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11-17 語られた過去 1
「そんな……ナディア王女が
駆け落ち……?」
サフィニアは思わず呟き、
隣に座るアドニスを見た。
アドニスの顔は青ざめ、
まるで身体が硬直したかのように動かない。
セレウスは静かに頷いた。
「そうだ。あれはちょうど、
ナディアと『ミレア』王国の王太子との
結婚話が出た直後のことだった。
ナディアは政略結婚に乗り気では
なかったのだが、当時の国王――
我らの父は当然聞き入れなかった。
そして、まずはナディアの絵姿を描き、
王太子に進呈することにしたのだ」
一呼吸置くと、セレウスは続けた。
「……何しろ、ナディアは
『オケアリオン』王国一、
美しい女性だと諸外国から
噂になっていたのでな」
そう言いながら、セレウスはちらりと
サフィニアに視線を送った。
「……」
サフィニアは複雑な気持ちで
その言葉を聞いていた。
「そこでナディアの絵姿を描くために、
十名の画家が呼び集められた。
最終的に、十名の中でもひときわ
技量に秀でた青年――エリアスが選ばれた」
セレウスの声は、
ここから先を語るのをためらうように
低くなった。
「エリアス……?
では、その方がお母様の……?」
サフィニアの声が震える。
「そうだ。エリアスが父親だ」
サフィニアの肩がピクリと跳ねた。
そこへ、アドニスが静かに尋ねる。
「その人物……エリアスという方は、
どのような青年だったのですか?」
するとセレウスは少し目を細め、
遠い記憶を思い出すかのよう答えた。
「そなたと同じ、黄金色の髪に青い瞳の……
まるで彫像のように整った顔立ちの男だった。
穏やかで、明るい性格だった……」
「そうでしたか……」
アドニスは小さく呟いた。
セレウスは続ける。
「エリアスをナディアに紹介した時、
最初のナディアはさほど興味を示さなかった。
だが、エリアスは言ったのだ。
『肖像画を描くには、その人となりを
知る必要があります。
まずは会話を楽しみましょう』とな。
初めは何を言い出すのかと思ったが……
ナディアは、彼に興味を持ったようだった。
そこから二人の交流が始まったのだ」
セレウスは遠い目で、
窓の外へ視線を向けた。
「エリアスは下町に暮らす絵描きだった。
毎日城へ足を運んでは、
ナディアと庭を散歩していた。
メイドたちの話では、
二人はとても楽しげに会話をしていたと
報告が上がっていた。
やがて、エリアスは城内の庭で
ナディアの絵姿を描くようになったのだが……」
そこでセレウスの顔が曇る。
「……日に日に、ナディアは
元気をなくしていった。
あれほど楽しそうにしていたのに、
何があったのだろうと不思議に思い、
私も尋ねたことがあった。
だがナディアは、悲しげに
首を振るだけだった。
そして、ついに……
決定的な出来事があったのだ」
セレウスは目を閉じた――
駆け落ち……?」
サフィニアは思わず呟き、
隣に座るアドニスを見た。
アドニスの顔は青ざめ、
まるで身体が硬直したかのように動かない。
セレウスは静かに頷いた。
「そうだ。あれはちょうど、
ナディアと『ミレア』王国の王太子との
結婚話が出た直後のことだった。
ナディアは政略結婚に乗り気では
なかったのだが、当時の国王――
我らの父は当然聞き入れなかった。
そして、まずはナディアの絵姿を描き、
王太子に進呈することにしたのだ」
一呼吸置くと、セレウスは続けた。
「……何しろ、ナディアは
『オケアリオン』王国一、
美しい女性だと諸外国から
噂になっていたのでな」
そう言いながら、セレウスはちらりと
サフィニアに視線を送った。
「……」
サフィニアは複雑な気持ちで
その言葉を聞いていた。
「そこでナディアの絵姿を描くために、
十名の画家が呼び集められた。
最終的に、十名の中でもひときわ
技量に秀でた青年――エリアスが選ばれた」
セレウスの声は、
ここから先を語るのをためらうように
低くなった。
「エリアス……?
では、その方がお母様の……?」
サフィニアの声が震える。
「そうだ。エリアスが父親だ」
サフィニアの肩がピクリと跳ねた。
そこへ、アドニスが静かに尋ねる。
「その人物……エリアスという方は、
どのような青年だったのですか?」
するとセレウスは少し目を細め、
遠い記憶を思い出すかのよう答えた。
「そなたと同じ、黄金色の髪に青い瞳の……
まるで彫像のように整った顔立ちの男だった。
穏やかで、明るい性格だった……」
「そうでしたか……」
アドニスは小さく呟いた。
セレウスは続ける。
「エリアスをナディアに紹介した時、
最初のナディアはさほど興味を示さなかった。
だが、エリアスは言ったのだ。
『肖像画を描くには、その人となりを
知る必要があります。
まずは会話を楽しみましょう』とな。
初めは何を言い出すのかと思ったが……
ナディアは、彼に興味を持ったようだった。
そこから二人の交流が始まったのだ」
セレウスは遠い目で、
窓の外へ視線を向けた。
「エリアスは下町に暮らす絵描きだった。
毎日城へ足を運んでは、
ナディアと庭を散歩していた。
メイドたちの話では、
二人はとても楽しげに会話をしていたと
報告が上がっていた。
やがて、エリアスは城内の庭で
ナディアの絵姿を描くようになったのだが……」
そこでセレウスの顔が曇る。
「……日に日に、ナディアは
元気をなくしていった。
あれほど楽しそうにしていたのに、
何があったのだろうと不思議に思い、
私も尋ねたことがあった。
だがナディアは、悲しげに
首を振るだけだった。
そして、ついに……
決定的な出来事があったのだ」
セレウスは目を閉じた――
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