孤独な公女~私は死んだことにしてください

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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11–16 肖像画の秘密

「そうだったのか……すまない。
立たせてしまっていたな。
とりあえず、あのテーブル席に移動しよう」

先王セレウスが指さした先には、
丸テーブルと三つの椅子が置かれていた。

セレウスはゆっくりと立ち上がり、
しっかりした足取りでテーブルへ向かう。
その後をサフィニアとアドニスが続いた。

三人が席に着くと、
セレウスはすぐに口を開いた。

「しかし、そなた……サフィニアと言ったか。
本当に我が妹ナディアとよく似ている……」

先王はサフィニアをじっと見つめる。
その視線に、アドニスが静かに言葉を挟んだ。

「先王様、サフィニアが王女ナディアの
血を引いているのは間違いないはずです。
こちらをご覧ください」

アドニスはポケットから小箱を取り出し、
蓋を開いた。
中にはローズの部屋で見つけた古びた指輪が
収められている。

指輪には三叉の槍と波をかたどった
紋章が刻まれていた。

「! こ、これは……! 
すまない、よく見せてくれるか?」

セレウスは声を震わせ、
アドニスはサフィニアをちらりと見る。

「はい、どうぞ」

サフィニアが頷くと、
アドニスは小箱をセレウスに差し出した。

セレウスは指輪を取り出し、
じっと見つめる。

「……この指輪はまさしく
我がアクアレイス家の家紋……
ナディアの指輪に違いない」

セレウスが指輪に触れた瞬間。
カチリと小さな音が鳴り、
飾り部分の蓋が開いた。
そこには文字が刻まれている。

「……ナディア・アクアレイス……
やはりそうだ。
それでは、そなたは本当に
妹の孫だったのだな……?」

セレウスは目を潤ませながら
サフィニアを見つめた。

「本当に……私が、ナディア王女の……?」

サフィニアはまだ信じられなかった。

母ローズは出自も分からぬメイドだと
ずっと思っていたからだ。

そこへアドニスが疑問を投げかける。

「先王様。何故ナディア王女が
祖父との結婚を前に出奔されたのか、
理由をご存知ですか?」

セレウスはアドニスをじっと見つめ……
深くため息をついた。

「……あぁ、もちろん知っている。
妹ナディアは、元々王族という
窮屈な立場を嫌っていたのだ。
まして『会ったこともない相手と
政略結婚なんてしたくない』と、
ずっと言っていた。
よく平民の娘姿に扮して、
こっそり町に遊びに出かけていた。
本当に自由奔放な妹だった……」

セレウスは昔を懐かしむように目を閉じた。
サフィニアもアドニスも
静かに耳を傾けている。
やがて先王は目を開き、続けた。

「あの肖像画も、『ミレア』王国の当時の王太子――
ゆくゆくはナディアの夫となるはずだった
者に贈るため描かせたものだ。
嫌がるナディアを無理に言い聞かせてな……。
そなたたちはナディアの肖像画を
見たことがあるか?」

「「はい」」

サフィニアとアドニスは同時に頷いた。

「そうか……。あの肖像画を描いたのは
わが国一番とうたわれた新進気鋭の
青年画家だったのだが……
それが一番の間違いだった」

「先王、間違いだったとは
どういうことです?」

アドニスが首を傾げる。

するとセレウスは苦い表情で言った。

「ナディアは……その青年画家と恋に落ち……
駆け落ちしてしまったのだ」

「「!!」」

サフィニアとアドニスは、同時に
息を飲んだ――
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