83 / 566
第7章 6 大事件
しおりを挟む
「さあ、ヒルダさん。こっちへ来て頂戴。」
グレースはさっさとノラ達の元へ行くとヒルダに手招きした。
「え、ええ・・・。」
ヒルダはこの後に何が待ち受けているの分からなくて怖かったが、グレースに逆らう方が余程怖かった。
コツコツと杖を突いて歩くもぎしぎしと軋む足場の悪い床はヒルダに取って非常に歩きにくかった。
そして杖を突いて歩くヒルダの様子を冷たい目で見つめるグレースとは対照的にノラ達はヒルダに対して申し訳ない気持ちで一杯だった。
(お・・・俺が・・グレースに言われて蜂の巣を叩き落したりしたから・・。ご、ごめんよ・・・。)
(ヒルダさん・・女の子なのにあんな傷を負って・・その原因を作ったのが私達なんて・・・。本当に・・・ごめんなさい・・!)
(ごめん・・・!俺達のせいで・・・!)
イワン、ノラ、コリンは青ざめた顔で杖をついてこちらに向かって歩いてい来るヒルダに心の中で謝罪した。もし、この場にグレースがいなければきっと彼等は土下座してヒルダに謝っていただろう。
しかし、グレースはそんな彼らの胸の内に全く気が付く事は無かった。グレースの頭の中は最早ルドルフを手に入れる事しか眼中に無かったのだ。
ヒルダが4人の前に辿り着くとグレースは腕組みしながら言った。
「ヒルダさん、貴女・・本当にルドルフとはきっちり別れてくれたんでしょうね?」
「ええ、勿論よ。ちゃんと言われた通り婚約破棄をしたし・・・その日以来私は一度もルドルフとは会っていないもの。何ならルドルフに確認してみて頂戴。」
「ふ~ん・・そうなの。分かったわ、それじゃ・・・あなた達。ルドルフにヒルダさ何とは婚約破棄したのは本当かどうか確かめておきなさいよ?私が尋ねてみても・・ルドルフは嘘をつくかもしれないから。」
グレースはコリン達の方を見ながら命令した。
「「「・・・。」」」
3人は黙って頷く。
「あ、あの・・・話しはもうこれで終わりでいいかしら?終わったのなら帰りたいのだけど・・・。」
ヒルダの言葉にグレースは首を振った。
「いいえ、まだよ。ルドルフが私に振り向いてくれるようにする為には・・私が貴女に酷い目に遭わされたと言う事を証明すれば、きっとルドルフは貴女を嫌って、私に同情してくれるはずよ。」
グレースの言葉にヒルダは凍り付いた。
「そうね・・・。どうすればいいかしら・・・?」
グレースはキョロキョロと辺りを見渡し・・・暖炉に目を向けた。暖炉の中は薪がぱちぱちと音を立てて燃えている。
「そうだ!いい事を思いついたわっ!」
グレースは言うと、暖炉に近付き、足元に堕ちていた薪を1本拾い上げると、暖炉の火に近付けた。するとあっという間にグレースの握った薪の先端に赤い炎が揺らめいていた。
「フフフ・・良く燃えている。」
グレースは炎を満足そうに見つめるとヒルダに近付いてきた。
「グ・・グレースさん・・?い、一体何を・・・。」
ヒルダは薪をまるで松明の様に持って近付いてくるグレースが恐ろしくて堪らなかった。それは他の3人の少年たちも同様だった。
「お、おい!グレース!ヒルダに何するつもりだよっ!」
とうとうたまらずイワンが声を上げた。
「うるさいわねっ!この炎ををちょっとだけ私に近付けて火傷するのよ。そしてその火傷をヒルダのせいにするのよっ!」
グレースの言葉にその場にいた全員が息を飲んだ。
「やめろよっ!グレースッ!!」
イワンがグレースに駆け寄ると炎の薪を握りしめている右腕を思い切り強く掴んだ。
「い、痛いっ!」
グレースが叫んだ瞬間、火のついた薪を手放してしまい、行き場の無くなった薪は床の上の落ちてしまった。
次の瞬間―
火のついた薪が落ちた床がバチバチと燃え始めたのだ。
「グレースさんっ?!」
ヒルダが悲鳴を上げた。
「ああっ!火。火がっ!!」
グレースが真っ青になって叫んだ。
「水、水は何処だよっ?!」
パニックになってコリンは騒ぐが、ノラは言った。
「何言ってるんだよっ!ここは廃墟だ!水なんかあるはず無いだろう?!」
コリンが涙声で叫ぶ。
「も、もう逃げるしかないよっ!」
イワンの言葉にノラも同意した。
「そ、そうよっ!逃げるんじゃ無くて・・・助けを呼びに行くのよっ!!」
「私も行くわっ!」
「お、置いて行かないでくれよっ!」
グレースに続き、イワンもバタバタと走って行く。
(早く・・・私も逃げなくちゃ・・。)
ヒルダは痛む足を引きずりながら必死になって出口目指して進んだ。炎はどんどん燃え広がってゆき、煙が辺りを充満している。
(あ・・・熱い・・・っ!早く・・出口へ・・!)
炎はますます激しく燃え広がってゆくが、ヒルダは走って逃げる事が出来ない。
パリーン!
パリーン!
窓は熱で割れていき、とうとうヒルダの眼前に炎のついた柱がヒルダの場所すれすれに落下してきた。
「キャアアッ!」
(も・・もう駄目・・・・!)
床に倒れ込み、半ば諦めかけた時・・何者かが教会に飛び込んでくると迷わずヒルダの元へと走り寄ると、ヒルダを抱き上げてそのまま駆け足で教会の外へと連れ出してくれた。
「だ・・・誰・・?」
地面に寝かされたヒルダは薄目を開けて相手の顔を見ようとしたが・・・そのまま意識を失ってしまった—。
グレースはさっさとノラ達の元へ行くとヒルダに手招きした。
「え、ええ・・・。」
ヒルダはこの後に何が待ち受けているの分からなくて怖かったが、グレースに逆らう方が余程怖かった。
コツコツと杖を突いて歩くもぎしぎしと軋む足場の悪い床はヒルダに取って非常に歩きにくかった。
そして杖を突いて歩くヒルダの様子を冷たい目で見つめるグレースとは対照的にノラ達はヒルダに対して申し訳ない気持ちで一杯だった。
(お・・・俺が・・グレースに言われて蜂の巣を叩き落したりしたから・・。ご、ごめんよ・・・。)
(ヒルダさん・・女の子なのにあんな傷を負って・・その原因を作ったのが私達なんて・・・。本当に・・・ごめんなさい・・!)
(ごめん・・・!俺達のせいで・・・!)
イワン、ノラ、コリンは青ざめた顔で杖をついてこちらに向かって歩いてい来るヒルダに心の中で謝罪した。もし、この場にグレースがいなければきっと彼等は土下座してヒルダに謝っていただろう。
しかし、グレースはそんな彼らの胸の内に全く気が付く事は無かった。グレースの頭の中は最早ルドルフを手に入れる事しか眼中に無かったのだ。
ヒルダが4人の前に辿り着くとグレースは腕組みしながら言った。
「ヒルダさん、貴女・・本当にルドルフとはきっちり別れてくれたんでしょうね?」
「ええ、勿論よ。ちゃんと言われた通り婚約破棄をしたし・・・その日以来私は一度もルドルフとは会っていないもの。何ならルドルフに確認してみて頂戴。」
「ふ~ん・・そうなの。分かったわ、それじゃ・・・あなた達。ルドルフにヒルダさ何とは婚約破棄したのは本当かどうか確かめておきなさいよ?私が尋ねてみても・・ルドルフは嘘をつくかもしれないから。」
グレースはコリン達の方を見ながら命令した。
「「「・・・。」」」
3人は黙って頷く。
「あ、あの・・・話しはもうこれで終わりでいいかしら?終わったのなら帰りたいのだけど・・・。」
ヒルダの言葉にグレースは首を振った。
「いいえ、まだよ。ルドルフが私に振り向いてくれるようにする為には・・私が貴女に酷い目に遭わされたと言う事を証明すれば、きっとルドルフは貴女を嫌って、私に同情してくれるはずよ。」
グレースの言葉にヒルダは凍り付いた。
「そうね・・・。どうすればいいかしら・・・?」
グレースはキョロキョロと辺りを見渡し・・・暖炉に目を向けた。暖炉の中は薪がぱちぱちと音を立てて燃えている。
「そうだ!いい事を思いついたわっ!」
グレースは言うと、暖炉に近付き、足元に堕ちていた薪を1本拾い上げると、暖炉の火に近付けた。するとあっという間にグレースの握った薪の先端に赤い炎が揺らめいていた。
「フフフ・・良く燃えている。」
グレースは炎を満足そうに見つめるとヒルダに近付いてきた。
「グ・・グレースさん・・?い、一体何を・・・。」
ヒルダは薪をまるで松明の様に持って近付いてくるグレースが恐ろしくて堪らなかった。それは他の3人の少年たちも同様だった。
「お、おい!グレース!ヒルダに何するつもりだよっ!」
とうとうたまらずイワンが声を上げた。
「うるさいわねっ!この炎ををちょっとだけ私に近付けて火傷するのよ。そしてその火傷をヒルダのせいにするのよっ!」
グレースの言葉にその場にいた全員が息を飲んだ。
「やめろよっ!グレースッ!!」
イワンがグレースに駆け寄ると炎の薪を握りしめている右腕を思い切り強く掴んだ。
「い、痛いっ!」
グレースが叫んだ瞬間、火のついた薪を手放してしまい、行き場の無くなった薪は床の上の落ちてしまった。
次の瞬間―
火のついた薪が落ちた床がバチバチと燃え始めたのだ。
「グレースさんっ?!」
ヒルダが悲鳴を上げた。
「ああっ!火。火がっ!!」
グレースが真っ青になって叫んだ。
「水、水は何処だよっ?!」
パニックになってコリンは騒ぐが、ノラは言った。
「何言ってるんだよっ!ここは廃墟だ!水なんかあるはず無いだろう?!」
コリンが涙声で叫ぶ。
「も、もう逃げるしかないよっ!」
イワンの言葉にノラも同意した。
「そ、そうよっ!逃げるんじゃ無くて・・・助けを呼びに行くのよっ!!」
「私も行くわっ!」
「お、置いて行かないでくれよっ!」
グレースに続き、イワンもバタバタと走って行く。
(早く・・・私も逃げなくちゃ・・。)
ヒルダは痛む足を引きずりながら必死になって出口目指して進んだ。炎はどんどん燃え広がってゆき、煙が辺りを充満している。
(あ・・・熱い・・・っ!早く・・出口へ・・!)
炎はますます激しく燃え広がってゆくが、ヒルダは走って逃げる事が出来ない。
パリーン!
パリーン!
窓は熱で割れていき、とうとうヒルダの眼前に炎のついた柱がヒルダの場所すれすれに落下してきた。
「キャアアッ!」
(も・・もう駄目・・・・!)
床に倒れ込み、半ば諦めかけた時・・何者かが教会に飛び込んでくると迷わずヒルダの元へと走り寄ると、ヒルダを抱き上げてそのまま駆け足で教会の外へと連れ出してくれた。
「だ・・・誰・・?」
地面に寝かされたヒルダは薄目を開けて相手の顔を見ようとしたが・・・そのまま意識を失ってしまった—。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私達、婚約破棄しましょう
アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。
婚約者には愛する人がいる。
彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。
婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。
だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる