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第2幕 『くるみ割り人形』のヒロインの場合 ⑦
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クララには信じられなかった。まさかテーブルの向かい合わせに座っている男性がこの国の王太子であるとは夢にも思わなかった。
初めて王族に出会ったクララはどのような反応をすれば良いのか分からなかった。
「あ、あの・・・。」
躊躇いがちに声を掛けると、王太子はニッコリと微笑んだ。
「そう言えば、まだ自己紹介をしていませんでしたね?私の名前はフリッツ・バートン。一応この国の王太子です。よろしく。」
「あ、あの私はクララ・ポートマンと申します。まさか王太子様だったとは・・ご無礼をお許し下さい。」
クララは思わず立ち上がると会釈をした。
「座っておくれ。クララ。それにしてもこんな偶然があるんですね。私とクララの兄上が同じ名前だったとは・・・。クララに取っては気分を害する名前でしょうしね。」
「いいえっ!」
するとクララは激しく否定した。
「クララ・・・?」
「いいえ・・・そんな事はありません。王太子様とお兄様とでは全く違います。同じ名前でも私は少しも気分を害しておりませんし、恐怖も感じておりません。」
クララの物おじしない言い方にフリッツはすっかり気分を良くすると言った。
「それでは私と食事にしませんか?クララ。」
「は、はい。ありがとうございます。」
するとその言葉を何処かで聞いていたのか、フットマン達が現れて次々と料理を2人の前に並べいき、あっという間にテーブルの上は美味しそうな料理で満たされた。
「さあ、遠慮なく食べていいですよ。」
「は、はい・・頂きます。」
そしてクララは料理を口に運んだ—。
出された料理はどれも素晴らしい美味しさで、初めはこれ程の料理は食べられないだろうと思っていたのだが、気付けばクララは綺麗に料理を平らげてしまっていた。
その様子を楽しそうにフリッツ王太子は見つめている。
(ど、どうしよう・・。王子様の前で見境なく料理を全て食べてしまうなんて・・・は・はずかしいわ・・・っ!)
しかし、フリッツはクララの思いとは別に久しぶりに愉快な気持ちになっていた。
目の前で女性がこれ程美味しそうに出された食事を平らげる姿を今迄一度も見た事が無かったからだ。
フリッツがこれ迄会ってきた女性達は誰もが自分をよく見て貰おうと、食事を共にしても、殆ど口をつけない。
食べ物をむだにする事を誰よりも嫌うフリッツに取っては許しがたかった。だが、今目の前にいるクララは出された食事を美味しそうに食べ、残す事も無かった。
(クララ・・・彼女は・・とても好感が持てる女性だ・・・。)
フリッツは自分でも気づかぬうちにクララに好意を寄せていた—。
初めて王族に出会ったクララはどのような反応をすれば良いのか分からなかった。
「あ、あの・・・。」
躊躇いがちに声を掛けると、王太子はニッコリと微笑んだ。
「そう言えば、まだ自己紹介をしていませんでしたね?私の名前はフリッツ・バートン。一応この国の王太子です。よろしく。」
「あ、あの私はクララ・ポートマンと申します。まさか王太子様だったとは・・ご無礼をお許し下さい。」
クララは思わず立ち上がると会釈をした。
「座っておくれ。クララ。それにしてもこんな偶然があるんですね。私とクララの兄上が同じ名前だったとは・・・。クララに取っては気分を害する名前でしょうしね。」
「いいえっ!」
するとクララは激しく否定した。
「クララ・・・?」
「いいえ・・・そんな事はありません。王太子様とお兄様とでは全く違います。同じ名前でも私は少しも気分を害しておりませんし、恐怖も感じておりません。」
クララの物おじしない言い方にフリッツはすっかり気分を良くすると言った。
「それでは私と食事にしませんか?クララ。」
「は、はい。ありがとうございます。」
するとその言葉を何処かで聞いていたのか、フットマン達が現れて次々と料理を2人の前に並べいき、あっという間にテーブルの上は美味しそうな料理で満たされた。
「さあ、遠慮なく食べていいですよ。」
「は、はい・・頂きます。」
そしてクララは料理を口に運んだ—。
出された料理はどれも素晴らしい美味しさで、初めはこれ程の料理は食べられないだろうと思っていたのだが、気付けばクララは綺麗に料理を平らげてしまっていた。
その様子を楽しそうにフリッツ王太子は見つめている。
(ど、どうしよう・・。王子様の前で見境なく料理を全て食べてしまうなんて・・・は・はずかしいわ・・・っ!)
しかし、フリッツはクララの思いとは別に久しぶりに愉快な気持ちになっていた。
目の前で女性がこれ程美味しそうに出された食事を平らげる姿を今迄一度も見た事が無かったからだ。
フリッツがこれ迄会ってきた女性達は誰もが自分をよく見て貰おうと、食事を共にしても、殆ど口をつけない。
食べ物をむだにする事を誰よりも嫌うフリッツに取っては許しがたかった。だが、今目の前にいるクララは出された食事を美味しそうに食べ、残す事も無かった。
(クララ・・・彼女は・・とても好感が持てる女性だ・・・。)
フリッツは自分でも気づかぬうちにクララに好意を寄せていた—。
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