222 / 272
9-20 ジルベール16
「僕はもう二度と
父上の言いなりにはなりません。
これ以上サフィニア様を
侮辱するなら僕にも考えがあります」
その声は
普段のジルベールからは
考えつかないほど冷淡だった。
「……何だと?
私に歯向かうというのか!
生意気な奴め!」
グレゴリーの怒声が飛んでくるが、
ジルベールはびくともしない。
代わりに冷たい笑みを浮かべた。
「いいのですか?
そんな強気な態度を取られても」
「何? どういうことだ?」
「今までのこと……全て
エストマン公爵に報告します」
「何だと?」
グレゴリーの眉がピクリと動く。
「サフィニア様のことを
卑しいメイドの血を引く公女と呼んだことです。
ウッド家に迎えるわけにはいかないので、
わざと冷たい態度をとって、
サフィニア様から婚約破棄を
言わせるように仕向けろと
言っていたことをです。
そうですね……」
そこでジルベールは一度言葉を切る。
「ついでに
僕が暗示をかけられていたことも
公爵様に報告いたしましょうか?」
「何!?」
グレゴリーの顔色が変わった。
マルグリットは驚いた様子で
ジルベールを見つめている。
「父上は周囲の貴族から評
判が良かったですよね?
だからサフィニア様と僕との縁談も
エストマン公爵から話を
持ち掛けられたのでしょう?
でも今の話を公爵様が知ったら
どう思うでしょう?
ついでに他の貴族たちにも
この話をしましょうか。
あぁ……でも……」
ジルベールは
冷たい目で父親を見つめる。
「エストマン公爵に今の話をすれば……
おのずと他の貴族たちにも
父上の悪い噂が広がるでしょうねぇ」
「ジルベール……お前……
父親を脅迫するつもりか!?」
するとジルベールは声を張り上げた。
「自分の子供を暗示に掛けてまで
言うことを聞かせようとする
父上の方がどうかしています!
それだけじゃない……
馬車事故を起こしたのも
父上の仕業ですよね!?」
「なっ……!」
グレゴリーの顔から血の気が失せる。
その反応だけでもう十分だった。
「……やはり、そうだったのね」
そこへ、今まで口を閉ざしていた
マルグリットがポツリと言った。
その顔は青ざめている。
ジルベールは続けた。
「あんな人混みの激しい……
ましてあの日はお祭りでした。
そんなところに暴走馬車を走らせるなんて
これは、もはや犯罪です!
もし、あの事故で誰か死んでいたなら
どうなさるつもりだったのですか!?」
「う、うるさい!
こっちだって馬だけを放そうと思っていたのだ!
そ、それが馬車から切り離す前に……
勝手に馬が走り出して……」
最後はしりすぼみになっていく。
「今の件も公爵様に報告させていただきます。
ついでに警察にも」
「何だと!? ジルベール!
お前は……このウッド家がどうなってもよいのか!?」
「ええ! かまいません!」
するとマルグリットが声を上げた。
「こんなに貧しいのに、
見栄ばかり張って貴族社会に
しがみつくくらいなら、
いっそ爵位なんかいりません!」
ジルベールはグレゴリーを見据えた。
「父上。
あなたが守りたいウッド家は、
父上自身の行いで、もう崩れかけているんですよ」
「……」
グレゴリーの身体が小刻みに震える。
「僕はもう、父上の道具じゃない。
兄上たちだって同じです。
これ以上サフィニア様を侮辱するなら……」
ジルベールの瞳が鋭く光る。
「僕は、あなたを当主として認めません。
全てを公爵様に話します。
勿論、警察にも」
「ジルベール……お前という奴は……!」
憎しみを込めた目で
グレゴリーは睨みつける。
「父上……あなたは犯罪者です。
当主の資格など一切ありません」
「は、犯罪……者……?」
ついにグレゴリーは項垂れるのだった――
※ 次話からサフィニアの話に戻ります
父上の言いなりにはなりません。
これ以上サフィニア様を
侮辱するなら僕にも考えがあります」
その声は
普段のジルベールからは
考えつかないほど冷淡だった。
「……何だと?
私に歯向かうというのか!
生意気な奴め!」
グレゴリーの怒声が飛んでくるが、
ジルベールはびくともしない。
代わりに冷たい笑みを浮かべた。
「いいのですか?
そんな強気な態度を取られても」
「何? どういうことだ?」
「今までのこと……全て
エストマン公爵に報告します」
「何だと?」
グレゴリーの眉がピクリと動く。
「サフィニア様のことを
卑しいメイドの血を引く公女と呼んだことです。
ウッド家に迎えるわけにはいかないので、
わざと冷たい態度をとって、
サフィニア様から婚約破棄を
言わせるように仕向けろと
言っていたことをです。
そうですね……」
そこでジルベールは一度言葉を切る。
「ついでに
僕が暗示をかけられていたことも
公爵様に報告いたしましょうか?」
「何!?」
グレゴリーの顔色が変わった。
マルグリットは驚いた様子で
ジルベールを見つめている。
「父上は周囲の貴族から評
判が良かったですよね?
だからサフィニア様と僕との縁談も
エストマン公爵から話を
持ち掛けられたのでしょう?
でも今の話を公爵様が知ったら
どう思うでしょう?
ついでに他の貴族たちにも
この話をしましょうか。
あぁ……でも……」
ジルベールは
冷たい目で父親を見つめる。
「エストマン公爵に今の話をすれば……
おのずと他の貴族たちにも
父上の悪い噂が広がるでしょうねぇ」
「ジルベール……お前……
父親を脅迫するつもりか!?」
するとジルベールは声を張り上げた。
「自分の子供を暗示に掛けてまで
言うことを聞かせようとする
父上の方がどうかしています!
それだけじゃない……
馬車事故を起こしたのも
父上の仕業ですよね!?」
「なっ……!」
グレゴリーの顔から血の気が失せる。
その反応だけでもう十分だった。
「……やはり、そうだったのね」
そこへ、今まで口を閉ざしていた
マルグリットがポツリと言った。
その顔は青ざめている。
ジルベールは続けた。
「あんな人混みの激しい……
ましてあの日はお祭りでした。
そんなところに暴走馬車を走らせるなんて
これは、もはや犯罪です!
もし、あの事故で誰か死んでいたなら
どうなさるつもりだったのですか!?」
「う、うるさい!
こっちだって馬だけを放そうと思っていたのだ!
そ、それが馬車から切り離す前に……
勝手に馬が走り出して……」
最後はしりすぼみになっていく。
「今の件も公爵様に報告させていただきます。
ついでに警察にも」
「何だと!? ジルベール!
お前は……このウッド家がどうなってもよいのか!?」
「ええ! かまいません!」
するとマルグリットが声を上げた。
「こんなに貧しいのに、
見栄ばかり張って貴族社会に
しがみつくくらいなら、
いっそ爵位なんかいりません!」
ジルベールはグレゴリーを見据えた。
「父上。
あなたが守りたいウッド家は、
父上自身の行いで、もう崩れかけているんですよ」
「……」
グレゴリーの身体が小刻みに震える。
「僕はもう、父上の道具じゃない。
兄上たちだって同じです。
これ以上サフィニア様を侮辱するなら……」
ジルベールの瞳が鋭く光る。
「僕は、あなたを当主として認めません。
全てを公爵様に話します。
勿論、警察にも」
「ジルベール……お前という奴は……!」
憎しみを込めた目で
グレゴリーは睨みつける。
「父上……あなたは犯罪者です。
当主の資格など一切ありません」
「は、犯罪……者……?」
ついにグレゴリーは項垂れるのだった――
※ 次話からサフィニアの話に戻ります
あなたにおすすめの小説
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
真実の愛の裏側
藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。
男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――?
※ 他サイトにも投稿しています。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】
竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。
竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。
だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。
──ある日、スオウに番が現れるまでは。
全8話。
※他サイトで同時公開しています。
※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。
【完結】愛する人のために
月樹《つき》
恋愛
カスペル公爵令嬢デルフィーヌは、幼い頃その愛くるしい笑顔に一目惚れしたクリストファー王子に請われ、彼の婚約者となった。
けれど王子妃としての厳しい教育を受けるうちに、彼が好きだった笑顔は滅多に見られなくなり…気がつけば彼の側には、デルフィーヌではなく屈託なく笑う平民の聖女アネモネの姿を見かけるようになる…。
『あなたのために、私は無邪気な笑顔もなくしたのに…』
このお話は愛する誰かのために生きる人達のお話です。
三部仕立てで、お話はそれぞれの視点で描かれております。
※他サイトでも投稿しております。
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。