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第9章 4 ルドルフの帰郷 4
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「エドガー様。ルドルフってどなた?」
紅茶を飲んでいたアンナがエドガーに尋ねてきた。
「ああ、ルドルフって言うのは父の執事をしている男性の息子なんだ。」
「まあ、そうだったの?それではきちんとご挨拶しなければね。」
アンナは居住まいをただした。その様子を見たエドガーは困ったことになったと思った。恐らくルドルフはヒルダの事で自分を尋ねてきたに違いない。しかし、アンナの前ではヒルダの話はするわけにはいかない。いや、そもそも本来『カウベリー』ではヒルダの話はタブー視されているのだ。ましてアンナはヒルダの事すら知らないのだ。
(どうしよう・・・困った事になったな・・。)
エドガーは腕組みをした。一方の執事もエドガーの態度にどうすればよいのか分からず、戸惑っていた。
「どうしたの?エドガー様。ルドルフ様をお部屋の中にいれて差し上げないの?」
アンナは不思議そうな顔でエドガーを見る。
「あ、ああ。そうだったね。アンナが来ているのに彼を招いても良いかどうか迷っていたんだ。」
するとアンナは顔を赤らめると言った。
「まあ、エドガー様。それほどまでに私の事を気にかけて下さったのですか?私の事ならどうぞお構いなく。ルドルフ様をお部屋に招き入れてあげて下さい。」
「分かったよ。それじゃルドルフを中に入れてくれ。」
「かしこまりました。」
エドガーに命じられた執事は頭を下げるとドアを開けて、出入り口に立っていたルドルフに声を掛けた。
「どうぞ、ルドルフ様。中へお入りください。」
「失礼します。」
呼ばれたルドルフが頭を下げると、エドガーの書斎へ足を踏みいれた。
「突然お邪魔してしまい、申し訳ございません。エドガー様。」
「まあ、貴方がルドルフと言うのね?」
「え?」
突然声を掛けられたルドルフは驚いてアンナを見た。
ルドルフはヒルダの事で頭が一杯だったので、そこにアンナがいる事に気付かなかったのだ。
「あ、あの・・・貴女は・・・?」
するとアンナは立ち上がり、ワンピースの裾を少しつまむと丁寧にお辞儀をした。
「初めまして、ルドルフ様。私はアンナ・マクレガーと申します。エドガー様の婚約者です。どうぞよろしくお願い致します。」
「え?あ、貴女がエドガー様の婚約者なのですか?」
正直、ルドルフはアンナを見て驚いた。何故ならあまりにも幼い少女にしか見えなかったからだ。思わずチラリとエドガーを見ると、彼はじっと自分を見つめていることに気が付いた。その眼は・・・まるで余計な事は何も言うなと自分に訴えているように感じられた。
(そうか・・・。きっとこの方の前ではヒルダ様に関する話は一切するなという事か・・。)
ヒルダの話が出来ないのであれば、ここにやってきた意味は何も無い。本日長い汽車の旅をして『カウベリー』に帰って来たばかり。疲れた身体に鞭打って小雪の舞う中、わざわざフィールズ家に来たと言うのに・・・。
(やっぱり事前にアポイントを取ってから来れば良かった・・・。)
しかし後悔しても、もう遅い。ルドルフは口元に笑みを浮かべるとアンナに挨拶をした。
「初めまして、ルドルフ・テイラーと申します。どうぞ宜しくお願い致します。」
するとアンナがため息交じりに言う。
「それにしても・・ルドルフ様も素敵な方ね。エドガー様もとても美しい方ですけど、ルドルフ様もとても美しいですわ。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
ルドルフは戸惑いながら感謝を述べると、エドガーは苦笑してこちらを見ていた。
(やはり、アンナ嬢はまだまだ子供だ・・・。出来ればアンナ嬢には年相応の少年と婚約を結んで欲しいのだが・・・そうもいかないのだろうな・・。)
そしてエドガーは心の中でため息をつくのだった―。
紅茶を飲んでいたアンナがエドガーに尋ねてきた。
「ああ、ルドルフって言うのは父の執事をしている男性の息子なんだ。」
「まあ、そうだったの?それではきちんとご挨拶しなければね。」
アンナは居住まいをただした。その様子を見たエドガーは困ったことになったと思った。恐らくルドルフはヒルダの事で自分を尋ねてきたに違いない。しかし、アンナの前ではヒルダの話はするわけにはいかない。いや、そもそも本来『カウベリー』ではヒルダの話はタブー視されているのだ。ましてアンナはヒルダの事すら知らないのだ。
(どうしよう・・・困った事になったな・・。)
エドガーは腕組みをした。一方の執事もエドガーの態度にどうすればよいのか分からず、戸惑っていた。
「どうしたの?エドガー様。ルドルフ様をお部屋の中にいれて差し上げないの?」
アンナは不思議そうな顔でエドガーを見る。
「あ、ああ。そうだったね。アンナが来ているのに彼を招いても良いかどうか迷っていたんだ。」
するとアンナは顔を赤らめると言った。
「まあ、エドガー様。それほどまでに私の事を気にかけて下さったのですか?私の事ならどうぞお構いなく。ルドルフ様をお部屋に招き入れてあげて下さい。」
「分かったよ。それじゃルドルフを中に入れてくれ。」
「かしこまりました。」
エドガーに命じられた執事は頭を下げるとドアを開けて、出入り口に立っていたルドルフに声を掛けた。
「どうぞ、ルドルフ様。中へお入りください。」
「失礼します。」
呼ばれたルドルフが頭を下げると、エドガーの書斎へ足を踏みいれた。
「突然お邪魔してしまい、申し訳ございません。エドガー様。」
「まあ、貴方がルドルフと言うのね?」
「え?」
突然声を掛けられたルドルフは驚いてアンナを見た。
ルドルフはヒルダの事で頭が一杯だったので、そこにアンナがいる事に気付かなかったのだ。
「あ、あの・・・貴女は・・・?」
するとアンナは立ち上がり、ワンピースの裾を少しつまむと丁寧にお辞儀をした。
「初めまして、ルドルフ様。私はアンナ・マクレガーと申します。エドガー様の婚約者です。どうぞよろしくお願い致します。」
「え?あ、貴女がエドガー様の婚約者なのですか?」
正直、ルドルフはアンナを見て驚いた。何故ならあまりにも幼い少女にしか見えなかったからだ。思わずチラリとエドガーを見ると、彼はじっと自分を見つめていることに気が付いた。その眼は・・・まるで余計な事は何も言うなと自分に訴えているように感じられた。
(そうか・・・。きっとこの方の前ではヒルダ様に関する話は一切するなという事か・・。)
ヒルダの話が出来ないのであれば、ここにやってきた意味は何も無い。本日長い汽車の旅をして『カウベリー』に帰って来たばかり。疲れた身体に鞭打って小雪の舞う中、わざわざフィールズ家に来たと言うのに・・・。
(やっぱり事前にアポイントを取ってから来れば良かった・・・。)
しかし後悔しても、もう遅い。ルドルフは口元に笑みを浮かべるとアンナに挨拶をした。
「初めまして、ルドルフ・テイラーと申します。どうぞ宜しくお願い致します。」
するとアンナがため息交じりに言う。
「それにしても・・ルドルフ様も素敵な方ね。エドガー様もとても美しい方ですけど、ルドルフ様もとても美しいですわ。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
ルドルフは戸惑いながら感謝を述べると、エドガーは苦笑してこちらを見ていた。
(やはり、アンナ嬢はまだまだ子供だ・・・。出来ればアンナ嬢には年相応の少年と婚約を結んで欲しいのだが・・・そうもいかないのだろうな・・。)
そしてエドガーは心の中でため息をつくのだった―。
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