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7-18 尋問
アドニスたちが城に戻ってくると、城内は騒然となった。
使用人たちが駆け寄り、執事がアドニスに質問する。
「殿下、一体どうなさったのです? そのメイドは?」
「彼女は悪意ある者によって、落とし穴に落とされてしまった。身体が冷え切って意識がない。すぐに客室の用意と彼女を世話するメイド、それに主治医を呼んでくれ」
「! かしこまりました。どうぞこちらへいらしてください」
執事の案内でアドニスは客室へ向かった――
サフィニアを抱きかかえたまま客室へ入ると、既に数人のメイド達と主治医が待機していた。
客室は暖炉に火が灯され、室内は温められている。
「殿下、こちらへどうぞ!」
メイドの1人がアドニスに声をかけた。
そこには、すでに湯を張ったバスタブとタオルが用意されている。
アドニスは意識のないサフィニアをソファにそっと降ろすと、主治医が彼女の手首に触れて脈拍を測り……険しい表情になる。
「……これは低体温症になりかかっていますね。すぐに身体を奇麗にして温めてあげないとなりません」
「そうか……」
アドニスは床に膝まずくと、サフィニアの冷たく冷え切った小さな手をそっと握りしめた。
「ソフィアさん……早く目を開けてくれ。待ってるから……」
サフィニアの顔は青白く、唇は血の気を失っていた。
少しの間、アドニスはサフィニアを見つめ……やがて立ち上がった。
「……彼女のことを頼む」
それだけ告げるとアドニスは部屋を出た。
王宮にある、騎士団の詰め所へ向かうために――
****
城の一角に王宮騎士団の詰め所があった。
壁から床に至るまで全て木製の室内には大きな机が置かれ、副隊長のグレイが座っている。
その正面には、青ざめた顔で小刻みに震える二人のフットマンが座らされていた。
そして彼らを取り囲むように待機している十数人の騎士たち。
そこへ扉が開き、アドニスが現れた。
「アドニス様!」
グレイは立ち上がり、騎士たちは敬礼した。
「どうだ? 白状したか?」
扉を閉めると、アドニスは震えている2人のフットマンに視線を移す。
「いいえ、尋問は始めておりますが……まだ口を割りません」
「そうか……なら俺が変わる」
グレイが目を見開いた。
「分かりました。ではお願いいたします」
グレイが席を譲り、アドニスは着席するとフットマンたちを睨みつけた。
「もう一度お前たちに聞く。なぜ森の……しかもあんな奥深い場所に、落とし穴を掘った?」
フットマンたちは顔を伏せたまま黙っている。
すると……。
「答えろ!」
アドニスの鋭い声が詰め所に響いた。
普段温厚な姿のアドニスしか見たことのないフットマンたちは、怯えながら交互に語りだした。
「ど、動物を罠に……」
「動物? どんな動物だ?」
「しょ、小動物です。料理で使おうと……」
「小動物なら、あんなに深く穴を掘る必要があるか?」
「「……」」
この質問に押し黙る2人。
アドニスは鋭い眼差しを向けた。
「あの場所は、誰も近づかないと分かっていたはずだ。……つまり、お前たちは誰にも見つからないように、穴を掘ったということだな? あんなに深い穴……下手をすれば落ちたときに死んでいたかもしれない。そうなれば、お前たちは人殺しだ」
するとフットマンたちの顔が青ざめる。
「そ、そんな……人殺しなんて!」
「私たちは本当に何も知らされていないんです!」
「た、ただ何も聞かず、深く穴を掘るように命じられただけです……!」
アドニスの目が光った。
「命じられた? ……誰にだ」
二人は顔を見合わせ、口を閉ざす。
「答えろ!」
ダンッ!
アドニスは机を拳で叩いた。
その音に、フットマンたちの両肩がビクリと跳ねる。
「バネッサ様に……い、言われて……」
とうとう観念した二人。
賭博をしていた弱みをバネッサに握られ、脅されて穴を掘ったことを白状した。
「バネッサ?」
アドニスは眉を顰めると、傍らにいたグレイが耳打ちする。
「エリーゼ様の侍女です。伯爵令嬢でもあります」
「侍女……」
アドニスの脳裏に、どこか冷たい瞳の若い女性の姿が思い浮かぶ。
「……彼女にいきなり尋問するのは、さすがにまずいと思います。何しろ宰相の御息女、エリーゼ様の侍女ですから」
アドニスはしばし考え込み、フットマンたちに視線を移した。
「お前たちには罰を与える。命令されたとはいえ、彼女の命を危険に晒した責任は決して許されない」
「「……」」
二人は顔を強張らせる。
「お前たちは追放だ! 明日の朝までに荷物をまとめて、国を出ていくがいい! 二度と戻ってくることは許さない!」
追放という言葉に、彼らの顔は色を失う。
言葉を発することも出来ずに俯く彼らをアドニスは冷たい瞳で一瞥すると、騎士たちに命じた。
「この2人を連行しろ」
「はっ!」
「承知いたしました!」
「ほら! 立て!」
騎士たちによって連れ出されていく2人は、もう抵抗する気力すら無くしていた。
おとなしく詰所から連れ出されていった。
――バタン
扉が閉ざされ、室内にはアドニスとグレイだけが残った。
「アドニス様……この後、どうなさるおつもりですか?」
「……」
返事をすることも無くアドニスは立ち上がると、窓の外を見つめた。
その視線の先には……エリーゼの部屋があった――
使用人たちが駆け寄り、執事がアドニスに質問する。
「殿下、一体どうなさったのです? そのメイドは?」
「彼女は悪意ある者によって、落とし穴に落とされてしまった。身体が冷え切って意識がない。すぐに客室の用意と彼女を世話するメイド、それに主治医を呼んでくれ」
「! かしこまりました。どうぞこちらへいらしてください」
執事の案内でアドニスは客室へ向かった――
サフィニアを抱きかかえたまま客室へ入ると、既に数人のメイド達と主治医が待機していた。
客室は暖炉に火が灯され、室内は温められている。
「殿下、こちらへどうぞ!」
メイドの1人がアドニスに声をかけた。
そこには、すでに湯を張ったバスタブとタオルが用意されている。
アドニスは意識のないサフィニアをソファにそっと降ろすと、主治医が彼女の手首に触れて脈拍を測り……険しい表情になる。
「……これは低体温症になりかかっていますね。すぐに身体を奇麗にして温めてあげないとなりません」
「そうか……」
アドニスは床に膝まずくと、サフィニアの冷たく冷え切った小さな手をそっと握りしめた。
「ソフィアさん……早く目を開けてくれ。待ってるから……」
サフィニアの顔は青白く、唇は血の気を失っていた。
少しの間、アドニスはサフィニアを見つめ……やがて立ち上がった。
「……彼女のことを頼む」
それだけ告げるとアドニスは部屋を出た。
王宮にある、騎士団の詰め所へ向かうために――
****
城の一角に王宮騎士団の詰め所があった。
壁から床に至るまで全て木製の室内には大きな机が置かれ、副隊長のグレイが座っている。
その正面には、青ざめた顔で小刻みに震える二人のフットマンが座らされていた。
そして彼らを取り囲むように待機している十数人の騎士たち。
そこへ扉が開き、アドニスが現れた。
「アドニス様!」
グレイは立ち上がり、騎士たちは敬礼した。
「どうだ? 白状したか?」
扉を閉めると、アドニスは震えている2人のフットマンに視線を移す。
「いいえ、尋問は始めておりますが……まだ口を割りません」
「そうか……なら俺が変わる」
グレイが目を見開いた。
「分かりました。ではお願いいたします」
グレイが席を譲り、アドニスは着席するとフットマンたちを睨みつけた。
「もう一度お前たちに聞く。なぜ森の……しかもあんな奥深い場所に、落とし穴を掘った?」
フットマンたちは顔を伏せたまま黙っている。
すると……。
「答えろ!」
アドニスの鋭い声が詰め所に響いた。
普段温厚な姿のアドニスしか見たことのないフットマンたちは、怯えながら交互に語りだした。
「ど、動物を罠に……」
「動物? どんな動物だ?」
「しょ、小動物です。料理で使おうと……」
「小動物なら、あんなに深く穴を掘る必要があるか?」
「「……」」
この質問に押し黙る2人。
アドニスは鋭い眼差しを向けた。
「あの場所は、誰も近づかないと分かっていたはずだ。……つまり、お前たちは誰にも見つからないように、穴を掘ったということだな? あんなに深い穴……下手をすれば落ちたときに死んでいたかもしれない。そうなれば、お前たちは人殺しだ」
するとフットマンたちの顔が青ざめる。
「そ、そんな……人殺しなんて!」
「私たちは本当に何も知らされていないんです!」
「た、ただ何も聞かず、深く穴を掘るように命じられただけです……!」
アドニスの目が光った。
「命じられた? ……誰にだ」
二人は顔を見合わせ、口を閉ざす。
「答えろ!」
ダンッ!
アドニスは机を拳で叩いた。
その音に、フットマンたちの両肩がビクリと跳ねる。
「バネッサ様に……い、言われて……」
とうとう観念した二人。
賭博をしていた弱みをバネッサに握られ、脅されて穴を掘ったことを白状した。
「バネッサ?」
アドニスは眉を顰めると、傍らにいたグレイが耳打ちする。
「エリーゼ様の侍女です。伯爵令嬢でもあります」
「侍女……」
アドニスの脳裏に、どこか冷たい瞳の若い女性の姿が思い浮かぶ。
「……彼女にいきなり尋問するのは、さすがにまずいと思います。何しろ宰相の御息女、エリーゼ様の侍女ですから」
アドニスはしばし考え込み、フットマンたちに視線を移した。
「お前たちには罰を与える。命令されたとはいえ、彼女の命を危険に晒した責任は決して許されない」
「「……」」
二人は顔を強張らせる。
「お前たちは追放だ! 明日の朝までに荷物をまとめて、国を出ていくがいい! 二度と戻ってくることは許さない!」
追放という言葉に、彼らの顔は色を失う。
言葉を発することも出来ずに俯く彼らをアドニスは冷たい瞳で一瞥すると、騎士たちに命じた。
「この2人を連行しろ」
「はっ!」
「承知いたしました!」
「ほら! 立て!」
騎士たちによって連れ出されていく2人は、もう抵抗する気力すら無くしていた。
おとなしく詰所から連れ出されていった。
――バタン
扉が閉ざされ、室内にはアドニスとグレイだけが残った。
「アドニス様……この後、どうなさるおつもりですか?」
「……」
返事をすることも無くアドニスは立ち上がると、窓の外を見つめた。
その視線の先には……エリーゼの部屋があった――
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