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60 勝手に自滅していく許婚
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「やぁ、テア。やっと俺の言いたいことが分かったんだな?」
ヘンリーは気味が悪い程に、笑みを浮かべながら声を掛けてきた。ヘンリーの言いたいことは分かってはいるが、今の私には彼よりもキャロルの方がずっと大事だし、母も手を切ることを願っている。そして何より私はヘンリーと離れたことで片頭痛の持病がなくなった。だから・・今の幸せ?を手放す気は毛頭なかった。
「ヘンリー。大切な話があるの。どこか賑やかなところへ行きましょう。」
するとヘンリーが不思議そうな顔をする。
「え?普通は大切な話をするなら静かな場所へ行くべきじゃないのか?」
「いえ、賑やかな場所の方がいいわ。そうね・・次の授業迄後20分くらいあるから、園庭で話をしましょう。」
この大学には美しい花壇と噴水が見事な庭があり、学生たちの散策の場として賑わっている園庭があるのだ。そこへ誘う事にした。
「え?!あんな騒がしいところへ行くのか?人が大勢いて目立つぞ?」
プライドが高く、誰よりも人の目を気にするヘンリーにとって、あの園庭は苦手な場所であることは付き合いが長い私にはお見通しだった。しかも自分の評判が悪いことは自覚しているだろう。本来なら人目に付きたくはないはずなのに・・。
「わ・・分かった。いいさ、テアの好きな場所へ付き合ってやる。では行こうか?」
まだ若干上から目線的な態度で私に接してくるヘンリーにうんざりしながらも私は言った。
「そうね。行きましょう。」
そして2人で園庭に出る為に廊下を歩き始めるとヘンリーが声を掛けてきた。
「どうだ?テア。今朝の俺の服は・・・。」
「そうね、素敵ね。(洋服が)」
「そうだろう?テアの為にわざわざ服を新調したのだからな。」
「え?何故私の為に?」
分からない、さっぱり理解できない。
「ああ。そうだ。テア、今日は一緒に馬車で帰ろう。大学を出た先にクレープの屋台が出ているのを今朝発見したんだ。2人で食べて帰ろう。その後は好きなところへ連れて行ってやるぞ?どこがいいんだ?行きたい場所を言ってみろよ。」
私の気持ちなどお構いなしにヘンリーはべらべらと話しかけてくる。けれども・・私はヘンリーをチラリと見ながら思った。あれほど、昨日私が言った言葉は・・彼には届いていなかったのだろうか?結局ヘンリーはどこへ行くにも自分で決めずに私に委ねる誠意のない人間なのだ。
「・・・。」
だから私はあえて返事をしなかった。大体、そんな話は私にとってはどうでもよい事だったし、ヘンリーとは二度と一緒に出掛けるつもりはなかったからだ。
ヘンリーは、おい。聞いているのか?と何度も尋ねてきたが、私はそれには答えずに園庭へとやってきた。
園庭にはおあつらえ向きに男女を問わず、大勢の学生達で賑わっていた。皆思い思いにベンチに座って会話をしたり、園庭を散歩している。中央に置かれた噴水からは水が勢いよく吹き上げ、キラキラした虹を作っている。
「ここでいいわね・・。」
ぽつりとつぶやくと私はヘンリーに向き直った。
「ヘンリー。もう私や・・キャロルには付きまとわないで。・・はっきり言えば迷惑なの。もう許婚の関係も終わりにしましょう。どうせ親同士のお酒の席での口約束だし・・第一、貴方は私の事好きじゃないでしょう?」
「は?テア・・・一体何言ってるんだ?」
ヘンリーはぽかんとした顔で私を見ている。
「何って言葉通りの意味よ?私もキャロルも・・・迷惑してるの。貴方に付きまとわれることが・・それに嬉しいでしょう?私から解放されて・・・。嫌々私に付き合ってくれていたのねと質問した時も貴方は否定すらしなかったじゃない。」
「・・・。」
図星だったのか、ヘンリーは口を閉ざしてしまった。
「要は・・・自分に友達がいないから・・大学でボッチになりたくなくて、それだけの理由で私に近づこうとしているのでしょう?ヘンリー・・・18にもなる貴方にこんな事言いたくはないけど・・・自分の友達位、自分で作りましょうよ。」
すると、途端にヘンリーの顔が真っ赤になる。
「テ・・テアッ!ボッチって言うなぁっ!お、お前・・俺を馬鹿にするのかっ?!」
その声はとても大きく・・・一斉にヘンリーを非難する目が周囲の人たちから向けられた。
「何あれ・・・。」
「見て、ヘンリーよ。またテアを悲しませているのかしら・・。」
「あいつ・・最低だよな・・。」
等々・・・。この園庭にいる半分近い学生は皆私たちの知り合いだったのだ。しかし、興奮しているヘンリーには彼らの反応に気づいていない。
「お、お前・・また俺を馬鹿にするのか?せっかくお前の為に・・おしゃれな格好をしてきたこの俺をっ?!いいか?!俺は・・・許婚の関係は終わらせないからな?!もし許嫁の関係が終わるときは・・俺に恋人が出来た時だけだっ!」
ついにヘンリーは大きな声で最低な事を言った。しかし・・私はその言葉にはもう動じることは無かった。何故なら皆のおかげで目が覚めたから。
「うわっ!聞いた?今のセリフ・・・。」
「ああ、あいつ最低だよな・・。」
「だから友達が出来ないんだよ・・。」
「テアが可哀そうだわ・・。」
皆がこれみよがしにこちらを見てひそひそささやいているのが、風に乗って私たちの耳に届いてきた―。
ヘンリーは気味が悪い程に、笑みを浮かべながら声を掛けてきた。ヘンリーの言いたいことは分かってはいるが、今の私には彼よりもキャロルの方がずっと大事だし、母も手を切ることを願っている。そして何より私はヘンリーと離れたことで片頭痛の持病がなくなった。だから・・今の幸せ?を手放す気は毛頭なかった。
「ヘンリー。大切な話があるの。どこか賑やかなところへ行きましょう。」
するとヘンリーが不思議そうな顔をする。
「え?普通は大切な話をするなら静かな場所へ行くべきじゃないのか?」
「いえ、賑やかな場所の方がいいわ。そうね・・次の授業迄後20分くらいあるから、園庭で話をしましょう。」
この大学には美しい花壇と噴水が見事な庭があり、学生たちの散策の場として賑わっている園庭があるのだ。そこへ誘う事にした。
「え?!あんな騒がしいところへ行くのか?人が大勢いて目立つぞ?」
プライドが高く、誰よりも人の目を気にするヘンリーにとって、あの園庭は苦手な場所であることは付き合いが長い私にはお見通しだった。しかも自分の評判が悪いことは自覚しているだろう。本来なら人目に付きたくはないはずなのに・・。
「わ・・分かった。いいさ、テアの好きな場所へ付き合ってやる。では行こうか?」
まだ若干上から目線的な態度で私に接してくるヘンリーにうんざりしながらも私は言った。
「そうね。行きましょう。」
そして2人で園庭に出る為に廊下を歩き始めるとヘンリーが声を掛けてきた。
「どうだ?テア。今朝の俺の服は・・・。」
「そうね、素敵ね。(洋服が)」
「そうだろう?テアの為にわざわざ服を新調したのだからな。」
「え?何故私の為に?」
分からない、さっぱり理解できない。
「ああ。そうだ。テア、今日は一緒に馬車で帰ろう。大学を出た先にクレープの屋台が出ているのを今朝発見したんだ。2人で食べて帰ろう。その後は好きなところへ連れて行ってやるぞ?どこがいいんだ?行きたい場所を言ってみろよ。」
私の気持ちなどお構いなしにヘンリーはべらべらと話しかけてくる。けれども・・私はヘンリーをチラリと見ながら思った。あれほど、昨日私が言った言葉は・・彼には届いていなかったのだろうか?結局ヘンリーはどこへ行くにも自分で決めずに私に委ねる誠意のない人間なのだ。
「・・・。」
だから私はあえて返事をしなかった。大体、そんな話は私にとってはどうでもよい事だったし、ヘンリーとは二度と一緒に出掛けるつもりはなかったからだ。
ヘンリーは、おい。聞いているのか?と何度も尋ねてきたが、私はそれには答えずに園庭へとやってきた。
園庭にはおあつらえ向きに男女を問わず、大勢の学生達で賑わっていた。皆思い思いにベンチに座って会話をしたり、園庭を散歩している。中央に置かれた噴水からは水が勢いよく吹き上げ、キラキラした虹を作っている。
「ここでいいわね・・。」
ぽつりとつぶやくと私はヘンリーに向き直った。
「ヘンリー。もう私や・・キャロルには付きまとわないで。・・はっきり言えば迷惑なの。もう許婚の関係も終わりにしましょう。どうせ親同士のお酒の席での口約束だし・・第一、貴方は私の事好きじゃないでしょう?」
「は?テア・・・一体何言ってるんだ?」
ヘンリーはぽかんとした顔で私を見ている。
「何って言葉通りの意味よ?私もキャロルも・・・迷惑してるの。貴方に付きまとわれることが・・それに嬉しいでしょう?私から解放されて・・・。嫌々私に付き合ってくれていたのねと質問した時も貴方は否定すらしなかったじゃない。」
「・・・。」
図星だったのか、ヘンリーは口を閉ざしてしまった。
「要は・・・自分に友達がいないから・・大学でボッチになりたくなくて、それだけの理由で私に近づこうとしているのでしょう?ヘンリー・・・18にもなる貴方にこんな事言いたくはないけど・・・自分の友達位、自分で作りましょうよ。」
すると、途端にヘンリーの顔が真っ赤になる。
「テ・・テアッ!ボッチって言うなぁっ!お、お前・・俺を馬鹿にするのかっ?!」
その声はとても大きく・・・一斉にヘンリーを非難する目が周囲の人たちから向けられた。
「何あれ・・・。」
「見て、ヘンリーよ。またテアを悲しませているのかしら・・。」
「あいつ・・最低だよな・・。」
等々・・・。この園庭にいる半分近い学生は皆私たちの知り合いだったのだ。しかし、興奮しているヘンリーには彼らの反応に気づいていない。
「お、お前・・また俺を馬鹿にするのか?せっかくお前の為に・・おしゃれな格好をしてきたこの俺をっ?!いいか?!俺は・・・許婚の関係は終わらせないからな?!もし許嫁の関係が終わるときは・・俺に恋人が出来た時だけだっ!」
ついにヘンリーは大きな声で最低な事を言った。しかし・・私はその言葉にはもう動じることは無かった。何故なら皆のおかげで目が覚めたから。
「うわっ!聞いた?今のセリフ・・・。」
「ああ、あいつ最低だよな・・。」
「だから友達が出来ないんだよ・・。」
「テアが可哀そうだわ・・。」
皆がこれみよがしにこちらを見てひそひそささやいているのが、風に乗って私たちの耳に届いてきた―。
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