嫌われた令嬢、ヒルダ・フィールズは終止符を打つ

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第3章 7 再びの面会

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 それから約1時間後―

ヒルダとルドルフは赤十字病院から出てきた。あの後無事にノラの代理で診察室へ入り、現状を報告することが出来たのだ。診察室に現れたのは年若い女医でルドルフの話を親身になって聞いてくれた。そして明日、ノラを今入院している施設からこの病院に転院させることを承諾してくれたのだった。

「良かったわね。ノラさんをこの病院に転院させてあげることが出来て」

手を繋ぎながら歩いていると、ヒルダが声を掛けてきた。

「ええ。本当に良かったです。これからノラのいる入院施設に行って知らせに行きましょう」

ルドルフがヒルダの手をギュッと握り締めると言った。

「ええ。そうね。行きましょう」

そしてヒルダは笑みを返すのだった―。




「おや?あんたたち・・・性懲りもなくまたここへやってきたのかい?」

昨日同様、受付にいた老婆が2人をジロリと見ると言った。

「ええ。そのことなんですが・・もう赤十字病院から連絡は来ましたか?」

ルドルフが尋ねると老婆は頷いた。

「ああ。さっき病院から電話を貰って驚いたよ。まさかあの少女を病院に移してあげるとはね・・一体どんな手を使ったんだい?」

「いえ、使ったも何も・・・お金さえ払えれば入院出来ると言うので・・ただそれだけのことです」

ルドルフは先ほどの病院での会話を思い出していた。入院費用は大体1カ月で金貨2枚だと言う。それなら自分のアルバイト代でまかなえそうだったのでルドルフは了承したのだった。

「ふん・・・やはりこの世は金なんだねぇ・・でもあの子はついていたね?あんたたち貴族と知り合いだったんだから。・・・それじゃ早く伝えて来てやりな。・・感染しないように注意するんだよ」

「はい、分かりました」

「ありがとうございます」

ルドルフに続いて、ヒルダも礼を述べると2人はマスクをし、それぞれスカーフやマフラーでしっかり口元を押さえるとノラのいる病室へと向かった。

「ルドルフ・・・相変わらずこの病院は・・寒いわね。赤十字病院ではボイラーがたかれて・・暖かだったのに」

スカーフで顔を覆ったヒルダがポツリという。

「ええ・・そうですね。ヒルダ様・・寒いですか?大丈夫ですか?」

歩きながらルドルフがヒルダの肩を抱き寄せてきた。

「ええ、大丈夫よ。ありがとう、ルドルフ」

「いえ・・それでは部屋に向かいましょう」

ルドルフは笑みを浮かべてヒルダを見つめた―。



 病室へ入るとルドルフはヒルダを伴ってまっすぐにノラのベッドへ近づいた。

壁の方を向いてゴホンゴホンと咳をするノラから少し距離を開けてルドルフは立つと声を掛けた。

「ノラ・・・」

「え・・?」

その声に驚いたようにノラは振り返り、ルドルフを見ると目を見開いた。

「え・・?ルドルフ・・?それにヒルダさんも・・どうしてまた・・ここへきたのよ・・」

タオルで口を押え、時折咳込みながらノラが尋ねた。

「ノラ、君を明日赤十字病院に転院させることが決まったよ。そこで治療を受けるんだ。そしたら・・結核が治るかもしれない」

「え・・・?ちょ、ちょっと・・・何言ってるのよ・・・?」

ノラは耳を疑った。まさか赤十字病院に転院して治療を受ける事になるとは夢にも思わなかったからだ。

「ルドルフが・・・ノラさんの為に病院を探してくれたのよ?あの病院は温かかったし・・先生もとても良い方だったわ」

ヒルダが言う。

「だ、だけど・・・私にはお金なんて・・・まさか・・?」

ノラはルドルフを見た。

「入院費用なら僕が払うよ。ノラ・・・君には絶対に良くなって貰いたいんだ。あの教会の火事の事件の証言をしてくれる数少ない人間だから・・」

「そう・・私に死なれたら・・困るもの・・ね・・」

ノラは寂し気に笑った。

「別にそんなつもりで君を病院に移すわけじゃないよ。仮にも僕たちは友人同士だっただ・・イワンがあんな事になって・・もう僕はこれ以上誰かが不幸な目に遭うのを見たくはないんだよ」

「・・・そう、ありがとう・・・」

ノラは背中を向けると礼を言った。

「明日、10時に迎えの馬車が来るそうだから・・・明日又来るよ。じゃあね」

(え・・?明日・・?)

ヒルダはその言葉に首を傾げた。


 病室を出たヒルダはルドルフに尋ねた。

「ねえ、明日も・・ここへ来るの?てっきり今日『ロータス』へ帰るのだと思っていたのだけど・・」

「すみません、その事ですが・・僕はノラを転院させる責任があるので明日も滞在してみるつもりなんです。なので・・・ヒルダ様だけは先に『ロータス』へ・・!」

突如ヒルダがルドルフに抱き着いて来ると言った。

「私も・・ここに残らせて?もっとルドルフと一緒にいたいから・・」

「ヒルダ様・・!」

ルドルフは嬉しさのあまり、ヒルダを強く抱きしめるのだった―
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