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第10章 3 アカシックレコードの呪い
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おおっ!私って・・・凄いっ!デヴィットに抱き締められていた状態で自分一人だけを転移魔法で移動できたなんて・・・。
きっと今頃彼等は私が突然消えた事で、騒ぎをしているかもしれない・・・。
私は病院を見上げると、覚悟を決めた。
今、私の側には頼りになるエルヴィラはいないけれど・・・・。
「大丈夫、きっと・・・。ジャニスは私を待ってるはず・・・っ!」
そして私は病院へと足を踏み入れた。
受付に座っていた女性にジャニスの病室を尋ねると、女性は眉をしかめて露骨に嫌そうな顔をすると言った。
「ああ・・・あの女性の面会の方ですか・・・?その女性の病室なら、この病院の裏手にある小屋ですよ。」
「ええ?こ、小屋に入院させられているのですか?!」
そんな・・・幾らなんでも酷い・・・。
すると私の気持ちが伝わったのか、受付の女性はあからさまに態度を変えた。
「いけませんか?あの患者からはまるで腐ったドブのような異臭を放っているんですよ?おまけに身体中には不気味な痣があって・・し、しかも恐ろしい事にあの痣は蠢いて・・・・増えていくし・・。あんな病気など今まで見た事も無いんですよ?呪いでは無いかと今では言われて、こちらとしても怖ろしくて仕方ないんです。むしろ、入院させてあげている事を感謝してもらいたいくらいです!」
ヒステリックに受付の女性は騒ぐと、私をじろりと睨み付けるように言った。
「・・・では面会させて頂きます。」
それだけ言うと、私はジャニスが入院している小屋へと向かった。
「え・・・?こんな場所にジャニスはいるの?」
それは最早病院とは言えない・・まさに小屋であった。古びた炭焼き小屋のような作りの小屋には小さな窓が一つだけ取り付けられているが、カーテンは無い。
これでは中が丸見え状態だ。
「・・・幾ら何でも・・・これは酷い扱いだわ・・・。」
溜息をつくと、意を決して私はドアをノックした。
コンコン。
しかし・・・聞こえないのだろうか?返事が無い。それとも返事をする気力すら無い程に・・・ジャニスは弱っているのだろうか?なら・・・仕方が無い。返事は無いが、室内へ入る事にした。
「失礼します・・・。」
ドアを開けた途端、思わず鼻をつまみたくなるような異臭が部屋の中に充満している。先程の受け付けの女性が言う通り、確かに腐ったドブ水のような臭いだ。
室内は粗末なベッドに小さな机と椅子がある。部屋の奥には扉があるので恐らくそこが洗面所なのかもしれない。
それにしても・・・あまりにも匂いが強烈過ぎる。異臭で目が痛くなりそうだったが、私はジャニスが眠っているベッドへと近づくと声を掛けた。
「ジャニス・・・。」
「何よ・・・誰・・なの・・?全く・・・物好きね・・。こんな私に会いに来るなんて・・・ソフィー位なのに・・・。」
私は返事をする代わりに、ベッドへ近付くとジャニスの顔を覗き込み・・・危うく悲鳴を上げそうになった。
ジャニスは最早身体中が黒い痣に覆われており、その表情すら読み取れなくなってしまっていた。
「ジャニス・・・ッ!!」
余りの彼女の変貌ぶりに私は唯々、見つめる事しか出来なかった。
「何だ・・・・誰かと思ったらジェシカじゃないの・・。こんな無様な姿になった私を笑いものにする為に・・・来たってわけね・・・?」
今にも消え入りそうな声でジャニスは言う。
「いいえ、違うわ。そんな事の為に来た訳じゃないわ。」
「それじゃ・・・何の為に来たのよ。言っておくけど・・・私には・・もうあんたに対抗できる力なんか・・・無いから・・ね・・・。」
「ジャニス・・・今の貴女を救える手段はあるの・・?」
「え・・・?一体何を・・・言い出すのよ・・?」
私の話があまりにも意外だったのだろうか?ジャニスの声には戸惑いがあった。
「ジャニス・・・。貴女は私よりずっと物知りで魔力も強かったわ。私はエルヴィラに教えて貰うまでは、アカシックレコードの事も、その在処も何も知らなかったもの。」
「だけど・・・アカシックレコードを手に入れたのは、あんただったしょう?」
「・・・。」
「知ってるのよ。あんたが私に会いに来た・・本当の目的・・・アカシックレコードの暴走を抑える為に、自分の身を犠牲にした相手を・・助けたくて・・私ならその方法を知ってると思って・・・ここへ・・来たんでしょう・・?」
「それもそうだけど・・・今の貴女を見ていたら、見捨てておけなくなってしまったの。その身体中の痣は・・・アカシックレコードのせいなの?」
「そうね・・・。アカシックレコードの呪いよ。これは・・・。分不相応な物を手に入れようとした人間の末路の姿よ。」
「ジャニス。アカシックレコードの呪いなら・・・アカシックレコードを持っている私なら貴女を助けてあげる事が出来るんじゃないの?」
「・・・そうね・・・出来ない事は・・無いかも・・ね。」
「どうすればいいの?」
私は身を乗り出してジャニスに尋ねた。
「あの時のように・・・トランス状態になってアカシックレコードのある場所へ辿り着く事が出来れば・・・・ひょっとすると私の記録を書き直す事が出来るかもしれない。それに・・・多分同じ場所にあんたを助けた男もいるんじゃ・・・ないの・・?」
「・・・!」
テオだ・・・。ジャニスはテオの事を言っているのだ・・・!
「言っておくけどね・・・トランス状態に・・なるには・・神聖な・・場所でなければ・・成功しないんだから・・・。失敗すれば二度と・・自分の身体に戻れなくなるから・・・ね・・・。」
「分かったわ。ジャニス・・・・。貴女を助けて見せる・・・その代わり・・。」
「な、何よ・・・?」
「もう二度とソフィーに手を出さないと約束して。」
「・・・分かったわよ・・・。」
私はジャニスのいる小屋を出た。
次の行き先は・・・決まってる。
『ワールズ・エンド』にある『神木』だ―。
私は瞳を閉じた。大丈夫、私の中にはアカシックレコードが眠っている。だからきっと『神木』のある場所まで私を導いてくれるはず・・・。
「お願い、アカシックレコード。私を・・・ご神木の場所まで転移させて。」
瞳を閉じると私は祈った。
すると一瞬浮遊感を感じ、次の瞬間・・辺りの空気が変化したことに気が付き、目を開けると眼前に御神木が立っていた。
「来れた・・・・。転移魔法で・・・『ワールズエンド』の御神木のある場所へ・・・・。」
私はご神木の前に横たわると両手を胸の上で組むと目を閉じた。
トランス状態になって自分の中に沈んでいるアカシックレコードを探す為に。
呼吸を整えながら精神を集中させる。
どうか・・・どうか・・アカシックレコード・・・私の前に現れて・・・・。
やがて、私の意識は徐々に深い場所へと沈んでいく—。
ここは・・・・?
気付いてみると、そこはまるで深い海の底のような青い色で満たされた不思議な空間だった。時折私の側を泡になった空気のような物が漂っている。
そこは上も下も分からない様な不思議な空間。
当たりを見渡していると、遥か下の場所で何かがキラリと光り輝くのを発見した。
あれは一体・・・?
あの場所に行ってみよう。きっとあそこには・・・何かがあるはず・・・!
私は光った場所へ手を伸ばすと、まるで引き寄せらえるかのように私の身体が光の場所へと導かれて行く—。
きっと・・・きっとあの光の先にはアカシックレコードが、そして・・・愛するテオがいるはずだ・・・・・!
きっと今頃彼等は私が突然消えた事で、騒ぎをしているかもしれない・・・。
私は病院を見上げると、覚悟を決めた。
今、私の側には頼りになるエルヴィラはいないけれど・・・・。
「大丈夫、きっと・・・。ジャニスは私を待ってるはず・・・っ!」
そして私は病院へと足を踏み入れた。
受付に座っていた女性にジャニスの病室を尋ねると、女性は眉をしかめて露骨に嫌そうな顔をすると言った。
「ああ・・・あの女性の面会の方ですか・・・?その女性の病室なら、この病院の裏手にある小屋ですよ。」
「ええ?こ、小屋に入院させられているのですか?!」
そんな・・・幾らなんでも酷い・・・。
すると私の気持ちが伝わったのか、受付の女性はあからさまに態度を変えた。
「いけませんか?あの患者からはまるで腐ったドブのような異臭を放っているんですよ?おまけに身体中には不気味な痣があって・・し、しかも恐ろしい事にあの痣は蠢いて・・・・増えていくし・・。あんな病気など今まで見た事も無いんですよ?呪いでは無いかと今では言われて、こちらとしても怖ろしくて仕方ないんです。むしろ、入院させてあげている事を感謝してもらいたいくらいです!」
ヒステリックに受付の女性は騒ぐと、私をじろりと睨み付けるように言った。
「・・・では面会させて頂きます。」
それだけ言うと、私はジャニスが入院している小屋へと向かった。
「え・・・?こんな場所にジャニスはいるの?」
それは最早病院とは言えない・・まさに小屋であった。古びた炭焼き小屋のような作りの小屋には小さな窓が一つだけ取り付けられているが、カーテンは無い。
これでは中が丸見え状態だ。
「・・・幾ら何でも・・・これは酷い扱いだわ・・・。」
溜息をつくと、意を決して私はドアをノックした。
コンコン。
しかし・・・聞こえないのだろうか?返事が無い。それとも返事をする気力すら無い程に・・・ジャニスは弱っているのだろうか?なら・・・仕方が無い。返事は無いが、室内へ入る事にした。
「失礼します・・・。」
ドアを開けた途端、思わず鼻をつまみたくなるような異臭が部屋の中に充満している。先程の受け付けの女性が言う通り、確かに腐ったドブ水のような臭いだ。
室内は粗末なベッドに小さな机と椅子がある。部屋の奥には扉があるので恐らくそこが洗面所なのかもしれない。
それにしても・・・あまりにも匂いが強烈過ぎる。異臭で目が痛くなりそうだったが、私はジャニスが眠っているベッドへと近づくと声を掛けた。
「ジャニス・・・。」
「何よ・・・誰・・なの・・?全く・・・物好きね・・。こんな私に会いに来るなんて・・・ソフィー位なのに・・・。」
私は返事をする代わりに、ベッドへ近付くとジャニスの顔を覗き込み・・・危うく悲鳴を上げそうになった。
ジャニスは最早身体中が黒い痣に覆われており、その表情すら読み取れなくなってしまっていた。
「ジャニス・・・ッ!!」
余りの彼女の変貌ぶりに私は唯々、見つめる事しか出来なかった。
「何だ・・・・誰かと思ったらジェシカじゃないの・・。こんな無様な姿になった私を笑いものにする為に・・・来たってわけね・・・?」
今にも消え入りそうな声でジャニスは言う。
「いいえ、違うわ。そんな事の為に来た訳じゃないわ。」
「それじゃ・・・何の為に来たのよ。言っておくけど・・・私には・・もうあんたに対抗できる力なんか・・・無いから・・ね・・・。」
「ジャニス・・・今の貴女を救える手段はあるの・・?」
「え・・・?一体何を・・・言い出すのよ・・?」
私の話があまりにも意外だったのだろうか?ジャニスの声には戸惑いがあった。
「ジャニス・・・。貴女は私よりずっと物知りで魔力も強かったわ。私はエルヴィラに教えて貰うまでは、アカシックレコードの事も、その在処も何も知らなかったもの。」
「だけど・・・アカシックレコードを手に入れたのは、あんただったしょう?」
「・・・。」
「知ってるのよ。あんたが私に会いに来た・・本当の目的・・・アカシックレコードの暴走を抑える為に、自分の身を犠牲にした相手を・・助けたくて・・私ならその方法を知ってると思って・・・ここへ・・来たんでしょう・・?」
「それもそうだけど・・・今の貴女を見ていたら、見捨てておけなくなってしまったの。その身体中の痣は・・・アカシックレコードのせいなの?」
「そうね・・・。アカシックレコードの呪いよ。これは・・・。分不相応な物を手に入れようとした人間の末路の姿よ。」
「ジャニス。アカシックレコードの呪いなら・・・アカシックレコードを持っている私なら貴女を助けてあげる事が出来るんじゃないの?」
「・・・そうね・・・出来ない事は・・無いかも・・ね。」
「どうすればいいの?」
私は身を乗り出してジャニスに尋ねた。
「あの時のように・・・トランス状態になってアカシックレコードのある場所へ辿り着く事が出来れば・・・・ひょっとすると私の記録を書き直す事が出来るかもしれない。それに・・・多分同じ場所にあんたを助けた男もいるんじゃ・・・ないの・・?」
「・・・!」
テオだ・・・。ジャニスはテオの事を言っているのだ・・・!
「言っておくけどね・・・トランス状態に・・なるには・・神聖な・・場所でなければ・・成功しないんだから・・・。失敗すれば二度と・・自分の身体に戻れなくなるから・・・ね・・・。」
「分かったわ。ジャニス・・・・。貴女を助けて見せる・・・その代わり・・。」
「な、何よ・・・?」
「もう二度とソフィーに手を出さないと約束して。」
「・・・分かったわよ・・・。」
私はジャニスのいる小屋を出た。
次の行き先は・・・決まってる。
『ワールズ・エンド』にある『神木』だ―。
私は瞳を閉じた。大丈夫、私の中にはアカシックレコードが眠っている。だからきっと『神木』のある場所まで私を導いてくれるはず・・・。
「お願い、アカシックレコード。私を・・・ご神木の場所まで転移させて。」
瞳を閉じると私は祈った。
すると一瞬浮遊感を感じ、次の瞬間・・辺りの空気が変化したことに気が付き、目を開けると眼前に御神木が立っていた。
「来れた・・・・。転移魔法で・・・『ワールズエンド』の御神木のある場所へ・・・・。」
私はご神木の前に横たわると両手を胸の上で組むと目を閉じた。
トランス状態になって自分の中に沈んでいるアカシックレコードを探す為に。
呼吸を整えながら精神を集中させる。
どうか・・・どうか・・アカシックレコード・・・私の前に現れて・・・・。
やがて、私の意識は徐々に深い場所へと沈んでいく—。
ここは・・・・?
気付いてみると、そこはまるで深い海の底のような青い色で満たされた不思議な空間だった。時折私の側を泡になった空気のような物が漂っている。
そこは上も下も分からない様な不思議な空間。
当たりを見渡していると、遥か下の場所で何かがキラリと光り輝くのを発見した。
あれは一体・・・?
あの場所に行ってみよう。きっとあそこには・・・何かがあるはず・・・!
私は光った場所へ手を伸ばすと、まるで引き寄せらえるかのように私の身体が光の場所へと導かれて行く—。
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