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7-20 沈黙と涙
思ってもいないサフィニアの返事に、アドニスは動揺し……再度尋ねた。
「ソフィアさん、本当のことを言ってくれないか? 本当は意図的に誰かによって落とし穴に落とされたんじゃないのかい?」
その瞳は真剣だったが……サフィニアは首を振る。
「いいえ、本当のことです。 私は自分で穴に落ちてしまったのです」
罪悪感を抱きつつ、サフィニアは自分に言い聞かせる。
(大丈夫、嘘はついていないわ。確かに落とし穴にはバネッサ様に誘導されたかもしれない。でも、足を踏み外して落ちたのは私自身……その事実に間違いないもの)
「……ソフィアさん……だけど……」
尚も言葉を紡ごうとするアドニスを、サフィニアは遮るように言った。
「あの、アドニス様、お願いがあるのですが……よろしいでしょうか?」
「いいよ、ソフィアさんのお願いならどんなことでも聞くよ。言ってごらん?」
お願いと聞いて、笑顔で身を乗り出すアドニス。
「私を……自分の部屋に戻していただけないでしょうか?」
「え? な、何故だい? まだ体調だって完全じゃないし、それに何より足を怪我しているじゃないか。ここなら、いつでも治療を受けられるんだよ?」
思ってもいない願いに、アドニスの顔が青ざめる。
「ですが私は一介のメイドに過ぎません。このような待遇を受けるには、あまりに分不相応ですから」
半分は事実だった。だが本当の理由は、ここにエリーゼとバネッサがいるからだった。
「だけど……」
「お願いいたします」
サフィニアの目は真剣だった。
「……わ、分かった。そこまで言うなら、王宮騎士団に戻してあげよう。使用人たちに話してくるから……それまでここで待っていてくれるかい?」
「はい、ありがとうございます」
「お礼なんていいよ。ソフィアさんは大切な存在……」
「え?」
サフィニアはアドニスを見つめると、彼は慌てた。
「い、いや。王宮騎士団施設で働いてくれる大切なメイドだからね。それじゃ……また来るよ」
アドニスは気落ちした様子で部屋を出ていき、パタンと扉が閉ざされた。
「ごめんなさい、アドニス様……」
扉が閉ざされサフィニアは1人きりになると、小さな声呟くのだった――
****
一方その頃……。
カツ
カツ
カツ
カツ……!
エリーゼはヒールをならしながら、急ぎ足で父の執務室へ向かっていた。
「こ、ここだわ……」
息を切らせながら目標の部屋の前に立つと、ノックもせずに勢いよく扉を開け放つ。
――バンッ!
「お父様!」
仕事をしていた宰相――アルマンは驚いて顔を上げた。
「誰かと思えば……エリーゼではないか。珍しいこともあるものだ。お前が私に会いに来るとはな」
娘を溺愛してやまないアルマンは笑顔を見せる。すると、見る見るうちにエリーゼの目に涙がたまる。
「お、お父様……」
「どうしたのだ? エリーゼ」
ただことでは無い娘のようすにアルマンは立ち上がり、歩み寄った。
すると……。
「お父様! 助けて!」
エリーゼはアルマンに駆け寄り、泣きついた。
「エリーゼ!? 何故泣いているのだい?」
アルマンは昨夜の騒ぎを知らない。彼が城を後にした後の出来事だったからだ。
「お父様……どうしたらいいの……!」
「落ち着きなさい、エリーゼ。何があったのか話してごらん」
娘の髪を撫でながら、優しい声で促す。
「は、はい。実は……」
エリーゼは顔を上げ、目に涙を浮かべながら語った。
銀髪のメイドにアドニスが夢中なこと。
そこで嫉妬のあまり「痛い目に遭わせなければ、気が済まない」とバネッサの前で口にしてしまったこと。
すると「それなら……いっそ、いなくなってもらいましょうか?」とバネッサが提案し、落とし穴にメイドを落とす計画を立てたことを白状した。
「で、でも……こんな大事になるとは思わなかったのよ。すぐにメイドを落とし穴から助けるものだとばかり思っていたのに……バネッサは死なせてもいいと思っていたみたいで、夜までメイドを放置していたのよ! そ、それでどこで知ったのか分からないけど、アドニス様がそのメイドを助けて城に連れ帰って来たの……」
ぐずぐず泣きながら語るエリーゼの話を顔をしかめながら聞いているアルマン。
(バネッサめ……以前から過激な行動を取ってはいたが、最近はおとなしかったから少々油断していた。まさかそんなことをしでかすとは……)
「このままだと私が首謀者になってしまいます……私、そんなつもりで言ったわけじゃないのに……バネッサが勝手にしたことなのに……お父様、どうすればいいの!?」
ついに泣き崩れるエリーゼ。
「大丈夫、任せなさい。まずはバネッサを呼び出して、私から話をつけよう。アドニス様にも解決するまではお前と接触させない。だから安心しなさい」
アルマンは泣きじゃくる娘を抱きしめ、慰めるのだった――
「ソフィアさん、本当のことを言ってくれないか? 本当は意図的に誰かによって落とし穴に落とされたんじゃないのかい?」
その瞳は真剣だったが……サフィニアは首を振る。
「いいえ、本当のことです。 私は自分で穴に落ちてしまったのです」
罪悪感を抱きつつ、サフィニアは自分に言い聞かせる。
(大丈夫、嘘はついていないわ。確かに落とし穴にはバネッサ様に誘導されたかもしれない。でも、足を踏み外して落ちたのは私自身……その事実に間違いないもの)
「……ソフィアさん……だけど……」
尚も言葉を紡ごうとするアドニスを、サフィニアは遮るように言った。
「あの、アドニス様、お願いがあるのですが……よろしいでしょうか?」
「いいよ、ソフィアさんのお願いならどんなことでも聞くよ。言ってごらん?」
お願いと聞いて、笑顔で身を乗り出すアドニス。
「私を……自分の部屋に戻していただけないでしょうか?」
「え? な、何故だい? まだ体調だって完全じゃないし、それに何より足を怪我しているじゃないか。ここなら、いつでも治療を受けられるんだよ?」
思ってもいない願いに、アドニスの顔が青ざめる。
「ですが私は一介のメイドに過ぎません。このような待遇を受けるには、あまりに分不相応ですから」
半分は事実だった。だが本当の理由は、ここにエリーゼとバネッサがいるからだった。
「だけど……」
「お願いいたします」
サフィニアの目は真剣だった。
「……わ、分かった。そこまで言うなら、王宮騎士団に戻してあげよう。使用人たちに話してくるから……それまでここで待っていてくれるかい?」
「はい、ありがとうございます」
「お礼なんていいよ。ソフィアさんは大切な存在……」
「え?」
サフィニアはアドニスを見つめると、彼は慌てた。
「い、いや。王宮騎士団施設で働いてくれる大切なメイドだからね。それじゃ……また来るよ」
アドニスは気落ちした様子で部屋を出ていき、パタンと扉が閉ざされた。
「ごめんなさい、アドニス様……」
扉が閉ざされサフィニアは1人きりになると、小さな声呟くのだった――
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一方その頃……。
カツ
カツ
カツ
カツ……!
エリーゼはヒールをならしながら、急ぎ足で父の執務室へ向かっていた。
「こ、ここだわ……」
息を切らせながら目標の部屋の前に立つと、ノックもせずに勢いよく扉を開け放つ。
――バンッ!
「お父様!」
仕事をしていた宰相――アルマンは驚いて顔を上げた。
「誰かと思えば……エリーゼではないか。珍しいこともあるものだ。お前が私に会いに来るとはな」
娘を溺愛してやまないアルマンは笑顔を見せる。すると、見る見るうちにエリーゼの目に涙がたまる。
「お、お父様……」
「どうしたのだ? エリーゼ」
ただことでは無い娘のようすにアルマンは立ち上がり、歩み寄った。
すると……。
「お父様! 助けて!」
エリーゼはアルマンに駆け寄り、泣きついた。
「エリーゼ!? 何故泣いているのだい?」
アルマンは昨夜の騒ぎを知らない。彼が城を後にした後の出来事だったからだ。
「お父様……どうしたらいいの……!」
「落ち着きなさい、エリーゼ。何があったのか話してごらん」
娘の髪を撫でながら、優しい声で促す。
「は、はい。実は……」
エリーゼは顔を上げ、目に涙を浮かべながら語った。
銀髪のメイドにアドニスが夢中なこと。
そこで嫉妬のあまり「痛い目に遭わせなければ、気が済まない」とバネッサの前で口にしてしまったこと。
すると「それなら……いっそ、いなくなってもらいましょうか?」とバネッサが提案し、落とし穴にメイドを落とす計画を立てたことを白状した。
「で、でも……こんな大事になるとは思わなかったのよ。すぐにメイドを落とし穴から助けるものだとばかり思っていたのに……バネッサは死なせてもいいと思っていたみたいで、夜までメイドを放置していたのよ! そ、それでどこで知ったのか分からないけど、アドニス様がそのメイドを助けて城に連れ帰って来たの……」
ぐずぐず泣きながら語るエリーゼの話を顔をしかめながら聞いているアルマン。
(バネッサめ……以前から過激な行動を取ってはいたが、最近はおとなしかったから少々油断していた。まさかそんなことをしでかすとは……)
「このままだと私が首謀者になってしまいます……私、そんなつもりで言ったわけじゃないのに……バネッサが勝手にしたことなのに……お父様、どうすればいいの!?」
ついに泣き崩れるエリーゼ。
「大丈夫、任せなさい。まずはバネッサを呼び出して、私から話をつけよう。アドニス様にも解決するまではお前と接触させない。だから安心しなさい」
アルマンは泣きじゃくる娘を抱きしめ、慰めるのだった――
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