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7-14 騎士団の騒ぎ 1
――15時。
王宮騎士団施設の詰め所に、休憩を取る使用人たちが次々と戻ってきていた。
温かい紅茶が配られ、皆が一息つく中。マーサはふと周囲を見渡した。
「……あら? ソフィアちゃんは?」
メイドの1人が答える。
「庭掃除してたけど、まだ戻ってないみたいですね」
その言葉に、マーサの胸に小さな不安が宿る。
「私、ちょっと見てくるわ」
マーサは立ち上がると庭へと向かった――
冬の陽射しが斜めに差し込む庭に、ソフィアの姿は無かった。
落ち葉の上には箒と塵取りが落ちている。
「変ね……いつものソフィアちゃんなら必ず片付けるのに……」
辺りを見回しても、姿は見えない。名前を呼んでも返事はなく、増々マーサは不安な気持ちが込み上げてくる。
「皆を呼んでこなくちゃ」
急いで詰め所へ戻ると、マーサは使用人たちに声をかけた。
「ソフィアちゃんが見当たらないの! 皆で探してくれない!?」
使用人たちは驚きながらも、手分けして施設内を探し始めた。
だが、どこにも見つからない。
「厨房にはいません!」
「洗濯場にも!」
「礼拝室も空っぽです!」
彼等の報告にマーサは唇を噛んだ。
「……私たちだけでは限界があるわ。騎士団の人たちにもお願いしましょう。行ってくるわ!」
マーサは小走りで訓練馬へ向かうと、休憩中の騎士たちの元へ駆け寄った。
彼らはベンチに座って談笑していたが、青ざめたマーサの顔を見てすぐに立ち上がる。
「マーサさん、どうかしましたか?」
副隊長の青年が尋ねた。
「大変です! ソフィアちゃんがいなくなってしまいました! お願いです! どうか一緒に捜してください!」
「えっ……?」
他の騎士たちも顔を見合わせた。
「掃除用具を取りに行っていたのは見たぞ」
「庭で掃除していたのを見たな」
「俺が見たときはいなかったぞ。かき集められた落ち葉の上に箒が乗ってたな」
騎士たちの言葉にマーサの顔色は増々青ざめ、膝から崩れ落ちる。
「そ、そんな……」
「マーサさん!」
「しっかり!」
マーサは騎士に何とか支えられながら立ちあがった。そして彼等の顔も増々真剣みを帯びてくる。
「それは……確かにただ事じゃないな」
「捜索に加わろう! 施設の外も調べるぞ!」
「俺はアドニス様に報告してくる!」
副隊長は王宮にあるアドニスの書斎へ走った――
****
その頃、アドニスは王宮にある書斎で仕事をしていた。
――ガチャッ!
そこへ突然ノックも無しに勢いよく扉が開かれ、副隊長が現れた。
「アドニス様!」
「どうした?」
顔を上げるアドニス。
「ソフィアさんが行方不明になりました! 施設内にも庭にも……どこにもいません!」
「何!? それは……いつからだ?」
アドニスの目が鋭く光る。
「15時の休憩時には、すでに姿がありませんでした。庭には掃除道具だけが残されていたそうです」
ガタッ!
椅子を鳴らして立ち上がり、アドニスは机の上の書類を乱暴に押しのけた。
「すぐに向かう。騎士団の者たちにも、森の周辺まで捜索範囲を広げるよう伝えろ!」
「はっ!」
壁にかけておいた外套を羽織り、駆け出すアドニス。
その後を副隊長が続く。
空はすでに橙色に染まり、太陽は沈みかけていた――
王宮騎士団施設の詰め所に、休憩を取る使用人たちが次々と戻ってきていた。
温かい紅茶が配られ、皆が一息つく中。マーサはふと周囲を見渡した。
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メイドの1人が答える。
「庭掃除してたけど、まだ戻ってないみたいですね」
その言葉に、マーサの胸に小さな不安が宿る。
「私、ちょっと見てくるわ」
マーサは立ち上がると庭へと向かった――
冬の陽射しが斜めに差し込む庭に、ソフィアの姿は無かった。
落ち葉の上には箒と塵取りが落ちている。
「変ね……いつものソフィアちゃんなら必ず片付けるのに……」
辺りを見回しても、姿は見えない。名前を呼んでも返事はなく、増々マーサは不安な気持ちが込み上げてくる。
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使用人たちは驚きながらも、手分けして施設内を探し始めた。
だが、どこにも見つからない。
「厨房にはいません!」
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「礼拝室も空っぽです!」
彼等の報告にマーサは唇を噛んだ。
「……私たちだけでは限界があるわ。騎士団の人たちにもお願いしましょう。行ってくるわ!」
マーサは小走りで訓練馬へ向かうと、休憩中の騎士たちの元へ駆け寄った。
彼らはベンチに座って談笑していたが、青ざめたマーサの顔を見てすぐに立ち上がる。
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「えっ……?」
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「俺が見たときはいなかったぞ。かき集められた落ち葉の上に箒が乗ってたな」
騎士たちの言葉にマーサの顔色は増々青ざめ、膝から崩れ落ちる。
「そ、そんな……」
「マーサさん!」
「しっかり!」
マーサは騎士に何とか支えられながら立ちあがった。そして彼等の顔も増々真剣みを帯びてくる。
「それは……確かにただ事じゃないな」
「捜索に加わろう! 施設の外も調べるぞ!」
「俺はアドニス様に報告してくる!」
副隊長は王宮にあるアドニスの書斎へ走った――
****
その頃、アドニスは王宮にある書斎で仕事をしていた。
――ガチャッ!
そこへ突然ノックも無しに勢いよく扉が開かれ、副隊長が現れた。
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「ソフィアさんが行方不明になりました! 施設内にも庭にも……どこにもいません!」
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ガタッ!
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「すぐに向かう。騎士団の者たちにも、森の周辺まで捜索範囲を広げるよう伝えろ!」
「はっ!」
壁にかけておいた外套を羽織り、駆け出すアドニス。
その後を副隊長が続く。
空はすでに橙色に染まり、太陽は沈みかけていた――
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