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第4章 33 ヒルダの決意
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翌朝7時―
コンコン
カミラがヒルダの部屋の前にやってきた。
「ヒルダ様、起きてらっしゃいますか?カミラです」
「…」
しかし、ヒルダの部屋からは何の反応も無い。カミラは首を傾げ、考えた。
(ヒルダ様…まだねむっているのかしら?)
「ヒルダ様、入りますね」
カミラはドアノブに手をかけ、カチャリとドアを開けて部屋の中へ足を踏み入れた。
窓際に置かれた大きな天蓋付きベッド。カーテンが閉められているので、ベッドの中の様子が全く分からない。
「ヒルダ様…?」
カミラはそっとベッドに近付くと、レースのカーテン越しにヒルダが枕を抱きかかえ、服を着たままブランケットも掛けずに眠っている様子がうかがえた。
「ヒルダ様、風邪をひいてしまいますよ」
カミラがブランケットをそっと掛けてあげた時、ヒルダがふと目を覚ました。
「あ…カミラ。お早う」
ヒルダの寝起きの顔を見たカミラは驚きの声を上げた。
「まあ…ヒルダ様。泣きながら眠られたのですか?目が真っ赤になっていますわ」
カミラが心配そうに声を掛ける。
「ええ…そうなの。寝ても覚めてもルドルフの事が頭から離れなくて…悲しくて辛くて堪らないの…」
そしてカミラを見てヒルダはあることに気付いた。
「カミラ…その恰好、もしかして…『ロータス』へ戻るの?」
ヒルダが尋ねたのも無理はない。カミラはすっかり旅支度の恰好をしていたからである。
「はい、そうです。私はランドルフ家のシッターをしておりますから、何日もお休みするわけには参りません。昨日の内にランドルフ家にお電話を入れて事情は説明しておりますが、本日中に戻って、明日から仕事に復帰するもりです」
「そう…。え?待って。と言う事は…?」
「はい。フランシスさんもう知っております。ルドルフ様がお亡くなりになった事」
「!」
ヒルダは一瞬肩をビクリと震わせ、恐る恐るカミラに尋ねた。
「それで…フランシスはどんな様子だった?」
「ええ。大変驚いて…一瞬言葉を失っていたようでした。そしてルドルフさんの死を学校に代りに伝えてくれるそうです。ルドルフさんの両親には…とても無理そうにみえたので」
「そうよね…。ねぇカミラ。貴女はこれからどうするの?あのアパートメントの経営者はカミラのお姉さんの御主人でしょう?」
するとカミラは言う。
「私は…常にヒルダ様のお傍にいようと決めています。ヒルダ様が『カウベリー』に残るのであれば、ランドルフ家にシッターを辞めさせて貰う旨を伝えます。後はヒルダ様の学校に退学の話と、アレン先生にはヒルダ様がアルバイトを辞める事も伝えます」
「そう…。カミラ。お兄様は私が『カウベリー』に残る事を望んでいるの。ここにいれば苦労する事は何も無いって言って…」
「ヒルダ様…」
「だけど私はここには住めない。『カウベリー』にはルドルフとの思い出が沢山あるから。勿論『ロータス』にもルドルフとの思い出はあるけれども、ここの比では無いわ…」
ヒルダは涙交じりに言う。
「ヒルダ様。それでは…」
「私は…『ロータス』へ帰るわ。私が暮らす場所はもう、ここでは無いわ…」
「分りました。ではヒルダ様。私はシッターの仕事があるので一足先に帰らなければなりません。あのアパートメントで、ヒルダ様が戻られるのを待っていますね?」
カミラは笑みを浮かべてヒルダを見つめた―。
コンコン
カミラがヒルダの部屋の前にやってきた。
「ヒルダ様、起きてらっしゃいますか?カミラです」
「…」
しかし、ヒルダの部屋からは何の反応も無い。カミラは首を傾げ、考えた。
(ヒルダ様…まだねむっているのかしら?)
「ヒルダ様、入りますね」
カミラはドアノブに手をかけ、カチャリとドアを開けて部屋の中へ足を踏み入れた。
窓際に置かれた大きな天蓋付きベッド。カーテンが閉められているので、ベッドの中の様子が全く分からない。
「ヒルダ様…?」
カミラはそっとベッドに近付くと、レースのカーテン越しにヒルダが枕を抱きかかえ、服を着たままブランケットも掛けずに眠っている様子がうかがえた。
「ヒルダ様、風邪をひいてしまいますよ」
カミラがブランケットをそっと掛けてあげた時、ヒルダがふと目を覚ました。
「あ…カミラ。お早う」
ヒルダの寝起きの顔を見たカミラは驚きの声を上げた。
「まあ…ヒルダ様。泣きながら眠られたのですか?目が真っ赤になっていますわ」
カミラが心配そうに声を掛ける。
「ええ…そうなの。寝ても覚めてもルドルフの事が頭から離れなくて…悲しくて辛くて堪らないの…」
そしてカミラを見てヒルダはあることに気付いた。
「カミラ…その恰好、もしかして…『ロータス』へ戻るの?」
ヒルダが尋ねたのも無理はない。カミラはすっかり旅支度の恰好をしていたからである。
「はい、そうです。私はランドルフ家のシッターをしておりますから、何日もお休みするわけには参りません。昨日の内にランドルフ家にお電話を入れて事情は説明しておりますが、本日中に戻って、明日から仕事に復帰するもりです」
「そう…。え?待って。と言う事は…?」
「はい。フランシスさんもう知っております。ルドルフ様がお亡くなりになった事」
「!」
ヒルダは一瞬肩をビクリと震わせ、恐る恐るカミラに尋ねた。
「それで…フランシスはどんな様子だった?」
「ええ。大変驚いて…一瞬言葉を失っていたようでした。そしてルドルフさんの死を学校に代りに伝えてくれるそうです。ルドルフさんの両親には…とても無理そうにみえたので」
「そうよね…。ねぇカミラ。貴女はこれからどうするの?あのアパートメントの経営者はカミラのお姉さんの御主人でしょう?」
するとカミラは言う。
「私は…常にヒルダ様のお傍にいようと決めています。ヒルダ様が『カウベリー』に残るのであれば、ランドルフ家にシッターを辞めさせて貰う旨を伝えます。後はヒルダ様の学校に退学の話と、アレン先生にはヒルダ様がアルバイトを辞める事も伝えます」
「そう…。カミラ。お兄様は私が『カウベリー』に残る事を望んでいるの。ここにいれば苦労する事は何も無いって言って…」
「ヒルダ様…」
「だけど私はここには住めない。『カウベリー』にはルドルフとの思い出が沢山あるから。勿論『ロータス』にもルドルフとの思い出はあるけれども、ここの比では無いわ…」
ヒルダは涙交じりに言う。
「ヒルダ様。それでは…」
「私は…『ロータス』へ帰るわ。私が暮らす場所はもう、ここでは無いわ…」
「分りました。ではヒルダ様。私はシッターの仕事があるので一足先に帰らなければなりません。あのアパートメントで、ヒルダ様が戻られるのを待っていますね?」
カミラは笑みを浮かべてヒルダを見つめた―。
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