55 / 99
3章3 村長 2
しおりを挟む
「これは又、随分唐突なお話ですな。ですがその様子では、もしかして長旅でもされてきたのですか?」
村長さんは背後にある荷馬車に沢山荷物が積まれていることに気付いたようだ。
「はい、そうです。私と弟は王都から一カ月かけて、こちらの村にやってきました」
「何ですと!? 王都から一カ月かけてですか!?」
私の話に驚いたのか、村長さんの目が見開かれる。60年前もこんなふうに驚かれた記憶がある。
「はい、そうです。都会の暮らしに疲れてしまって、弟と2人で静かな場所で暮らしたいと思って旅を続けてきました。ここまで来るのに色々な町や村を通ってきましたが、この村が一番気に入りました。もし空き家があるなら、そこを貸していただけないでしょうか?」
丁寧に頭を下げた。
「それは大変な長旅でしたね。見ての通り、ここは王都から一番離れた辺鄙な村です。しかも周囲を山脈に覆われている為、冬はとても寒い村ですよ? 今は秋ですが時期に寒い季節がやってきます。この話を聞けば、大抵の人達は移住を考え直すのですが……お2人はそれでも構わないのでしょうか?」
『ルーズ』の村は若者の数が少なく、子供の数もそれほど多くは無い。村からして見れば、私たちのような若者が暮らすのは歓迎するべきことなのだが、村長さんは村の生活の厳しさを、あえて教えてくれているのだろう。
「はい、私たちは大丈夫です。覚悟のうえでこの村に住みたいのです。どうか空き家の提供をお願いいたします。家賃を支払える分の貯えはありますので」
すると村長さんは笑顔になった。
「分かりました、良いですよ。空き家でしたら沢山ありますので、好きな場所を選んでください。家賃だっていりませんよ。ここに住んで下さるだけで、我等『ルーズ』村にとっては財産なのですか。それでは今からご案内いたしましょう。後3時間後には日が落ちてしまいますから、早めに住む場所を選んだほうが良いでしょうからね。では、少し出掛ける用意をしてくるので少々お待ちください」
村長さんが家の中へ入っていくと、ビリーがスカートの裾を引っ張ってきた。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「何?」
「王都から来た侯爵令嬢だってことは言わなくていいの? 王様からこの村に来るように言われてきたんだよね?」
「いいのよ。わざわざ言う必要も無いし、変に気を使って欲しくないもの。私はむしろ、村の人達には普通に接して貰いたいと思っているから」
前回の私は気位ばかり高くて、村の人達に『私に気安く話しかけないでちょうだい』と相手にはしなかった。
それでも村の人達は気を悪くすることが無く、親切にしようとしてくれた。
けれど私は彼らを無視した。
婆や達がいなかったら、完全に私は孤立していただろう。
村に来て数年後に婆や、爺や、それにチェルシーが相次いで亡くなってしまった。
たった1人残された私を、村の人達は親切に接してくれた……。
だから、今回は村人たちと仲良くなりたい。
「あのね、ビリー。仲良くなるには身分のことは明かさないほうがいいのよ。だからビリーも誰にも言わないでね?」
「うん、お姉ちゃんが内緒にしておくって言うなら僕誰にも言わないよ」
その時。
「どうも、お待たせいたしました」
上着を羽織った村長さんが家の中から出てきた。
「では早速見に行きましょうか? 気にった空き家があると良いですけど」
「きっと気に入る空き家は見つかるはずです。案内をお願いします」
私は笑みを浮かべて村長さんに頭を下げた――
村長さんは背後にある荷馬車に沢山荷物が積まれていることに気付いたようだ。
「はい、そうです。私と弟は王都から一カ月かけて、こちらの村にやってきました」
「何ですと!? 王都から一カ月かけてですか!?」
私の話に驚いたのか、村長さんの目が見開かれる。60年前もこんなふうに驚かれた記憶がある。
「はい、そうです。都会の暮らしに疲れてしまって、弟と2人で静かな場所で暮らしたいと思って旅を続けてきました。ここまで来るのに色々な町や村を通ってきましたが、この村が一番気に入りました。もし空き家があるなら、そこを貸していただけないでしょうか?」
丁寧に頭を下げた。
「それは大変な長旅でしたね。見ての通り、ここは王都から一番離れた辺鄙な村です。しかも周囲を山脈に覆われている為、冬はとても寒い村ですよ? 今は秋ですが時期に寒い季節がやってきます。この話を聞けば、大抵の人達は移住を考え直すのですが……お2人はそれでも構わないのでしょうか?」
『ルーズ』の村は若者の数が少なく、子供の数もそれほど多くは無い。村からして見れば、私たちのような若者が暮らすのは歓迎するべきことなのだが、村長さんは村の生活の厳しさを、あえて教えてくれているのだろう。
「はい、私たちは大丈夫です。覚悟のうえでこの村に住みたいのです。どうか空き家の提供をお願いいたします。家賃を支払える分の貯えはありますので」
すると村長さんは笑顔になった。
「分かりました、良いですよ。空き家でしたら沢山ありますので、好きな場所を選んでください。家賃だっていりませんよ。ここに住んで下さるだけで、我等『ルーズ』村にとっては財産なのですか。それでは今からご案内いたしましょう。後3時間後には日が落ちてしまいますから、早めに住む場所を選んだほうが良いでしょうからね。では、少し出掛ける用意をしてくるので少々お待ちください」
村長さんが家の中へ入っていくと、ビリーがスカートの裾を引っ張ってきた。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「何?」
「王都から来た侯爵令嬢だってことは言わなくていいの? 王様からこの村に来るように言われてきたんだよね?」
「いいのよ。わざわざ言う必要も無いし、変に気を使って欲しくないもの。私はむしろ、村の人達には普通に接して貰いたいと思っているから」
前回の私は気位ばかり高くて、村の人達に『私に気安く話しかけないでちょうだい』と相手にはしなかった。
それでも村の人達は気を悪くすることが無く、親切にしようとしてくれた。
けれど私は彼らを無視した。
婆や達がいなかったら、完全に私は孤立していただろう。
村に来て数年後に婆や、爺や、それにチェルシーが相次いで亡くなってしまった。
たった1人残された私を、村の人達は親切に接してくれた……。
だから、今回は村人たちと仲良くなりたい。
「あのね、ビリー。仲良くなるには身分のことは明かさないほうがいいのよ。だからビリーも誰にも言わないでね?」
「うん、お姉ちゃんが内緒にしておくって言うなら僕誰にも言わないよ」
その時。
「どうも、お待たせいたしました」
上着を羽織った村長さんが家の中から出てきた。
「では早速見に行きましょうか? 気にった空き家があると良いですけど」
「きっと気に入る空き家は見つかるはずです。案内をお願いします」
私は笑みを浮かべて村長さんに頭を下げた――
360
あなたにおすすめの小説
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
婚約者が突然「悪役令嬢の私は身を引きますので、どうかヒロインと幸せになって下さい」なんて言い出したけれど、絶対に逃がさない
水谷繭
恋愛
王国の第三王子の僕には、フェリシア・レーンバリという世界一可愛い婚約者がいる。
しかし、フェリシアは突然「私との婚約を破棄していただけませんか」「悪役令嬢の私は身を引きますので、どうかヒロインと幸せになって下さい」なんて言い出した。
彼女の話によると、ここは乙女ゲームの世界で、僕はこれから転校してくるクリスティーナという少女に恋をして、最後にはフェリシアに婚約破棄をつきつけるらしい。
全くわけがわからない。というか僕が好きなのも結婚したいのもフェリシアだけだ。
彼女がこんなことを言いだしたのは、僕が愛情をちゃんと伝えていなかったせいに違いない。反省した僕は彼女の心を取り戻すべく動き出した。
◇表紙画像はノーコピーライトガール様のフリーイラストからお借りしました
◆2021/3/23完結
◆小説家になろうにも掲載しております
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
悪役令嬢は間違えない
スノウ
恋愛
王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。
その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。
処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。
処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。
しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。
そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。
ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。
ジゼットは決意する。
次は絶対に間違えない。
処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。
そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。
────────────
毎日20時頃に投稿します。
お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載中です)
【完結】知らないですか、仏の顔も三度まででしてよ?
詩河とんぼ
恋愛
侯爵令嬢のレイラ・ローニャは、筆頭公爵家子息のブラント・ガルシアと婚約を結んだ関係で仲も良好であった。しかし、二人が学園に入学して一年たったころ突如としてその関係は終わりを告げる。
ティアラ・ナルフィン男爵令嬢はブラントだけでなく沢山の生徒•教師を味方にし、まるで学園の女王様のようになっていた。
レイラはそれを第二王子のルシウス・ハインリッヒと一緒に解決しようと試みる。
沢山のお気に入り登録、ありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡
小説家になろう様でも投稿させていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる