272 / 566
第1章 2 クリスマスの話題
しおりを挟む
「おはようございます。」
診療開始15分前にヒルダが出勤してきた。
「あ、おはよう。ヒルダちゃん。」
受付で本日受診に訪れて来る患者のカルテを用意していたリンダが挨拶を返してきた。
「それでは着替えてきますね。」
ヒルダは杖をつきながら受付の前を通り、奥にあるロッカールームへと向かった。
「ヒルダ、おはよう。」
診察室のドアが開き、中にいたアレンが顔を覗かせて来た。
「おはようございます。アレン先生。」
アレンはヒルダの左足を見ると尋ねてきた。
「どうだ?今日の足の具合は?」
「そうですね。冷え込みが今朝はそれほど酷くなかったので痺れはありません。」
「そうか、でも一応昼休みは温シップとマッサージはやったほうがいいだろう。」
「はい、分かりました。では着替えてきますね。」
ヒルダは頭を下げ、次に診察室の隣にある処置室を覗いてみた。そこにはガーゼを均等にはさみで切っている看護師のレイチェルの姿があった。
「おはようございます、レイチェルさん。」
ヒルダが声を掛けるとレイチェルは顔を上げた。
「あ、おはようヒルダ。今日はよろしくね?」
「はい、すぐに着替えてきますね。」
ヒルダは返事をすると、隣にあるロッカールームへと入って行った。ロッカーを開けて脱いだ上着をハンガーにかけ、そのかわりに真っ白なエプロンを身に着ける。荷物をロッカーに入れると、ロッカールームに置いてある箒と塵取りを持って待合室の掃除に向かった・・・。
午前の診察はかなり忙しかった。
本日はあまり寒くなかったと言う事と、週末が重なり午前の診療はかなり忙しかった。ヒルダは時には受付でリンダの手伝いをしたり、処置室でレイチェルの手伝いをしたりと一生懸命働いた―。
昼休み―
診療所の中にある従業員専用の小部屋でテーブルに向かって座るヒルダ達の姿があった。テーブルにはそれぞれのお弁当が広げられている。
「ふ~・・・今日は朝から忙しかったわね・・・。」
受付のリンダが伸びをしながら言った。
「ああ、確かに忙しかったな。」
アレンは頷くと、ヒルダに声を掛けた。
「ヒルダ、今日は殆ど立ちっぱなしになってしまったが・・足の痺れはどうだ?」
「今のところ大丈夫です。」
お弁当のロールサンドを食べていたヒルダは返事をした。
「そうか、でも食事が終わった後はマッサージをした方がいいだろう。」
「はい、分かりました。」
そんな2人の様子を見ながらレイチェルが声を掛けて来た。
「早いものでもう12月ね。ところでクリスマスだけど・・ヒルダはどうするの?」
「え?私ですか?」
「ええ、そう。」
リンダも会話に加わって来た。
「そうですね・・・・。」
ヒルダは少し考えこんだ。
(あ、そう言えば・・。確かその夜はフランシスのご両親のレストランに呼ばれていたんだわ。)
「夜なら予定がありますけど?」
「え?!」
アレンは自分でも驚くほどに大きな声をあげてしまった。3人の目が一斉にアレンを見る。
(し、しまった・・・興味ないふりをしていたのに・・!)
焦ったアレンは咳ばらいをすると言った。
「そうなのか、素敵な夜になるといいな。」
本当はその日の夜はどんなふうに過ごすのかと問い詰めたい気持ちで山々だったが、アレンは自分の気持ちを治めるように言うと、バゲットのサンドイッチにかぶりついた。そんなアレンの様子にリンダが気を利かせてヒルダに尋ねてきた。
「ねえ、ヒルダちゃん。その夜はどんなふうにして過ごすのかしら?」
「はい、実は友人のご両親が港の近くでレストランを経営しているんです。その日の夜はそこでクリスマスパーティーを開くそうで、私と姉も招待されたんです。」
「まあ・・・いいわね!うらやましいわ~・・・私はその日は朝から家族の為にクリスマス料理を作らないといけないから大変だわ・・・。」
肩をすくめながらレイチェルは言う。
「私もそうよ、子供達から出来立てのジンジャークッキーも作ってとせがまれてるんだから・・・。それで?アレン先生はどうやって過ごすのかしら?」
「う・・・。」
今度はアレンが全員から注目を浴びる番となるのだった―。
診療開始15分前にヒルダが出勤してきた。
「あ、おはよう。ヒルダちゃん。」
受付で本日受診に訪れて来る患者のカルテを用意していたリンダが挨拶を返してきた。
「それでは着替えてきますね。」
ヒルダは杖をつきながら受付の前を通り、奥にあるロッカールームへと向かった。
「ヒルダ、おはよう。」
診察室のドアが開き、中にいたアレンが顔を覗かせて来た。
「おはようございます。アレン先生。」
アレンはヒルダの左足を見ると尋ねてきた。
「どうだ?今日の足の具合は?」
「そうですね。冷え込みが今朝はそれほど酷くなかったので痺れはありません。」
「そうか、でも一応昼休みは温シップとマッサージはやったほうがいいだろう。」
「はい、分かりました。では着替えてきますね。」
ヒルダは頭を下げ、次に診察室の隣にある処置室を覗いてみた。そこにはガーゼを均等にはさみで切っている看護師のレイチェルの姿があった。
「おはようございます、レイチェルさん。」
ヒルダが声を掛けるとレイチェルは顔を上げた。
「あ、おはようヒルダ。今日はよろしくね?」
「はい、すぐに着替えてきますね。」
ヒルダは返事をすると、隣にあるロッカールームへと入って行った。ロッカーを開けて脱いだ上着をハンガーにかけ、そのかわりに真っ白なエプロンを身に着ける。荷物をロッカーに入れると、ロッカールームに置いてある箒と塵取りを持って待合室の掃除に向かった・・・。
午前の診察はかなり忙しかった。
本日はあまり寒くなかったと言う事と、週末が重なり午前の診療はかなり忙しかった。ヒルダは時には受付でリンダの手伝いをしたり、処置室でレイチェルの手伝いをしたりと一生懸命働いた―。
昼休み―
診療所の中にある従業員専用の小部屋でテーブルに向かって座るヒルダ達の姿があった。テーブルにはそれぞれのお弁当が広げられている。
「ふ~・・・今日は朝から忙しかったわね・・・。」
受付のリンダが伸びをしながら言った。
「ああ、確かに忙しかったな。」
アレンは頷くと、ヒルダに声を掛けた。
「ヒルダ、今日は殆ど立ちっぱなしになってしまったが・・足の痺れはどうだ?」
「今のところ大丈夫です。」
お弁当のロールサンドを食べていたヒルダは返事をした。
「そうか、でも食事が終わった後はマッサージをした方がいいだろう。」
「はい、分かりました。」
そんな2人の様子を見ながらレイチェルが声を掛けて来た。
「早いものでもう12月ね。ところでクリスマスだけど・・ヒルダはどうするの?」
「え?私ですか?」
「ええ、そう。」
リンダも会話に加わって来た。
「そうですね・・・・。」
ヒルダは少し考えこんだ。
(あ、そう言えば・・。確かその夜はフランシスのご両親のレストランに呼ばれていたんだわ。)
「夜なら予定がありますけど?」
「え?!」
アレンは自分でも驚くほどに大きな声をあげてしまった。3人の目が一斉にアレンを見る。
(し、しまった・・・興味ないふりをしていたのに・・!)
焦ったアレンは咳ばらいをすると言った。
「そうなのか、素敵な夜になるといいな。」
本当はその日の夜はどんなふうに過ごすのかと問い詰めたい気持ちで山々だったが、アレンは自分の気持ちを治めるように言うと、バゲットのサンドイッチにかぶりついた。そんなアレンの様子にリンダが気を利かせてヒルダに尋ねてきた。
「ねえ、ヒルダちゃん。その夜はどんなふうにして過ごすのかしら?」
「はい、実は友人のご両親が港の近くでレストランを経営しているんです。その日の夜はそこでクリスマスパーティーを開くそうで、私と姉も招待されたんです。」
「まあ・・・いいわね!うらやましいわ~・・・私はその日は朝から家族の為にクリスマス料理を作らないといけないから大変だわ・・・。」
肩をすくめながらレイチェルは言う。
「私もそうよ、子供達から出来立てのジンジャークッキーも作ってとせがまれてるんだから・・・。それで?アレン先生はどうやって過ごすのかしら?」
「う・・・。」
今度はアレンが全員から注目を浴びる番となるのだった―。
2
あなたにおすすめの小説
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな
恋愛
私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる