませんでした。今後の事を2人で話し合った結果、お互いの事を良く知り合った上で、婚約をするかどうかを決めていきたいと思っております。何卒宜しくお願い致します。」
それを聞くと父は歓喜した。
「おお!そうだったのですか?いや~今迄何度も見合いをさせてきましたが、いつも先方から断られてばかりで・・・。ですが、そうなりますと、フリッツ王太子とアラン王太子からの婚姻の申し出は・・・。」
父は私をチラリと見るとすかさず公爵は言った。
「その件に関してはこちらからフリッツ王太子とアラン王子にお伝えしますのでご安心下さい。」
おお~っ!公爵は、なんて頼もしい人なのだろう。やっぱり異性の友人がいるのは心強い。私が公爵をじっと見つめていると、マリウスが険しい顔で前に進み出てきた。
「ドミニク公爵様、いくら何でもまだ婚約も決まっていないうちにお嬢様のお部屋に入り、リッジウェイ家に黙って連れ出すのはいかがなものかと思いますが。今後はこのような事は謹んで頂けますか?」
マリウスの言葉にその場に居た全員が呆気に取られてしまった。
ねえ?それをマリウスが言うの?主と下僕という関係でありながら、一番私にセクハラ行為をしてきた貴方がっ?!
しかし、流石にアリオスさんが、マリウスを咎めた。
「マリウス、今の言動は行き過ぎだ。仮にもお前はこの家の下僕の身分。分をわきまえるのだ。」
「はい・・・申し訳ございませんでした・・・。」
マリウスは唇を噛み締め、悔しそうに返事をする。
そしてその様子を見た公爵は言った。
「確かに彼の言うとおりだったかもしれません。やはり主の心配をするのは下僕の立場であれば、当然心配にはなるでしょうしね。以後、このような事の無い様に気をつける事に致しましょう。」
その口ぶりは何処かマリウスを挑発しているようにも感じた。
マリウスもそれに気づいたのか、より一層憎しみを込めた目でドミニク公爵を睨み付ける。
ねえ?ちょっと!少しは自分の感情を抑える事が出来ないの?仮にもリッジウェイ家の当主の前で、しかも相手は公爵家の人に対してそのような眼つきをするなんて普通じゃあり得ないでしょう?!
私はハラハラしながら公爵を見上げたが、全くマリウスの態度に動じた様子は見られなかった。
やはり・・・この公爵は只物では無いかもしれない。
でも、このままではマズイ・・・。
そこで私は言った。
「あ、あの公爵様を門の前までお見送りしてきます。では参りましょうか?ドミニク公爵様。」
私はさり気なく公爵の腕に手を回すと、彼を連れて城を出た。その一瞬マリウスと目が合った時、恨めしそうな目で私を見ていたので背中がゾワリと総毛だってしまった。こ、怖い・・・!
今夜は1人で部屋にいるのが非常に怖いっ!絶対に鍵をかけて休まなければっ!
公爵は私と2人きりになると、案の定すぐに私に尋ねて来た。
「ジェシカ・・・あのマリウスとかいうお前の下僕は・・ひょっとするとお前に好意を寄せているのではないか?」
ええ、そうですよね?誰が見ても分かりますよね?!恐らくそんな事私の家族だって十分承知していると思いますよ?!
「は、はい・・・。そうなんです・・・。」
私は下を向いて返事をした。
「そう・・・か。中々度胸のある人物の様だな?リッジウェイ家の当主達の前だと言うのに、公爵家の俺に平気で敵意のある視線をぶつけてくるなど・・・普通の人間にはそのような真似は出来まい。余程・・・ジェシカの事を好きなのだろう。」
私は何と返事をして良いか分からずに、黙って俯いていた。
「ジェシカ・・・。あのマリウスとかいう男・・お前から遠ざける事は出来ないのか?」
「え?」
私は顔を上げると、そこには心配そうな目で私を見つめる公爵の顔があった。
「ジェシカ、正直に答えてくれ。あの男は危険な香りがする。・・・目的を達成するには手段を選ばない男のように俺は感じるんだ。側に置いておいても大丈夫そうなのか?」
公爵は私の友人になってくれた。ならその友人に私が抱えている問題を打ち明けてもう良いのかもしれない。・・・かなり恥ずかしい事ではあるかもしれないが、公爵なら私の力になってくれそうだ。
「あ、あの・・・。マリウスは・・一応私の下僕という事になっていますけど・・全然私の命令に・・応じないんです。と言うか、歯向かってばかりで・・。その事が非常に困っています・・。」
「ジェシカ、本当にそれだけなのか?本当はもっと困りごとがあるのでは無いか?俺はお前の友人として、心配しているんだ。・・・隠し事はせずに、本当の事を話してくれないか?」
どうしよう、こんな事相談しても良いのだろうか?でも公爵は私の為に力になってくれるのいかもしれない。だけど相手はマリウスだ。一筋縄でいかないのは目に見えている・・
「ジェシカ、俺を見ろ。お前の力になりたいんだ。ありのままの事をを包み隠さず正直に話して欲しい。」
公爵のオッドアイの瞳を見ていると・・何故だか自分の心の内を吐露したくなってしまう。
私は覚悟を決めた。
「あの・・・驚かないで聞いて下さいね?正直に話しますと・・マリウスと一緒にいると、て、貞操の危機を感じるんです・・・。」
「な・・・何だって?」
公爵は驚愕の表情を浮かべて私を見た。
「その話は・・・ほ、本当なのか?」
「は、はい。・・・・。マーキングと称してキスされた事も1度や2度で済んだ事はありません・・。私に好意を寄せている事もとっくに知っています。」
「何てことだ・・・。」
公爵は額を手で押さえると言った。
「お前はそんな男を見直に置いておいたのか?それではお前の身があまりに危険では無いか?あの男の目を見たか?お前の下僕に対してこのような言い方はしたくは無いが、かなり狂気をはらんだ目で俺とお前を見ていたぞ?正直・・・今夜はお前をあの家に置いておくのが心配になるくらいだ。」
「ドミニク公爵様も気が付いていましたかっ?私も最後にマリウスの目を見た時に背筋が寒くなってしまいました。・・・正直に言うと・・今夜あの城にいて・・・私は無事に朝を迎える事が出来るのか怖くなってしまって・・・。」
すると、少しの間公爵は何か考えていた様子だったが、やがて私に言った。
「どうだ?これは・・俺からの提案なのだが・・・今夜は俺の住む屋敷に来るか?どうせ両親とは別の場所に住んでいるし、屋敷に居るのは数人の使用人だけだ。全員口が堅いし、お前が俺の屋敷に一晩泊っても大丈夫だ。」
公爵の提案は私にとって願ったり叶ったりだが・・・・
「で、でも私が城に戻らなければ両親もマリウスも怪しみますよ?」
「それなら大丈夫だ。お前の身がわりになる人形を作りだすこと位俺には容易い」
公爵は言うと、ポケットから真っ白い布で作られたのっぺらぼうの人形を取り出すと、右手をかざして何やら呪文を唱え始めた。
すると、突然その人形が公爵の手を離れると、激しく輝きだした。
余りの眩しさに私は目を閉じ、次に目を開けた時には・・・なんともう1人の私が目の前に立っていたのである—。
3
「す、すごい・・・。一体どうなっているのですか?」
私は目の前に立っているもう1人の自分を見ながら公爵に尋ねた。その人形は目は閉じたままである。
「ああ、これは魔力をかけられた人形なのだ。相手の姿をそのまま投影する事が出来る。ただこのままでは只の人形に過ぎない。なのでジェシカの魂をコピーしてこの人形に入れる。」
公爵の何気なく言った言葉に私は仰天した。
「えええっ?!た、魂をコピーですかっ?!そんな事が出来るのですかっ?!」
「ああ、一時的な物だが・・・出来る。まあせいぜい効果は7~8時間程で切れてしまうが・・。」
「あの、効果が切れた後はこの人形はどうなるのですか?」
「只の人形に戻る。」
ヒエエエエッ!な、なんて怖ろしい・・・。朝になって私が人形になっているのを見た家族が一体どれ程驚くか・・・。
私のそんな気持ちに気が付いたのか、公爵は言った。
「大丈夫だ。人形の効果が切れる頃にお前を部屋へ送り届けてやるから何も心配するな。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
良かった、それなら安心だ。
「それで・・・どうすれば私の魂のコピーを取る事が出来るのですか?」
「ではジェシカ、この人形と向かい合って手を合わせるのだ。」
「は、はい・・・。」
私は自分の人形の前に立ち、両手を広げて自分の顔の前にかざすと、人形は同じ動作をした。うう・・それにしても妙な気分だ。まさか自分自身とこのような形で対面する事になるとは・・。
そして、そろそろと手を前に伸ばすと人形も同じ動きをする。
私と人形の手が合わさった時、それは起こった。突然私の身体が輝きだし、光が人形の方へ流れ込み、人形の身体が輝きだす。まるで私の身体から出た光を人形が吸収していくかのようだった。
やがて光を完全に吸収した人形がゆっくりと目を開けた。
あ・・・私と同じ紫色の瞳だ・・・。
「ジェシカの魂を宿した人形よ。今夜、お前はジェシカの身代わりとして城へ戻るのだ。良いな?」
「はい、承知致しました。」
おおっ!喋ったっ!
「いいか、あの城にはマリウスと言う人物がいる・・知っているな?」
「はい、存じております。」
え?この人形は私の記憶を持っているの?
「部屋へ戻ったら鍵をかけ、決してマリウスと言う男は相手にしてはならない。」
「はい、承知致しました。」
私の人形は返事をすると、そのまま城へ向かって歩いて行ったのである。
立ち去っていく人形の後ろ姿を見守りながら不安な気持ちで私は公爵に尋ねた。
「あ、あの・・・本当に大丈夫なのでしょうか。・・・・?」
「大丈夫だ、安心しろ。少なくとも外見上はお前にそっくりなのだ。一晩位やり過ごす事は造作ない。」
公爵は私を安心させる為か、肩に手を置くと言った。
「は、はい。分かりました。」
そうだ、公爵の言葉を信じよう。
「それではジェシカ、後の事は人形に任せて俺の屋敷へ行こう。」
公爵は私を抱え込むと短い呪文を唱えた。
すると途端に足元で起こる浮遊感、そして気が付けば私は見慣れない館の中に立っていた—。
その館はとても広く、内装もとても立派な造りをしていた。見上げる程に高い天井に吊り下げられたシャンデリア、正面玄関から見える吹き抜けのホール・・。大理石の床には立派なカーペットが敷かれていた・・・だけど、何か違和感を感じる。
出迎えにやって来る人達は誰もいないし、調度品は立派なのにどこか殺風景で寒々しい印象すら感じる。何だか屋敷内の空気までひんやりと冷たい気がする・・・・。
「あ、あの・・・。」
「ん?どうかしたのか?」
公爵は抑揚のない声で私を見下ろして返事をした。
どうして公爵様が帰宅されたのに、誰も出迎えてくれないのですか?どうしてこの屋敷は・・こんなにも寒々しいのですか・・?
私は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。何故か、その事に触れてはならない気がし
たからだ。
「い、いえ・・・何でもありません。」
「この屋敷はほとんど使われていな部屋ばかりだからな・・・どれでも好きな部屋を使うといい。だが、そんな事を言われても困ってしまうよな・・・?よし、それでは一番広くて豪華な部屋を・・・。」
言いかけた公爵を私は止めた。
「い、いえ!大丈夫です。あの、全くお気になさらないで下さい!出来れば・・・一番狭いお部屋でお願いします。」
「そうなのか?そんな部屋で良いのか?」
公爵は不思議そうな顔をするが、私はコクコクと頷いた。
元々はドが付くほどの庶民な私。正直、この世界にやってきてから気後れする事ばかりで精神が疲弊気味だったのである。出来れば狭い部屋を使いたい。
「ええ、私は今夜突然こちらでお世話になる事になったのですから、そんなご迷惑をおかけする訳には参りません。なので、どうか一番狭い部屋を使わせて下さい。」
「・・・?そうか、そこまで言うなら・・・分かった。ではこちらへ。」
公爵は右手を振ると、どういう魔法なのかは知らないが、より一層屋敷の内部が明るく照らし出された。
「行くぞ、ジェシカ。」
公爵に声をかけられ、黙って彼の後をついて歩く。そして公爵は1つの部屋のドアの前で立ち止まった。
「では、この部屋を使うと良い。」
公爵がドアノブをカチャリと開けると、その部屋は広さが10畳ほどの、今まで私が見て来た室内で一番こじんまりとした部屋であった。
それでも家具は備え付けてあるし、シングルサイズのきちんとベッドメイクされたベッドも用意されている。
「・・・どうだ?この部屋は?」
気まずそうに公爵は言うが、私には大満足の部屋だ。
「とんでもありません!最高です、このお部屋。ここならゆっくり休めそうです。ドミニク公爵様、何から何まで本当に有難うございます。」
私はペコリと頭を下げた。
「いや、そこまで礼を言われるような事はしていない。あまり気にする必要は無い。」
所で、私には先程から気になっていた事があった。今・・・公爵に尋ねても良いだろうか?
「あの・・・ドミニク公爵様・・・。お伺いしたい事があるのですが・・よろしいでしょうか?」
「何だ?遠慮する事無く話して見ろ?」
「それではお尋ねしますが、使用人の方々はどちらにいらっしゃるのですか?姿が見えない様ですが・・。」
「ああ・・彼等か。使用人の物達には労働時間を決めてあるのだ。朝の6時~夜の9時まで交代制で、その時間以降は一切仕事をしなくて良いと。」
おおっ!なんて素晴らしい雇用主なのだろう・・・!私はすっかり感心してしまった。ブラック企業にも是非見習って貰いたいものだ。
「まあ、他の貴族の連中にはおかしな奴だと言われるが・・彼等にだって私的な時間が必要なはずだからな。・・・俺の考えはおかしいだろうか?」
公爵は真剣な表情で私を見る。
「いいえっ!そんな事はありません。むしろ素晴らし事だと思いますっ!本当にドミニク公爵様は立派な考えをお持ちの方だと感心してしまいました!」
「あ、ああ・・そうなのか?」
その時、私は初めて公爵が照れた顔を見たのだった。
「でも、それにしては凄くお部屋のお手入れが行き届いていますよね?使用人の方々も少ししかいらっしゃらないと伺っていたのですが・・・?」
私は疑問を口にすると公爵は言った。
「ああ、俺は精霊使いの能力が合って、人員を補う為に彼等に協力をしてもらっている。ただ・・・普通の人間達には彼等の姿を見る事は出来ないのだけどな。だからこそ余計に周囲の人間から悪魔と恐れられる原因の一つでもある訳なのだか・・。」
公爵は寂しそうに笑った。
何故、ドミニク公爵はこんなに自分を卑下するような事ばかり言うのだろう?これほど素晴らしい魔力を持っているのだから、もっと自分の事を誇ってもいいのに・・。
だから私は言った。
「ドミニク公爵様、貴方は立派なお方ですよ。他の方々がどういおうと、私は貴方の事を尊敬致します。貴方のような方が私の友人になって下さって・・・とても嬉しいです。」
そう言って私は公爵にほほ笑む。するとドミニク公爵は一瞬戸惑った様子を見せたが、その後私に笑いかけてくれた—。
私とドミニク公爵は月明かりの中、無言で家路へと歩いていた。
本来ならば転移魔法を使えば簡単にリッジウェイ家へ帰れるはずなのに、ドミニク公爵はそれをしないで歩いている。
と言う事は、何か私に話があるのだろうか。
ちらりと隣を歩く公爵を私は盗み見る。
一体彼は何を考えているのだろう・・・?
「どうした?俺の顔に何か付いているか?」
バレてたっ!
「い、いえ。何でもありません。」
私はさっと視線を逸した。
それを見た公爵はフッと口元に笑みを浮かべると言った。
「これからジェシカの家に行き、お前の両親に伝える。今回の見合い話は無かった事にして欲しいと。」
「え?」
私は顔を上げた。
「それがお前の望みだろうし、俺に関わらなければお前にも先程のように余計な火の粉が飛ぶ事も無いしな。」
公爵は、私の目をじっと見つめながら言った。
「ドミニク公爵様のご両親と私の家族には何と説明するのですか?」
「そうだな・・・。実は俺には気になる女性がいるから、ジェシカ・リッジウェイとは結婚する気は無い・・・。だから今回の話は無かった事にして欲しい。とでも言おうか?」
公爵は私を見つめながら言った。その話は作り話なのかもしれないが、妙に真実味を帯びていた。
「ドミニク公爵様。もしかしたら、本当にそのような女性がいるのではないですか?」
「え?」
公爵は一瞬目を見開いて私を見た。
「どんな女性かは存じませんが・・・。その方と上手くいくと良いですね。」
「あ、ああ・・・そうだな。」
ドミニク公爵は寂し気に笑った。
「それでその女性には思いは告げるのですか?」
何となく興味が湧いたので聞いてみた。
「いや・・・恐らくは・・無い。だろうな・・。」
「そうなのですか?でも思いを告げなければ、ずっと相手に気付かれないままになりますけど、それでも構わないのですか?」
「いや、いいんだ。俺はそれでも構わないと思っている。」
何処か諦めた風に話す公爵。
そうなると、きっと公爵は将来好きでも無い相手と政略結婚をする事になるのだろうな・・。何となく気の毒に思える。まあ、私との見合いも結局は政略結婚をさせようと両家が目論んだ事だったわけだし。
うん・・・でもお見合い話を無しにしてくれたのは私にとって非常に助かる事だ。
でも、そうなると私のお見合いの話が無くなった事を知ったアラン王子やフリッツ王太子の対応に迫られるのでは・・。
これはこれで、私にとっては厄介な問題になってくる。
私が考え込んでいると公爵が言った。
「でも、残念だったな。」
「?」
「ジェシカとは・・・良い友人なれるかと思ったのだが。」
「友人・・・ですか?」
私は公爵の顔を見上げた。
「私を友人だと・・本当に・・・・そう思って下さるのですか・・?」
私はじっと公爵を見つめると尋ねた。そう、今の公爵は私の事を友人になれるかもと言ってくれているが、果たしてその言葉が何処まで続くのだろう?
だって貴方は私を捕えて、死刑を言い渡す人なのだから・・・。
「ジェシカ・・・・?」
私の名前を不思議そうに呼ぶ公爵。いけない、自分の心の動揺を知られる訳には。
もし知られたら、理由を問い詰められるに決まっている。
私はさっと公爵から視線を逸らした。
「まただ・・・。」
「え?」
「またお前はそうやって俺の視線から目を逸らすのだな。やはり口ではうまい事を言いながら、本当は俺の事を化け物だと思って恐れているのだろう?」
公爵の声が震えている。いけない!私はまた勘違いをさせてしまっている。
「違いますっ!私はドミニク公爵様の事を恐れている訳ではありませんっ!」
「なら、何故なんだ?何故お前は俺の視線を避ける?理由を教えてれ!」
ドミニク公爵は羽織っている黒いマントを風にたなびかせたまま私の頬に手を添えて、まるで必死で縋るような眼つきで見つめてきた。
「そ、それは・・・。」
どうしよう、貴方は私の夢の中で出てきました。そして死刑を言い渡したのです。
だから、貴方を見ると夢の出来事を思い出すので視線を逸らすのです・・・なんて話をしても信じて貰えるのだろうか?
いや、それ以前に気を悪くするかもしれない。
そうなると私は公爵から恨みを買い、裁かれる時期が早まってしまう可能性も出て来る・・・。
だけど・・こんなに必死な公爵にこれ以上はぐらかすのは無理かもしれない。
重要な部分だけ除いて、予知夢と言う事にして話しをする事にしよう。
「わ・・分かりました・・。ならお話します。私はたまに予知夢を見るのです。」
「予知夢?」
私の肩から手を離した公爵が首を傾げた。
「はい、実際に夢で見た事が実はこれから起こる出来事だった・・・そんな夢をみるのです・。」
「夢・・・。」
「信じられないかもしれませんが、ドミニク公爵様は一度だけ私の夢に出てきた事があります。私は夢の中で罪を犯し・・・公爵様に捕らえられ、死刑を言い渡されました。」
「な・・・何だって?!」
公爵は驚愕の表情を浮かべた。
「ですが・・・ある女性の言葉で、ドミニク公爵様は考えを改めて、わ・・・私を流刑島へと送る事に・・・。」
ああっ!ついに言ってしまった・・・・。マリア先生にしか話したことが無かったのに・・。
きっとこんな夢の話、笑い飛ばされるか、失礼な事を言うなと怒鳴られてしまうかもしれない。けれど公爵の反応は違った。
「そう・・・か。だからお前は初めて俺を見た時に気絶してしまったのだな?俺の顔から視線を逸らすのもその為だったのだな?」
公爵は下を向き、声を震わせている。
「あ・・・。」
どうしうよう、酷く傷つけてしまったかもしれない。やはりこんな事公爵には話すべきでは無かったのだ。
「だが・・な。」
公爵は私の顔をじっと見つめると言った。
「いいか、ジェシカ。それは所詮只の夢だ。俺がお前に死刑を言い渡す?そんな馬鹿な事ぜったいにあるはずが無い!」
「ドミニク公爵様・・・。」
「だから・・・そんな不安そうな顔をするな!約束する、俺は決してお前を傷つける事は絶対にしない!この先もずっと・・・っ!それに俺では無い他の誰かがお前を傷つけるような事をする者がいたとしたら、俺が必ずお前を守るから・・・っ!」
そして公爵はきつく私を抱きしめると言った。
「・・・俺達・・・友人同士なんだろう・・・?」
公爵の身体がまるで自分を捨てないでと訴えているかのように震えている。
それなら私はその言葉を信じてみよう・・・。
「はい、私達は・・・ドミニク公爵様は私の大事な友人です。」
そしてそっと背中に手を回した—。
「あの、公爵様。私の友人として、一つお願いした事があるのですが、よろしいですか?」
「うん?何だお願いとは?」
公爵様が私の事を寒くならないように自分の羽織っているマントを私にも被せてくれ、2人で並んで歩いていた時に私は言った。
「公爵様さえ良かったら・・・もう少しだけお見合いの話を断らないで頂けますか?とりあえずは保留という事で・・・。」
「ああ・・別に俺は構わないが・・・良ければ理由を教えて貰えないか?」
「はい・・。私がアラン王子とフリッツ王太子に結婚を申し込まれているじゃ無いですか。」
「そうだな。確かに。全く・・・・。」
公爵が何故か不機嫌そうに返事をする。
「私、それがすごく困っているんです。」
「何?困っているのか?」
「はい、私はアラン王子ともフリッツ王太子とも結婚する気は無いんです。でも相手は王子様ですから、無下に断る事が出来なくて・・・。」
「確かに・・・な。」
「だから・・ドミニク公爵様。お見合いの話、どうかアラン王子とフリッツ王太子が私との結婚を諦めてくれるまで、保留という形にしておいて頂けないでしょうか?」
「な?何だって?本気で言っているのか?」
何故かドミニク公爵が動揺しまくっている。
「ええ・・・ちょっとした時間稼ぎと言うか・・・・何か他にお2人を諦めさせる良い方法が見つかるまでの間は・・。」
そうだ、その間に逃亡の準備をしておけば良いのだ。うん、我ながらナイスな考えかも。
「あ、ああ・・・。成程、そう言う訳か・・。」
ドミニク公爵は軽い溜息をつくと言った。
そう言えば・・・・私は1つ思い出したことがあった。
「あの・・ドミニク公爵様・・。もう一つお願いしたい事があるのですが・・・よろしいでしょうか?」
「うん?何だ?言ってみろ。」
どうしよう、こんな事お願いするのはひょっとすると恥ずかしい事なのかもしれないが・・・他に頼めそうな人物が思い当たらない。
「じ、実は・・・私、以前・・アラン王子にマーキングされているんです・・。まだ残っているでしょうか・・・?もし、残っていた場合、消す事は可能ですか・・?」
「何?マーキング?」
公爵の足がピタリと止まった。
あ・・・やっぱりそうなるよね?
「いつマーキングされたのだ?」
「この・・・半月以内・・です。」
「半月以内なら、余程強いマーキングで無い限り、消えていると思うが・・・。」
そこまで言いかけて、公爵の顔つきが変わった。
ああ!やっぱり・・私とアラン王子の関係がバレてしまったかもしれないっ!
しかし、公爵はそれには触れずに言った。
「分かった・・・それでは確認してみる。」
公爵は私の頭に手を触れると、目を閉じた。
「・・・。」
暫く意識を集中させていたようだが、やがて目を開けた。
「そ、そうだな・・・。まだ若干マーキングが残っている。これを消せば良いのだな?」
「はい、よろしくお願いします。」
すると再び公爵は私の頭に手を乗せて目を閉じ、暫く無言だったがやがて目を開けて言った。
「よし、これでマーキングは消した。もう誰からのマーキングもついていないから安心しろ。」
「ありがとうございますっ!」
私は笑顔で挨拶した。
それに対して、黙って頷く公爵。
良かった、これで私は誰からの監視も受けずに済むんだ—。
2
「お父様、お母様、お兄様、ただいま戻りました。」
ドミニク公爵と帰宅した私を家族とアリオスさん、そしてマリウスが出迎えた。
家族とアリオスさんは笑顔でドミニク公爵に挨拶したのだが・・・ただ一人、マリウスだけは公爵を射抜くような鋭い視線で睨みつけていた。
ドミニク公爵はそれに気付いているようだが、素知らぬ顔をして挨拶をした。
「いきなりジェシカ譲を連れ出してしまい、申し訳ございませんでした。今後の事を2人で話し合った結果、お互いの事を良く知り合った上で、婚約をするかどうかを決めていきたいと思っております。何卒宜しくお願い致します。」
それを聞くと父は歓喜した。
「おお!そうだったのですか?いや~今迄何度も見合いをさせてきましたが、いつも先方から断られてばかりで・・・。ですが、そうなりますと、フリッツ王太子とアラン王太子からの婚姻の申し出は・・・。」
父は私をチラリと見るとすかさず公爵は言った。
「その件に関してはこちらからフリッツ王太子とアラン王子にお伝えしますのでご安心下さい。」
おお~っ!公爵は、なんて頼もしい人なのだろう。やっぱり異性の友人がいるのは心強い。私が公爵をじっと見つめていると、マリウスが険しい顔で前に進み出てきた。
「ドミニク公爵様、いくら何でもまだ婚約も決まっていないうちにお嬢様のお部屋に入り、リッジウェイ家に黙って連れ出すのはいかがなものかと思いますが。今後はこのような事は謹んで頂けますか?」
マリウスの言葉にその場に居た全員が呆気に取られてしまった。
ねえ?それをマリウスが言うの?主と下僕という関係でありながら、一番私にセクハラ行為をしてきた貴方がっ?!
しかし、流石にアリオスさんが、マリウスを咎めた。
「マリウス、今の言動は行き過ぎだ。仮にもお前はこの家の下僕の身分。分をわきまえるのだ。」
「はい・・・申し訳ございませんでした・・・。」
マリウスは唇を噛み締め、悔しそうに返事をする。
そしてその様子を見た公爵は言った。
「確かに彼の言うとおりだったかもしれません。やはり主の心配をするのは下僕の立場であれば、当然心配にはなるでしょうしね。以後、このような事の無い様に気をつける事に致しましょう。」
その口ぶりは何処かマリウスを挑発しているようにも感じた。
マリウスもそれに気づいたのか、より一層憎しみを込めた目でドミニク公爵を睨み付ける。
ねえ?ちょっと!少しは自分の感情を抑える事が出来ないの?仮にもリッジウェイ家の当主の前で、しかも相手は公爵家の人に対してそのような眼つきをするなんて普通じゃあり得ないでしょう?!
私はハラハラしながら公爵を見上げたが、全くマリウスの態度に動じた様子は見られなかった。
やはり・・・この公爵は只物では無いかもしれない。
でも、このままではマズイ・・・。
そこで私は言った。
「あ、あの公爵様を門の前までお見送りしてきます。では参りましょうか?ドミニク公爵様。」
私はさり気なく公爵の腕に手を回すと、彼を連れて城を出た。その一瞬マリウスと目が合った時、恨めしそうな目で私を見ていたので背中がゾワリと総毛だってしまった。こ、怖い・・・!
今夜は1人で部屋にいるのが非常に怖いっ!絶対に鍵をかけて休まなければっ!
公爵は私と2人きりになると、案の定すぐに私に尋ねて来た。
「ジェシカ・・・あのマリウスとかいうお前の下僕は・・ひょっとするとお前に好意を寄せているのではないか?」
ええ、そうですよね?誰が見ても分かりますよね?!恐らくそんな事私の家族だって十分承知していると思いますよ?!
「は、はい・・・。そうなんです・・・。」
私は下を向いて返事をした。
「そう・・・か。中々度胸のある人物の様だな?リッジウェイ家の当主達の前だと言うのに、公爵家の俺に平気で敵意のある視線をぶつけてくるなど・・・普通の人間にはそのような真似は出来まい。余程・・・ジェシカの事を好きなのだろう。」
私は何と返事をして良いか分からずに、黙って俯いていた。
「ジェシカ・・・。あのマリウスとかいう男・・お前から遠ざける事は出来ないのか?」
「え?」
私は顔を上げると、そこには心配そうな目で私を見つめる公爵の顔があった。
「ジェシカ、正直に答えてくれ。あの男は危険な香りがする。・・・目的を達成するには手段を選ばない男のように俺は感じるんだ。側に置いておいても大丈夫そうなのか?」
公爵は私の友人になってくれた。ならその友人に私が抱えている問題を打ち明けてもう良いのかもしれない。・・・かなり恥ずかしい事ではあるかもしれないが、公爵なら私の力になってくれそうだ。
「あ、あの・・・。マリウスは・・一応私の下僕という事になっていますけど・・全然私の命令に・・応じないんです。と言うか、歯向かってばかりで・・。その事が非常に困っています・・。」
「ジェシカ、本当にそれだけなのか?本当はもっと困りごとがあるのでは無いか?俺はお前の友人として、心配しているんだ。・・・隠し事はせずに、本当の事を話してくれないか?」
どうしよう、こんな事相談しても良いのだろうか?でも公爵は私の為に力になってくれるのいかもしれない。だけど相手はマリウスだ。一筋縄でいかないのは目に見えている・・
「ジェシカ、俺を見ろ。お前の力になりたいんだ。ありのままの事をを包み隠さず正直に話して欲しい。」
公爵のオッドアイの瞳を見ていると・・何故だか自分の心の内を吐露したくなってしまう。
私は覚悟を決めた。
「あの・・・驚かないで聞いて下さいね?正直に話しますと・・マリウスと一緒にいると、て、貞操の危機を感じるんです・・・。」
「な・・・何だって?」
公爵は驚愕の表情を浮かべて私を見た。
「その話は・・・ほ、本当なのか?」
「は、はい。・・・・。マーキングと称してキスされた事も1度や2度で済んだ事はありません・・。私に好意を寄せている事もとっくに知っています。」
「何てことだ・・・。」
公爵は額を手で押さえると言った。
「お前はそんな男を見直に置いておいたのか?それではお前の身があまりに危険では無いか?あの男の目を見たか?お前の下僕に対してこのような言い方はしたくは無いが、かなり狂気をはらんだ目で俺とお前を見ていたぞ?正直・・・今夜はお前をあの家に置いておくのが心配になるくらいだ。」
「ドミニク公爵様も気が付いていましたかっ?私も最後にマリウスの目を見た時に背筋が寒くなってしまいました。・・・正直に言うと・・今夜あの城にいて・・・私は無事に朝を迎える事が出来るのか怖くなってしまって・・・。」
すると、少しの間公爵は何か考えていた様子だったが、やがて私に言った。
「どうだ?これは・・俺からの提案なのだが・・・今夜は俺の住む屋敷に来るか?どうせ両親とは別の場所に住んでいるし、屋敷に居るのは数人の使用人だけだ。全員口が堅いし、お前が俺の屋敷に一晩泊っても大丈夫だ。」
公爵の提案は私にとって願ったり叶ったりだが・・・・
「で、でも私が城に戻らなければ両親もマリウスも怪しみますよ?」
「それなら大丈夫だ。お前の身がわりになる人形を作りだすこと位俺には容易い」
公爵は言うと、ポケットから真っ白い布で作られたのっぺらぼうの人形を取り出すと、右手をかざして何やら呪文を唱え始めた。
すると、突然その人形が公爵の手を離れると、激しく輝きだした。
余りの眩しさに私は目を閉じ、次に目を開けた時には・・・なんともう1人の私が目の前に立っていたのである—。
3
「す、すごい・・・。一体どうなっているのですか?」
私は目の前に立っているもう1人の自分を見ながら公爵に尋ねた。その人形は目は閉じたままである。
「ああ、これは魔力をかけられた人形なのだ。相手の姿をそのまま投影する事が出来る。ただこのままでは只の人形に過ぎない。なのでジェシカの魂をコピーしてこの人形に入れる。」
公爵の何気なく言った言葉に私は仰天した。
「えええっ?!た、魂をコピーですかっ?!そんな事が出来るのですかっ?!」
「ああ、一時的な物だが・・・出来る。まあせいぜい効果は7~8時間程で切れてしまうが・・。」
「あの、効果が切れた後はこの人形はどうなるのですか?」
「只の人形に戻る。」
ヒエエエエッ!な、なんて怖ろしい・・・。朝になって私が人形になっているのを見た家族が一体どれ程驚くか・・・。
私のそんな気持ちに気が付いたのか、公爵は言った。
「大丈夫だ。人形の効果が切れる頃にお前を部屋へ送り届けてやるから何も心配するな。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
良かった、それなら安心だ。
「それで・・・どうすれば私の魂のコピーを取る事が出来るのですか?」
「ではジェシカ、この人形と向かい合って手を合わせるのだ。」
「は、はい・・・。」
私は自分の人形の前に立ち、両手を広げて自分の顔の前にかざすと、人形は同じ動作をした。うう・・それにしても妙な気分だ。まさか自分自身とこのような形で対面する事になるとは・・。
そして、そろそろと手を前に伸ばすと人形も同じ動きをする。
私と人形の手が合わさった時、それは起こった。突然私の身体が輝きだし、光が人形の方へ流れ込み、人形の身体が輝きだす。まるで私の身体から出た光を人形が吸収していくかのようだった。
やがて光を完全に吸収した人形がゆっくりと目を開けた。
あ・・・私と同じ紫色の瞳だ・・・。
「ジェシカの魂を宿した人形よ。今夜、お前はジェシカの身代わりとして城へ戻るのだ。良いな?」
「はい、承知致しました。」
おおっ!喋ったっ!
「いいか、あの城にはマリウスと言う人物がいる・・知っているな?」
「はい、存じております。」
え?この人形は私の記憶を持っているの?
「部屋へ戻ったら鍵をかけ、決してマリウスと言う男は相手にしてはならない。」
「はい、承知致しました。」
私の人形は返事をすると、そのまま城へ向かって歩いて行ったのである。
立ち去っていく人形の後ろ姿を見守りながら不安な気持ちで私は公爵に尋ねた。
「あ、あの・・・本当に大丈夫なのでしょうか。・・・・?」
「大丈夫だ、安心しろ。少なくとも外見上はお前にそっくりなのだ。一晩位やり過ごす事は造作ない。」
公爵は私を安心させる為か、肩に手を置くと言った。
「は、はい。分かりました。」
そうだ、公爵の言葉を信じよう。
「それではジェシカ、後の事は人形に任せて俺の屋敷へ行こう。」
公爵は私を抱え込むと短い呪文を唱えた。
すると途端に足元で起こる浮遊感、そして気が付けば私は見慣れない館の中に立っていた—。
その館はとても広く、内装もとても立派な造りをしていた。見上げる程に高い天井に吊り下げられたシャンデリア、正面玄関から見える吹き抜けのホール・・。大理石の床には立派なカーペットが敷かれていた・・・だけど、何か違和感を感じる。
出迎えにやって来る人達は誰もいないし、調度品は立派なのにどこか殺風景で寒々しい印象すら感じる。何だか屋敷内の空気までひんやりと冷たい気がする・・・・。
「あ、あの・・・。」
「ん?どうかしたのか?」
公爵は抑揚のない声で私を見下ろして返事をした。
どうして公爵様が帰宅されたのに、誰も出迎えてくれないのですか?どうしてこの屋敷は・・こんなにも寒々しいのですか・・?
私は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。何故か、その事に触れてはならない気がし
たからだ。
「い、いえ・・・何でもありません。」
「この屋敷はほとんど使われていな部屋ばかりだからな・・・どれでも好きな部屋を使うといい。だが、そんな事を言われても困ってしまうよな・・・?よし、それでは一番広くて豪華な部屋を・・・。」
言いかけた公爵を私は止めた。
「い、いえ!大丈夫です。あの、全くお気になさらないで下さい!出来れば・・・一番狭いお部屋でお願いします。」
「そうなのか?そんな部屋で良いのか?」
公爵は不思議そうな顔をするが、私はコクコクと頷いた。
元々はドが付くほどの庶民な私。正直、この世界にやってきてから気後れする事ばかりで精神が疲弊気味だったのである。出来れば狭い部屋を使いたい。
「ええ、私は今夜突然こちらでお世話になる事になったのですから、そんなご迷惑をおかけする訳には参りません。なので、どうか一番狭い部屋を使わせて下さい。」
「・・・?そうか、そこまで言うなら・・・分かった。ではこちらへ。」
公爵は右手を振ると、どういう魔法なのかは知らないが、より一層屋敷の内部が明るく照らし出された。
「行くぞ、ジェシカ。」
公爵に声をかけられ、黙って彼の後をついて歩く。そして公爵は1つの部屋のドアの前で立ち止まった。
「では、この部屋を使うと良い。」
公爵がドアノブをカチャリと開けると、その部屋は広さが10畳ほどの、今まで私が見て来た室内で一番こじんまりとした部屋であった。
それでも家具は備え付けてあるし、シングルサイズのきちんとベッドメイクされたベッドも用意されている。
「・・・どうだ?この部屋は?」
気まずそうに公爵は言うが、私には大満足の部屋だ。
「とんでもありません!最高です、このお部屋。ここならゆっくり休めそうです。ドミニク公爵様、何から何まで本当に有難うございます。」
私はペコリと頭を下げた。
「いや、そこまで礼を言われるような事はしていない。あまり気にする必要は無い。」
所で、私には先程から気になっていた事があった。今・・・公爵に尋ねても良いだろうか?
「あの・・・ドミニク公爵様・・・。お伺いしたい事があるのですが・・よろしいでしょうか?」
「何だ?遠慮する事無く話して見ろ?」
「それではお尋ねしますが、使用人の方々はどちらにいらっしゃるのですか?姿が見えない様ですが・・。」
「ああ・・彼等か。使用人の物達には労働時間を決めてあるのだ。朝の6時~夜の9時まで交代制で、その時間以降は一切仕事をしなくて良いと。」
おおっ!なんて素晴らしい雇用主なのだろう・・・!私はすっかり感心してしまった。ブラック企業にも是非見習って貰いたいものだ。
「まあ、他の貴族の連中にはおかしな奴だと言われるが・・彼等にだって私的な時間が必要なはずだからな。・・・俺の考えはおかしいだろうか?」
公爵は真剣な表情で私を見る。
「いいえっ!そんな事はありません。むしろ素晴らし事だと思いますっ!本当にドミニク公爵様は立派な考えをお持ちの方だと感心してしまいました!」
「あ、ああ・・そうなのか?」
その時、私は初めて公爵が照れた顔を見たのだった。
「でも、それにしては凄くお部屋のお手入れが行き届いていますよね?使用人の方々も少ししかいらっしゃらないと伺っていたのですが・・・?」
私は疑問を口にすると公爵は言った。
「ああ、俺は精霊使いの能力が合って、人員を補う為に彼等に協力をしてもらっている。ただ・・・普通の人間達には彼等の姿を見る事は出来ないのだけどな。だからこそ余計に周囲の人間から悪魔と恐れられる原因の一つでもある訳なのだか・・。」
公爵は寂しそうに笑った。
何故、ドミニク公爵はこんなに自分を卑下するような事ばかり言うのだろう?これほど素晴らしい魔力を持っているのだから、もっと自分の事を誇ってもいいのに・・。
だから私は言った。
「ドミニク公爵様、貴方は立派なお方ですよ。他の方々がどういおうと、私は貴方の事を尊敬致します。貴方のような方が私の友人になって下さって・・・とても嬉しいです。」
そう言って私は公爵にほほ笑む。するとドミニク公爵は一瞬戸惑った様子を見せたが、その後私に笑いかけてくれた—。
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