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4章 11 村の秘密 2
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「私の家は代々村長を務めており、何か大きな事件や災害が起きた時には必ず記録を残しておくことが義務付けられているのだよ。それこそ村が出来た時からの歴史が綴られていると言ってもいいだろう。この村に住む者達なら誰でも閲覧できるようになっている。記述書が風化してボロボロになってしまう前に、新しく書き直すのも村長の重要な役目なのだよ。オフィーリアさんにはまだその話はしていなかったね」
「村の……歴史の記述書……ですか?」
そんな話は初耳だ。時が戻る前にも聞いたことが無い。……いや、もしかすると婆や達は知っていたのかもしれない。私が知らなかったのは、村の人々との交流を拒絶していたから……?
「その記録書によると、この村を取り囲む山脈は魔力を宿していると記されている。そのお陰で危険生物が村に出没することも無く安全に暮らしていけるし、火山地帯でも無いのに温泉が湧き出て村人の生活に役立っているのだよ。温泉に入るだけで怪我や病気が良くなるのも、魔力が温泉に宿っているからだ。我々はこの山脈の恵みを受けているからこそ、このような辺境の地でも暮らしていけるのだよ。だが……それには代償がついているのだけどね」
村長さんは神妙な面持ちで語った。
「代償って……何ですか……?」
いやな予感がしてならなかった。
「いわば人身御供的な物だ。我々はそれを『神隠し』と呼んでいる」
「!」
自分の肩が大きく跳ねる。
村長さんの話に村人達の顔が曇る。彼らは恐らくビリーが行方不明になった段階で気付いていたのだ。
神隠しに遭ったということに……。
「……」
隣に座っているビルは先ほどからずっと無言だった。
「あの山脈付近では昔から時折、ある日突然村人が消えてしまう事象が起きていた。そして彼らは皆、一様に何らかの魔力を持っていたのだよ。勿論この世界で魔力を持つ人間は極僅かしかいない。だから滅多に神隠し事件は起こらないのだが……それはそれで問題がある」
「問題って……どんな問題なのですか!?」
聞くのが怖いけれども、知っておかなければならない気がした。
「ある一定の周期で地震が起きたり、山火事が発生したり、温泉が枯渇してしまったりとその事象は様々だ。十数年に一度は起きている災害だよ。尤もここ数十年の間は、至って平和だった。魔力を持つ村人がこの村にいなかったせいか、『神隠し』事件も起きていないし、不思議なことに災害も起こっていなかった。だからすっかり忘れていたのだよ」
村長の言葉に全員が頷きあう。
「最近は本当にずっと平和だったよな?」
「ああ。作物も良く育つし、天候にも恵まれていた」
「だから……忘れてしまっていたんだよな……」
村人たちの話に私の不安は増す一方だった。
「あ、あの……数十年平和だったって……正確には何年くらいなのでしょうか?」
私の質問に村長さんは首をひねる。
「そうだなぁ……恐らく60年ぶりくらいになるのではないかな?」
「60年……!!」
自分の顔から血の気が引くのが分かった。ショックで危うく崩れおちそうになるところをビルが支えてくれた。
「リアッ!? 大丈夫か!?」
「大丈夫かね? オフィーリアさん」
村長さんが声をかけ、村人達も心配そうに見つめている。
「は、はい……」
何とか頷くも、その場にとどまっているのがやっとな程私は衝撃を受けていた。
何となく分かった気がした。
時が巻き戻る60年前、この国は未曽有の大飢饉に見舞われた。その原因は、あの山脈に魔力のある人間が連れ去られなかったからなのかもしれない。
魔力保持者たちは、あの山に生贄として連れ去られてしまった可能性がある。
何故60年も何事も起こらなかったのか理由は分からないけれど……。
バケツの水だって、一杯になれば溢れてしまう。
残り火のついた炭だって寄せ集めれば炎になる。
「リア?」
「リアさん……? どうしたのかね?」
災害を止めておく力が限界点に達してしまったのかもしれない。
それが一気に決壊し……国中を巻き込む飢饉が発生してしまったのだとしたら……?
でも果たして本当にそうだっただろうか?
あの時は、誰か神隠しに遭った人物がいたような気がする。
その次の世界では、神隠しが起こらなかった代わりに大飢饉が……。
「え……?」
思わず自分の頭を抱えてしまった。
次の世界? 私は今、一体何を思ったのだろう? これではまるで自分は3回目の世界を生きているみたいだ。
「そんな……はず……は……」
—―その途端。
急激な目眩に襲われ、私は再び意識を無くした。
ビルが私の名を叫ぶのを聞きながら——
「村の……歴史の記述書……ですか?」
そんな話は初耳だ。時が戻る前にも聞いたことが無い。……いや、もしかすると婆や達は知っていたのかもしれない。私が知らなかったのは、村の人々との交流を拒絶していたから……?
「その記録書によると、この村を取り囲む山脈は魔力を宿していると記されている。そのお陰で危険生物が村に出没することも無く安全に暮らしていけるし、火山地帯でも無いのに温泉が湧き出て村人の生活に役立っているのだよ。温泉に入るだけで怪我や病気が良くなるのも、魔力が温泉に宿っているからだ。我々はこの山脈の恵みを受けているからこそ、このような辺境の地でも暮らしていけるのだよ。だが……それには代償がついているのだけどね」
村長さんは神妙な面持ちで語った。
「代償って……何ですか……?」
いやな予感がしてならなかった。
「いわば人身御供的な物だ。我々はそれを『神隠し』と呼んでいる」
「!」
自分の肩が大きく跳ねる。
村長さんの話に村人達の顔が曇る。彼らは恐らくビリーが行方不明になった段階で気付いていたのだ。
神隠しに遭ったということに……。
「……」
隣に座っているビルは先ほどからずっと無言だった。
「あの山脈付近では昔から時折、ある日突然村人が消えてしまう事象が起きていた。そして彼らは皆、一様に何らかの魔力を持っていたのだよ。勿論この世界で魔力を持つ人間は極僅かしかいない。だから滅多に神隠し事件は起こらないのだが……それはそれで問題がある」
「問題って……どんな問題なのですか!?」
聞くのが怖いけれども、知っておかなければならない気がした。
「ある一定の周期で地震が起きたり、山火事が発生したり、温泉が枯渇してしまったりとその事象は様々だ。十数年に一度は起きている災害だよ。尤もここ数十年の間は、至って平和だった。魔力を持つ村人がこの村にいなかったせいか、『神隠し』事件も起きていないし、不思議なことに災害も起こっていなかった。だからすっかり忘れていたのだよ」
村長の言葉に全員が頷きあう。
「最近は本当にずっと平和だったよな?」
「ああ。作物も良く育つし、天候にも恵まれていた」
「だから……忘れてしまっていたんだよな……」
村人たちの話に私の不安は増す一方だった。
「あ、あの……数十年平和だったって……正確には何年くらいなのでしょうか?」
私の質問に村長さんは首をひねる。
「そうだなぁ……恐らく60年ぶりくらいになるのではないかな?」
「60年……!!」
自分の顔から血の気が引くのが分かった。ショックで危うく崩れおちそうになるところをビルが支えてくれた。
「リアッ!? 大丈夫か!?」
「大丈夫かね? オフィーリアさん」
村長さんが声をかけ、村人達も心配そうに見つめている。
「は、はい……」
何とか頷くも、その場にとどまっているのがやっとな程私は衝撃を受けていた。
何となく分かった気がした。
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魔力保持者たちは、あの山に生贄として連れ去られてしまった可能性がある。
何故60年も何事も起こらなかったのか理由は分からないけれど……。
バケツの水だって、一杯になれば溢れてしまう。
残り火のついた炭だって寄せ集めれば炎になる。
「リア?」
「リアさん……? どうしたのかね?」
災害を止めておく力が限界点に達してしまったのかもしれない。
それが一気に決壊し……国中を巻き込む飢饉が発生してしまったのだとしたら……?
でも果たして本当にそうだっただろうか?
あの時は、誰か神隠しに遭った人物がいたような気がする。
その次の世界では、神隠しが起こらなかった代わりに大飢饉が……。
「え……?」
思わず自分の頭を抱えてしまった。
次の世界? 私は今、一体何を思ったのだろう? これではまるで自分は3回目の世界を生きているみたいだ。
「そんな……はず……は……」
—―その途端。
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ビルが私の名を叫ぶのを聞きながら——
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