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10-13 エストマン公爵家 1
三人がソファに腰かけると、
エストマン公爵は改めて姿勢を正し、
丁寧に自己紹介を始めた。
「ようこそおいで下さいました、
王太子殿下。
私はこの屋敷の当主、
グスタフ・エストマンでございます。
そして隣に座るのが息子のラファエル、
次期当主になります」
「初めまして。
ラファエルと申します、王太子殿下」
ラファエルが頭を下げると、
アドニスはじっと彼を見つめた。
「……そうか。君がラファエルか」
「? あの……何か?」
首を傾げるラファエルに、
アドニスは小さく首を振った。
「いえ、失礼。何でもありません。
気になさらないでください」
すると公爵が口を開いた。
「殿下、もう少々お待ちください。
娘のセイラは今、身支度の最中でして。
殿下にお目通りするにあたり、
見苦しい姿を見せるわけには参りませんので」
「……なるほど。
それでは、他の家族について伺いたいのですが」
エストマン家の反応を確かめるために、
アドニスはあえて問いかけた。
「い、いえ。
実は妻と次男がおりますが……
その、妻は身体が弱いもので……療養のために
保養地に住んでおります。
次男は妻に付き添っている次第です」
言葉を濁す公爵。
だが実際は違う。
女癖の悪い夫に愛想を尽かした妻バーバラが、
次男ウリエルを連れて家を出て行ったのだ。
しかし世間体を気にする公爵は、
離婚もせず籍だけを残していた。
「そうですか。それで……他に家族は?」
「いえ? それで全部ですが?」
首を振るエストマン公爵。
その答えにアドニスは笑みを浮かべたまま、
拳をギュッと握りしめた。
そのとき――
「大変お待たせいたしました!」
甲高い声が響き、三人は一斉に振り向いた。
そこには、赤い髪を結い上げ、
大柄な体に深紅の派手なドレスをまとった
セイラが立っていた。
王太子が訪ねてきたという興奮で、
セイラの頬は真っ赤に染まっている。
「「「……」」」
三人はセイラの姿に目を見開いた。
公爵は派手すぎるドレスに唖然とし、
ラファエルは思わず吹き出しそうになり、
アドニスは驚きで言葉を失っていた。
王太子として多くの貴族令嬢を見てきた
アドニスにとって、
丸々と肥えた身体に深紅のドレスをまとった
セイラの姿は、衝撃以外の何物でもなかった。
そして同時に、
胸の奥で怒りがふつふつと湧き上がる。
サフィニアを冷遇し、
「家族はそれで全部」と答えた公爵。
痩せ細ったサフィニアに
嫌がらせを繰り返したセイラ。
ヘスティアがサフィニアの身代わりとして
大切にしていた人形を燃やし、
彼女の心を壊したラファエル。
三人の姿が、アドニスの怒りをさらに煽った。
「と、とりあえず座りなさい、セイラ」
公爵が咳払いすると、
セイラはアドニスの正面に
「失礼いたします」と腰を下ろした。
その瞬間。
ソファがギシッと軋み、座面が沈み込む。
「……」
その光景すら、アドニスには衝撃だった。
ラファエルは平静を装っているが、
笑いを堪える肩が小刻みに震えている。
「初めまして。
私はセイラと申します。
アドニス様、遠路はるばる
私を訪ねてきていただき、ありがとうございます。
お会いできて光栄です」
満面の笑みを浮かべるセイラ。
「……ええ。こちらこそ光栄です。
私の方こそ、お会いしたかったですよ。
皆様方に」
アドニスは冷たい声で、三人を見渡した――
エストマン公爵は改めて姿勢を正し、
丁寧に自己紹介を始めた。
「ようこそおいで下さいました、
王太子殿下。
私はこの屋敷の当主、
グスタフ・エストマンでございます。
そして隣に座るのが息子のラファエル、
次期当主になります」
「初めまして。
ラファエルと申します、王太子殿下」
ラファエルが頭を下げると、
アドニスはじっと彼を見つめた。
「……そうか。君がラファエルか」
「? あの……何か?」
首を傾げるラファエルに、
アドニスは小さく首を振った。
「いえ、失礼。何でもありません。
気になさらないでください」
すると公爵が口を開いた。
「殿下、もう少々お待ちください。
娘のセイラは今、身支度の最中でして。
殿下にお目通りするにあたり、
見苦しい姿を見せるわけには参りませんので」
「……なるほど。
それでは、他の家族について伺いたいのですが」
エストマン家の反応を確かめるために、
アドニスはあえて問いかけた。
「い、いえ。
実は妻と次男がおりますが……
その、妻は身体が弱いもので……療養のために
保養地に住んでおります。
次男は妻に付き添っている次第です」
言葉を濁す公爵。
だが実際は違う。
女癖の悪い夫に愛想を尽かした妻バーバラが、
次男ウリエルを連れて家を出て行ったのだ。
しかし世間体を気にする公爵は、
離婚もせず籍だけを残していた。
「そうですか。それで……他に家族は?」
「いえ? それで全部ですが?」
首を振るエストマン公爵。
その答えにアドニスは笑みを浮かべたまま、
拳をギュッと握りしめた。
そのとき――
「大変お待たせいたしました!」
甲高い声が響き、三人は一斉に振り向いた。
そこには、赤い髪を結い上げ、
大柄な体に深紅の派手なドレスをまとった
セイラが立っていた。
王太子が訪ねてきたという興奮で、
セイラの頬は真っ赤に染まっている。
「「「……」」」
三人はセイラの姿に目を見開いた。
公爵は派手すぎるドレスに唖然とし、
ラファエルは思わず吹き出しそうになり、
アドニスは驚きで言葉を失っていた。
王太子として多くの貴族令嬢を見てきた
アドニスにとって、
丸々と肥えた身体に深紅のドレスをまとった
セイラの姿は、衝撃以外の何物でもなかった。
そして同時に、
胸の奥で怒りがふつふつと湧き上がる。
サフィニアを冷遇し、
「家族はそれで全部」と答えた公爵。
痩せ細ったサフィニアに
嫌がらせを繰り返したセイラ。
ヘスティアがサフィニアの身代わりとして
大切にしていた人形を燃やし、
彼女の心を壊したラファエル。
三人の姿が、アドニスの怒りをさらに煽った。
「と、とりあえず座りなさい、セイラ」
公爵が咳払いすると、
セイラはアドニスの正面に
「失礼いたします」と腰を下ろした。
その瞬間。
ソファがギシッと軋み、座面が沈み込む。
「……」
その光景すら、アドニスには衝撃だった。
ラファエルは平静を装っているが、
笑いを堪える肩が小刻みに震えている。
「初めまして。
私はセイラと申します。
アドニス様、遠路はるばる
私を訪ねてきていただき、ありがとうございます。
お会いできて光栄です」
満面の笑みを浮かべるセイラ。
「……ええ。こちらこそ光栄です。
私の方こそ、お会いしたかったですよ。
皆様方に」
アドニスは冷たい声で、三人を見渡した――
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