孤独な公女~私は死んだことにしてください

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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1-14 先王の待つ扉

 二人を乗せた馬車は
『オケアリオン』王国の城門へと辿り着いた。

目の前に聳え立つ城壁は、
今までサフィニアが目にしてきた物とは
様相が異なっている。
まるで来訪者を拒むかのように重々しい
砦のように思えた。

サフィニアは思わず息を呑んだ。

「……随分、頑丈な城壁なのですね……」

不安な気持ちがそのまま言葉になって漏れる。

「そうだね」

アドニスは頷くと、城壁を見上げた。

「文献によると、
海に囲まれた『オケアリオン』王国は
海洋資源が豊富な国だ。
その分、侵略の危機にも何度も晒されてきた。
海賊にも狙われていたらしい。
だからこそ軍事力を強化し、
こうした堅固な守りを築いたのだろうね。
まさに要塞のようだ」

「要塞……」

サフィニアはポツリと口にする。

馬車が城へ近づくと
重々しい城門がゆっくりと開かれる。

さらに奥へと進んでくと、
城の姿がはっきりと見えてきた。
それは城というより、
戦いに備えた巨大な砦だった。

やがて大扉の前で馬車は停車し、
兵士たちが無言で扉を押し開けた。

「どうぞお降りください。
先王がお待ちしております」

「……!」

アドニスとサフィニアの間に
緊張が走った。

(先王……!)

サフィニアは思わずフードを押さえ、
アドニスはその様子をじっと見つめる。

ナディア王女の縁者で、現国王の父。

そして……何故ナディア王女が出奔したか
真実を知るかもしれない人物。

二人は馬車を降りると、騎士が告げた。

「お連れの方は外で待機願います」

「分かりました、ガブリエルは待機だ」

アドニスはガブリエルに視線を移すと、
彼は深々と頭を下げた。

「はい、アドニス様」

「では、こちらへどうぞ」

騎士の案内でアドニスとサフィニアは
城内へと足を踏み入れた。


****


 中へ入ると外観とは対照的に、
荘厳な廊下が広がっていた。

高い天井には古い壁画が描かれ、
磨き上げられた石床が
太陽の光を浴びて、輝きを放っている。

壁際には、
かつてこの国を守った騎士たちの甲冑が
置物として整然と並んでいた。

「……すごい……」

サフィニアは思わず感嘆のため息を漏らす。
その声はとても小さなものだった。

アドニスもまた、周囲を物珍しく見渡していた。

「まるでこの国の歴史が、
そのまま残っているようだね」

廊下には人の気配がほとんどなく、
カツンカツンと足音だけが響き渡っている。

やがて騎士は重厚な扉の前で立ち止まった。
扉には『オケアリオン』王国の紋章で縁取られている。

騎士は振り返ると告げた。

「先王陛下は、
この先の私的謁見室にてお待ちです」

「……」

サフィニアの心臓の動悸が早まる。
マントの下で握りしめた指先が
小刻みに震えている。

するとアドニスはサフィニアの耳元に口を寄せ、
彼女にだけ聞こえる声で囁いた。

「大丈夫。俺がついているから」

「はい」

その言葉にサフィニアは小さく頷く。

「先王陛下。お客様をお連れいたしました」

騎士が扉に手をかけた。

静まり返った廊下に
金具の軋む音が響く。

そして……扉がゆっくりと開かれた――
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