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22 醜い言い争い
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「ユリアナだって……? バカなことを言うな! あの女は十年前に死んだはずだ! 大体、その姿……似ても似つかない! 全くの別人だ!」
「そうよ! ユリアナは……お前のような美しい容姿はしていなかったわ!」
「オフィーリアの言うとおりだ。いいか? ユリアナは女のくせにダンスよりも剣術を好み、浅黒く肌が焼けていた! デ、デタラメを言うな! 本当に……あいつは見苦しい女だったのだ!」
二人は恐怖のあまりか、まくし立ててくる。
けれど、今更ながら良く分かった。クラウスは本当に私のことを嫌っていたのだ。
「信じるも信じないも二人の勝手だけれど……あの夜の出来事は未だに忘れられないわ……広間に私を呼び出して、一方的に婚約破棄を告げてきたあの日のことは」
「な、何……?」
「え……?」
あれほどいがみ合っていたクラウスとオフィーリアは恐怖の為だろうか……いつの間にか寄り添うように立っている。
「そう、あのときも二人は私の前に寄り添うように立っていたわ。まるで自分たちの仲の良さを見せつけるかのようにね」
「「!!」」
この言葉が決定打になったのだろう。二人の顔が恐怖のためか歪んだ。
「な、何故そのことを……!」
クラウスが声を震わせる。
「だから何度も言っているでしょう? 姿形は違えども……私は十年前に殺されたユリアナ・ベルンハルトよ! 私と、我が一族を滅ぼしたお前たちに復讐するために……蘇ったのよ!」
そして私は身体から炎を吹き出した。
「ヒッ!」
「キャア!」
もう後のことはどうでも良かった。この二人を城ごと焼き殺す。憎い『アレス』国は既に『タリス』の支配下に置かれているのだ。この国を滅ぼせば、私の復讐は完了する。
「だ、誰か! 衛兵! 衛兵はいないか!」
クラウスは必死で叫ぶも、廊下は静まり返っている。
「た、助けて!」
驚いたことに、てっきり足がすくんで逃げられないだろうと思っていたオフィーリアが身を翻し、扉の外へと走り出す。
「お、俺を置いて逃げるな!」
クラウスも我に返ったのかオフィーリアの後を追う。
「逃げられると思っているの!」
私は叫ぶと二人の後を追い、炎の玉を生み出して二人にぶつけた。
ゴウッ!
恐ろしい音を立てて炎の玉が二人に当たる。
「ギャアアア!!」
「キャアアア! あ、熱い!!」
炎に焼かれて二人の絶叫が響き渡る。
「どう? 熱いでしょう? 苦しいでしょう……でも私の受けた苦しみはこんなものではないわ! こんなすぐには殺してやらないのだから!」
炎を操り、一度火を沈下させる。一気に殺してなどやるものか。
「ひいい! や、やめろ! た、助けてくれ!」
床に倒れたまま懇願するクラウス。
「こ……殺せと命じたのは私じゃないわ!」
「な、何だと! さ、先に俺に近づいてきたのはお前だろう!」
「わ……私はち、父に命じられただけよ! そ、そうでもなければ……誰があんたに……!」
呆れることに、命乞いよりも先に二人は罪のなすりつけあいを始めた。本当になんて見にくい姿なのだろう。
「そんなことをしても無駄よ……二人とも始末するのは決定事項なのだから……」
私はゆっくりと二人に近づいていった――
「そうよ! ユリアナは……お前のような美しい容姿はしていなかったわ!」
「オフィーリアの言うとおりだ。いいか? ユリアナは女のくせにダンスよりも剣術を好み、浅黒く肌が焼けていた! デ、デタラメを言うな! 本当に……あいつは見苦しい女だったのだ!」
二人は恐怖のあまりか、まくし立ててくる。
けれど、今更ながら良く分かった。クラウスは本当に私のことを嫌っていたのだ。
「信じるも信じないも二人の勝手だけれど……あの夜の出来事は未だに忘れられないわ……広間に私を呼び出して、一方的に婚約破棄を告げてきたあの日のことは」
「な、何……?」
「え……?」
あれほどいがみ合っていたクラウスとオフィーリアは恐怖の為だろうか……いつの間にか寄り添うように立っている。
「そう、あのときも二人は私の前に寄り添うように立っていたわ。まるで自分たちの仲の良さを見せつけるかのようにね」
「「!!」」
この言葉が決定打になったのだろう。二人の顔が恐怖のためか歪んだ。
「な、何故そのことを……!」
クラウスが声を震わせる。
「だから何度も言っているでしょう? 姿形は違えども……私は十年前に殺されたユリアナ・ベルンハルトよ! 私と、我が一族を滅ぼしたお前たちに復讐するために……蘇ったのよ!」
そして私は身体から炎を吹き出した。
「ヒッ!」
「キャア!」
もう後のことはどうでも良かった。この二人を城ごと焼き殺す。憎い『アレス』国は既に『タリス』の支配下に置かれているのだ。この国を滅ぼせば、私の復讐は完了する。
「だ、誰か! 衛兵! 衛兵はいないか!」
クラウスは必死で叫ぶも、廊下は静まり返っている。
「た、助けて!」
驚いたことに、てっきり足がすくんで逃げられないだろうと思っていたオフィーリアが身を翻し、扉の外へと走り出す。
「お、俺を置いて逃げるな!」
クラウスも我に返ったのかオフィーリアの後を追う。
「逃げられると思っているの!」
私は叫ぶと二人の後を追い、炎の玉を生み出して二人にぶつけた。
ゴウッ!
恐ろしい音を立てて炎の玉が二人に当たる。
「ギャアアア!!」
「キャアアア! あ、熱い!!」
炎に焼かれて二人の絶叫が響き渡る。
「どう? 熱いでしょう? 苦しいでしょう……でも私の受けた苦しみはこんなものではないわ! こんなすぐには殺してやらないのだから!」
炎を操り、一度火を沈下させる。一気に殺してなどやるものか。
「ひいい! や、やめろ! た、助けてくれ!」
床に倒れたまま懇願するクラウス。
「こ……殺せと命じたのは私じゃないわ!」
「な、何だと! さ、先に俺に近づいてきたのはお前だろう!」
「わ……私はち、父に命じられただけよ! そ、そうでもなければ……誰があんたに……!」
呆れることに、命乞いよりも先に二人は罪のなすりつけあいを始めた。本当になんて見にくい姿なのだろう。
「そんなことをしても無駄よ……二人とも始末するのは決定事項なのだから……」
私はゆっくりと二人に近づいていった――
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