時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
65 / 99

3章13 ビル 2

しおりを挟む
「薪割りなら、私もお手伝いしますよ? 1人では大変でしょうから」

ビルの後を追いかけながら話しかけると、彼は笑顔で言った。

「薪割りなら俺一人で充分ですよ。リアさんは別の仕事をして下さい。早ければ来月には雪が降り始めます。そうなると、外に出ることも困難になる。店は閉まるし、市場だって閉まってしまう。買い物も出来なくなりますよ」

「それはそうですけど……でもビルさんだって……」

そこまで言いかけて、はたと気付く。
そう言えば、この村にはビルを知る村人が1人もいなかったのだ。

ビルに畑仕事を手伝って貰ったことを村の人達に話しても、誰も首を傾げるだけだった。
その時のことが思い出される。

「リアさん? どうかしましたか?」

ビルが首を傾げて私を見ている。

「あ……その……い、いえ。何でもありません。では私は台所の仕事をやってきます。薪割り、お願いしてもいいですか?」

「ええ、任せてください」

ビルは笑顔で返事をすると。薪割り小屋へ入っていった。
その後姿を見届け、私はキノコが入ったカゴを持って家へ向かった――


****

――約3時間後

「……よし、こんなものかしら?」

ビルから貰ったキノコをザル一杯に広げて軒下にぶら下げると、頷いた。
調理台の上では火にかけた鍋がコトコト音を立てており、カボチャスープの良い香りが漂っている。

「どのくらい薪割りが終わっているのかしら?」

様子を見に行く為に、薪小屋へ行ってみることにした。


「ビルさん……? ええっ!? こ、これは何!?」

薪小屋を覗いてみるも、彼の姿はない。代わりに足の踏み場も無い程に、薪が山のように積まれている。その高さは天井にまで届くほどだ。
先程迄は、心もとない程度しか薪が無かったのに。

「一体どういうことなの……?」

しかも肝心のビルの姿が見えない。
首をひねりながら、外に出てみたとき。

カーン!
カーン!

家の裏手から何やら大きな音が聞こえてきた。

「あの音は何? ひょっとしてビルさんかしら?」

慌てて家の裏手に周り、思わず目を見張ってしまった。

「ビルさ……ええっ!?」

風車小屋のすぐ傍に人が入れるほどの穴が開いており、お湯が沸きだしていたからである。ビルはお湯が溢れ出さないように周りを石で堰き止めていた。

「あ、リアさん。家の用事は済んだんですか?」

ビルが笑顔で話しかけてきた。

「は、はい……終わりましたけど……あ、あの。これは……?」

「あぁ、これですか? 薪割りの後、風車の様子を見に行ってみると川から湯気が出ていることに気付いたんです。それで掘ってみたら温泉が湧いてきたんですよ。だから石で囲っていたんです。……これでよしっと」

作業が終わったのか、ビルは立ち上がると笑顔になる。

「リアさん、これで冬も温泉に入ることが出来ますよ」

「お、温泉ですか……?」

まさか、家の裏手に温泉が湧くとは思わなかった。小さな温泉ではあったけれども、これほど嬉しいことは無い。もうビルが謎に満ちている人物だとしてもどうでも良くなってしまい、笑顔でお礼を述べた。

「ありがとうございます、ビルさん。ビリーも大喜びします。あの子は温泉が大好きなので」


「リアさんは本当に弟さんを大切に思っているんですね」

「はい、勿論です! あの子は私の大切な家族ですから」

私は大きく頷いた――

しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

悪役令嬢は間違えない

スノウ
恋愛
 王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。  その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。  処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。  処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。  しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。  そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。  ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。  ジゼットは決意する。  次は絶対に間違えない。  処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。  そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。   ────────────    毎日20時頃に投稿します。  お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。  

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

わがまま令嬢は改心して処刑される運命を回避したい

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のセアラは権力を振りかざし、屋敷でも学園でもわがままの限りを尽くしていた。 ある夜、セアラは悪夢を見る。 それは、お気に入りの伯爵令息デズモンドに騙されて王女様に毒を盛り、処刑されるという夢だった。 首を落とされるリアルな感覚と、自分の死を喜ぶ周りの人間たちの光景に恐怖を覚えるセアラ。しかし、セアラはその中でただ一人自分のために泣いてくれた人物がいたのを思い出す。 セアラは、夢と同じ結末を迎えないよう改心することを決意する。そして夢の中で自分のために泣いてくれた侯爵家のグレアムに近づくが──……。 ●2021/6/28完結 ●表紙画像はノーコピーライトガール様のフリーイラストよりお借りしました! ◆小説家になろうにも掲載しております

【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!

白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。 婚約者ではないのに、です。 それに、いじめた記憶も一切ありません。 私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。 第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。 カクヨムにも掲載しております。

処理中です...