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第19日目 野外パーティイベント開催! ①(イラスト有り)

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『おはようございます。19日目の朝がやってまいりました。本日は野外パーティーイベントの開催日です。攻略対象者の好感度を上げるチャンスです。では今日も1日頑張って下さい。』

 ぼんやりと液晶画面を見つめる私。
フフフ・・・。でもね、今日の私は仕事をしなくても良いんだよ?だってトビーにお休みの許可を貰ってるんだものね~。
夕方、花火大会の頃にでもパーティ会場へ行ってお手伝いすればいいよね?

あ、でも朝ごはんとランチの準備はしておいた方がいいかな・・・。そうだ、7時頃になったら学園内のカフェで朝ごはんを食べて、お昼は駅まで出て隣の町でランチを食べに行こうかな?
でも一人で食事も味気ないし・・・。

「そうだ、『ノッポ』と『ベソ』を誘おうかな?」

うん。決めた、それがいい。何せ彼らは私と同じでこのバーチャルゲームに入り込んだ現実世界の人間だもの。彼らと一緒にいるのが一番気が休まるよ。
 
 その後は朝の7時までベッドの中でゴロゴロ過ごし、その後着がえをする。
メイド服に着替える必要は無いし・・。
さて、今日の私の服は・・・。
クローゼットを開けて手に取った私の今日の衣装のコンセプト。
それは・・ずばりロリータファッションッ!
エリスは金髪に青い瞳の美少女。試着してみたらあまりにも似合っていたから鏡の前で1回転してしまったくらいだ。フリルたっぷり薔薇の模様のワンピースの裾からはこれまたフリルたっぷりのアンダースカート。
そして大きなリボンで結んだボンネットを被れば・・・ロリータ姫の出来上がりっ!なんちゃって・・・。



うん、我ながら良く決まっているスタイルだ。メイドの仕事を頑張ってるからお金も貯まるのが早いし、週末しかお金を使う事が無いからお金がたまってるしね。
それにこの世界に長居をするつもりもないから将来の為に貯金する必要もないから、自然とファッションにお金をつぎ込むようになってきたな・・・。

「さて!まずは・・・『ベソ』と『ノッポ』の処へ行ってみようっと!」

そしてフリルたっぷりのポシェットを肩から下げて管理事務局へと向かった。

コンコン。
ドアをノックしてみるも返事が無い。
コンコンコン。
しーん・・・・・。

「ベソ、ノッポ?いるの?」

ドアを開けようとしても鍵がかかってる。チッ!留守か・・・。

管理事務局を出た後、私は一人寂しく学園内にあるカフェを目指して歩き出した。
ううう・・・。私は嫌われ者のエリスだから一人でお店に入って、学生達にいちゃもんつけられないかな・・・。

「はあ・・・。1人でお店に行くの嫌だなあ・・・。」

ぼそりと呟いて歩いていると、背後から声をかけられた。

「もしかして・・・ベネットか?」

何やら背後から聞き覚えのある声で名前を呼ばれたので私は振り向いた。
すると、そこに立っていたのはエリオット・レーン。そして頭上のハートの好感度はマイナス30を示している。

「あ、お・おはようございます。エリオット様。」

「おはよう、ベネット。やはりその後ろ姿はお前だったのか。その金の長い髪でもしやと思っていたが・・・。」

エリオットは私を上から下までジロジロ見ながら言う。

「それにしても、ベネット。その姿・・・。」

レーンはそこで言葉を切る。
すると・・・ピロリンと音楽が流れ、液晶画面が表示される。

『攻略対象に話しかけてみましょう』

1 可愛いでしょう?
2 似合っていますか?
3 あまり見ないでください
4 文句ありますか?

うっ!この3と4の選択肢・・・もはや喧嘩を売ってるとしか思えない。こんな選択肢を考えるなど、最早まともな思考の持ち主とは思えない。ここは無難に・・2を選択だ。

「似合っていますか?」
するとエリオットの顔色がますます変わっていき・・・唖然とした顔つきになっていた。
う・・・や、やってしまったか?私・・ついに選択肢を間違えて・・・?ん?
何やらエリオットが笑みを浮かべているような・・?

「ああ、ベネット。良く似合っているよ。今まで着ていた服よりもずっと似合っている。お前は可愛らしい服の方がずっといいと思うな。」

何とも歯の浮くようなセリフを言うエリオット。そして好感度は0になっていた。
え・・?あのエリオットが・・?難攻不落とまで一部のユーザーから言われていたあのエリオットの好感度がこんな一度の選択肢で30も上がるなんて・・。
これはバグか?バグなのか?

「バ・バグ・・・・?」

思わず口に出して呟いて、エリオットから妙な顔をされてしまった。

「なんだ、エリス。バグと言うのは?」

え?今・・・?私の名前・・・。
思わず見上げてエリオットの顔をまじまじと見つめる。

「何だ?どうした、エリス?」

「い・いえ。初めてエリスと呼ばれたので・・・。」
目をぱちぱちさせながらエリオットを見上げると、頬を少しだけ染めて言った。

「あ・・すまなかった。他の白銀のナイト達がお前の事をエリスと呼んでいたからつい・・。」

「いえ。別に構わないですよ。それではレーン様。失礼します。」

頭を下げて去ろうとするとエリオットに呼び止められた。

「エリス、今日はメイドの仕事はいいのか?」

「はい。昨日、一昨日と野外パーティー準備を頑張ったので、野外パーティーの仕事は免除になったのです。」

「そうなのか?今日は特に大した仕事はしないはずだが・・・・。そうか・・・。参加しないのか。それは残念だな。」

残念?どういう意味なのだろう、でも・・まあいいか。

「その代り、花火大会の頃には顔を出す事になっています。後片付けは頑張るつもなので。」

「ああ。そうなのか、分かった。覚えておこう。」

エリオットは笑みを浮かべると言った。

ん?覚えておこう?はて・・・一体どういう意味なのだろうか?

「悪かったな、エリス。出かけるところを引き留めてしまって。それじゃあまたな。」

そう言うと、エリオットは立ち去って行った。

「何?今の?」
去って行くエリオットの後姿を見ながらつぶやいたが・・・まあいいか。

「朝ごはん食べに行こうっと。」

その後、学園併設のカフェに入ったもののほかにも学生たちはいたが、誰にも私があのエリスだとは気づかれることもなく、朝ごはんを食べる事が出来たのだった。


そして事件は起こった―。


午後私はスタッフルームを覗きに行ってみる事にした。暇だったと言う事もあるが
皆の様子が気になったからだ。

ガチャリ。
ドアを開けて見るが誰もいない。

「そっか・・・きっと皆野外パーティーに行ってるんだね。」

そしてふと見るとボードに今日のスケジュールが書かれた紙が貼ってあったので、何気なく見てみた。

「え~と・・・なになに・・。午後の2時から・・ああ、レインボーローズ姫コンテストがあるのかあ・・・。」

ちょっと覗いてこようかな・・・。そう思い、何気なく伸びをした時に、椅子の下に隠れるように箱がおかれていた。

「あれ?何の箱なんだろう?」

何気なく箱の蓋を開けた私は仰天した。何と、そこに入っていたのは昨日私とダンが苦労して取って来たレインボーローズが大量に入っていたのである。

「え・・ええええっ?!な・・何故、何故レインボーローズがここに・・・?」

何故か非常に嫌な予感がする。ひょっとするとトビー達はレインボーローズを会場に持って行くのを忘れてしまったのではないだろうか?
私は壁にかけてある時計をちらりと見た。
今の時刻は13時半。この箱を届ける時間は・・うん。何とか間に合いそうだ!
そして私は箱を抱えると、野外パーティー会場へ向かって走り出した。


ハアッハアッ
必死に走り続け・・・ついに会場が見えてきた。そして私は見た。
まさにコンテストが開かれている瞬間を・・・。
壇上にはきらびやかな衣装を身にまとった10名の女生徒達が立っている。
その中にはあのオリビアの姿もあった。

そして司会者が話をしている。

「さあ、それでは彼女たちにレインボーロズの花束を持っていただいて、どの女性が一番似合っているのか競い合ってもらいますっ!さあ!レインボーローズの登場です!」

しかし・・レインボーローズが登場してこない。と言うか。登場するはずがない。だって私が持っているのだから。
あ!トビーが壇上に上がって来た。そして何やら司会者に耳打ちしていると・・・司会者の顔色がみるみる変わっていく。
このままでは・・・!
司会者がマイクを握りしめながら言う。

「え~お集まりのみなさん。只今手違いがありまして、レインボーローズが会場に届いておらず・・・」

言いかけたところを私が大声で止めた。

「待ってくださいっ!」
すると会場にいた全員の視線が私に集中する。
「レインボーローズならあります!届けに来ました!今そちらに行きますっ!」

そして壇上へ駆け足で上がり、躓いて派手に転ぶ私。
持っていた箱が宙を飛び、箱の蓋が外れて・・・大量の薔薇の花が私の上に降って来た。

「キャアッ!」

思わず叫び・・・私はレインボーローズの中から頭を出した。

しーんと静まり返る会場・・・。

あれ・・?何か様子がおかしいな・・。
見ると会場の男性たちは顔を赤らめながら私を見ているし、女子学生たちは唖然とした顔をしている・・。
しかし、何故かオリビアだけは私を睨み付けていたのだが・・・。

やがて盛大な拍手と歓声が沸き起こった。

「すごい!今年の薔薇姫は彼女に決定だ!」
「良く似合ってるわ~!」
「あの女の子・・・誰だ?薔薇の精みたいだ・・・」

等など、拍手喝さいの嵐となった。

え~と・・・この状況は一体・・・?


「おめでとうございますっ!今年のレインボーローズ姫は貴女に決定致しましたっ!」

私に手を差し伸べる司会者の声が会場に響き渡るのだった―。
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