孤独な公女~私は死んだことにしてください

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
146 / 272

6-23 門前の訪問者 1

――夕暮れの王都。

 王宮騎士団施設の石畳の門前に、一人の青年が立っていた。

彼はレオン。
旅装姿で少し薄汚れた外套をまとい、門の向こうに広がる荘厳な建物を見上げていた。

「……とうとう、僕はここまで来てしまった……」

ポツリと呟くレオン。

ここに自分が探している銀髪の女性がいるかもしれない。
いや、いるはずだ。そう信じてミレア王国までやって来たのだから。

「サフィニア様……」

思わずその名を口にしたとき、レオンの姿を目撃した当直の騎士が近づいてきた。

「ここで何をしているのです? こちらはミレア王国直属の王宮騎士団施設ですよ。御用件は何でしょう?」

レオンは少し緊張した面持ちで、以前から考えていた嘘の話をする。

「も、申し訳ございません。僕は旅の者でレオンと申します。銀髪の女性を探しています。以前旅の途中で助けていただいた方で……南に向かうとだけ聞いていました。そして、こちらにその女性がいるかもしれないと噂で聞いて訪ねた次第です」

銀髪の女性と言う言葉に、騎士は眉をひそめた。

「……その女性のお名前は?」

「名前……は分かりません。ただ、とても優しい方でした」

うつむき加減に答えるレオン。
騎士はしばらく彼を見つめていたが……。

「こちらで少々お待ちください。隊長に確認を取ってまいります」

そう言って、騎士は建物の奥へと向かっていった――


****


 夕陽が窓辺を赤く染める頃、アドニスは執務机に向かって書類に目を通していた。

――コンコン

扉がノックされ、外側から声をかけられた。

『アドニス様、少々よろしいでしょうか』

「入ってくれ」

返事をすると扉が開き、先ほどの騎士が姿を現す。

「アドニス様。不審な人物が門前に現れました。まだ青年ですが、少し薄汚れた身なりをしています。その……どうやらソフィアさんを訪ねてきたようなのですが」

アドニスの手が止まり、目が険しくなる。

「何? ソフィアさんに?」

「ええ。銀髪の女性を探していると言っています。見たところ、おとなしそうな人物で悪い男には見えませんでした。レオンと名乗っていましたよ」

「レオン……」

(この間はセザールがソフィアさんを訪ねてきた。そして今、二人は一緒に出掛けている。セザールは妻を亡くしてから再婚の話があっても、首を縦に振らなかったのに……そして今度はレオンと名乗る男が訪ねてきただと?)

アドニスは難しい顔になり、腕組みした。

(ソフィアさんがここへ来て、まだ十日足らず……それなのに、セザールだけでなく、また別の人物が訪ねてくるとは……)

メイドとは思えない気品ある立ち居振る舞い。
他の使用人の話によると読み書きも出来るし、計算もできると聞いている。
そして自分の身の上を決して語らないその姿勢はまるで何かを隠しているように思えてならない。

「……」

考え込んでいると、騎士が遠慮がちに声をかけてきた。

「……あの~、アドニス様? どうしましょう?」

アドニスは立ち上がりると、制服の襟元を整えた。

「分かった。その人物に会いに行こう。君も一緒に来てくれ」

「はっ」


こうしてアドニスは騎士を伴って、レオンの元へ向かった――
感想 457

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

さようなら、私の初恋

しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」 物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。 だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。 「あんな女、落とすまでのゲームだよ」

嘘の誓いは、あなたの隣で

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢ミッシェルは、公爵カルバンと穏やかに愛を育んでいた。 けれど聖女アリアの来訪をきっかけに、彼の心が揺らぎ始める。 噂、沈黙、そして冷たい背中。 そんな折、父の命で見合いをさせられた皇太子ルシアンは、 一目で彼女に惹かれ、静かに手を差し伸べる。 ――愛を信じたのは、誰だったのか。 カルバンが本当の想いに気づいた時には、 もうミッシェルは別の光のもとにいた。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

あなたの隣に私は必要ですか?

らんか
恋愛
政略結婚にて、3年前より婚約し、学園卒業と共に嫁ぐ予定であったアリーシア。 しかし、諸事情により結婚式は延期され、次の結婚式の日取りさえなかなか決められない状況であった。 そんなアリーシアの婚約者ルートヴィッヒは、護衛対象である第三王女ミーアの傍を片時も離れようとしない。 月1回の婚約者同士のお茶会もすぐに切り上げてしまい、夜会へのエスコートすらしてもらった事がない。 そんな状況で、アリーシアは思う。 私はあなたの隣に必要でしょうか? あなたが求めているのは別の人ではないのでしょうかと。 * 短編です。4/4に完結します。 ご感想欄は都合により、閉じさせて頂きます。