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12-15 断罪の幕引き
セイラが衛兵たちに連行され、
再び謁見室に静寂が落ちたその時。
国王の低い声が響き渡る。
「……ラファエル・エストマン。
最後は、お前の番だ」
名前を呼ばれたラファエルは、
ピクリと肩を動かす。
「お前には、公爵家の一員としての
監督不行き届きを問う。
父親がサフィニアを冷遇したこと。
セイラの嫌がらせを止めずに傍観していたこと。
そして……妹であるサフィニアに
手を差し伸べなかったこと。
その責任は非常に重い」
「……っ」
ラファエルの目が見開かれる。
だが、口は固く閉ざされたままだ。
国王は続ける。
「よって、エストマン公爵家は取り潰しとする。
家の財産はすべて没収。
ラファエル、お前は王都から追放とする」
その瞬間、
ラファエルの顔色がほんの一瞬だけ青ざめた。
(……公爵家の取り潰し……。
まぁ、そうなっても仕方ないな。
父は忘却牢獄、セイラは更生施設送りだ。
世間で恥をさらされるのは間違いない。
どのみち王都では暮らしていけない。
個人財産が残るだけマシか……
田舎に引きこもって生きていくか)
その時――
「ま、待ってください!」
サフィニアがアドニスの腕を掴んだ。
「サフィニア……?」
アドニスが驚いて振り返る。
サフィニアは震えながらも、
まっすぐ国王を見上げた。
「ラファエル様を……あまり責めないで
いただけませんか?
ラファエル様は私に嫌がらせなんて、
一度もしていませんので……」
「……え?」
ラファエルの目が見開かれる。
アドニスはサフィニアの言葉を受け、
国王に向き直る。
「陛下。
ラファエルは確かに無関心ではありましたが、
サフィニアに危害を加えたわけではありません。
むしろ、彼女が行方不明となり
『ノルディア』王国を
去った後、捜索を行いました」
「!」
息をのむラファエル。
アドニスの話はさらに続く。
「捜索は一カ月続けられたと聞いています。
そしてサフィニアが亡くなったと
判断した後は葬儀の手配など、
彼なりに動いていた部分もあります。
そこを考慮したうえで、
公爵やセイラとは違い、彼の
罪は軽いと判断します。
どうか、温情を与えていただきたい」
国王は難しい顔で話を聞いていたが
やがて、ゆっくりと頷いた。
「……よかろう。
ラファエル個人の財産は没収しない。
ただし、王都からの追放は変わらぬ」
アドニスはラファエルに向き直る。
「ラファエル。
個人財産のみは残すよう、私から提案した。
……あとは、お前がどう生きるかだ」
ラファエルはゆっくりと頭を下げた。
「温情をいただき……感謝いたします。
処分、確かに受け入れました」
「では衛兵、その男を連れ出せ」
国王の命令により衛兵が近づき、
ラファエルの腕に手を添える。
小さく頷いた、ラファエルは背を向けると
扉へ向かって歩き出す。
「……」
その様子をじっと見つめるサフィニア。
するとラファエルはサフィニアへ視線を向けた。
「……悪かったな、サフィニア。
守ってやらなくて」
「ラファエル様……」
サフィニアの瞳が揺れる。
ラファエルは、
ほんの僅かだが口元に笑みを浮かべた。
「……幸せになれよ」
その一言を残し、
ラファエルは静かに謁見室から連れ出されていく。
(さようなら……ラファエル様)
遠ざかっていくラファエルの背中に
サフィニアは心の中で語り掛けた――
再び謁見室に静寂が落ちたその時。
国王の低い声が響き渡る。
「……ラファエル・エストマン。
最後は、お前の番だ」
名前を呼ばれたラファエルは、
ピクリと肩を動かす。
「お前には、公爵家の一員としての
監督不行き届きを問う。
父親がサフィニアを冷遇したこと。
セイラの嫌がらせを止めずに傍観していたこと。
そして……妹であるサフィニアに
手を差し伸べなかったこと。
その責任は非常に重い」
「……っ」
ラファエルの目が見開かれる。
だが、口は固く閉ざされたままだ。
国王は続ける。
「よって、エストマン公爵家は取り潰しとする。
家の財産はすべて没収。
ラファエル、お前は王都から追放とする」
その瞬間、
ラファエルの顔色がほんの一瞬だけ青ざめた。
(……公爵家の取り潰し……。
まぁ、そうなっても仕方ないな。
父は忘却牢獄、セイラは更生施設送りだ。
世間で恥をさらされるのは間違いない。
どのみち王都では暮らしていけない。
個人財産が残るだけマシか……
田舎に引きこもって生きていくか)
その時――
「ま、待ってください!」
サフィニアがアドニスの腕を掴んだ。
「サフィニア……?」
アドニスが驚いて振り返る。
サフィニアは震えながらも、
まっすぐ国王を見上げた。
「ラファエル様を……あまり責めないで
いただけませんか?
ラファエル様は私に嫌がらせなんて、
一度もしていませんので……」
「……え?」
ラファエルの目が見開かれる。
アドニスはサフィニアの言葉を受け、
国王に向き直る。
「陛下。
ラファエルは確かに無関心ではありましたが、
サフィニアに危害を加えたわけではありません。
むしろ、彼女が行方不明となり
『ノルディア』王国を
去った後、捜索を行いました」
「!」
息をのむラファエル。
アドニスの話はさらに続く。
「捜索は一カ月続けられたと聞いています。
そしてサフィニアが亡くなったと
判断した後は葬儀の手配など、
彼なりに動いていた部分もあります。
そこを考慮したうえで、
公爵やセイラとは違い、彼の
罪は軽いと判断します。
どうか、温情を与えていただきたい」
国王は難しい顔で話を聞いていたが
やがて、ゆっくりと頷いた。
「……よかろう。
ラファエル個人の財産は没収しない。
ただし、王都からの追放は変わらぬ」
アドニスはラファエルに向き直る。
「ラファエル。
個人財産のみは残すよう、私から提案した。
……あとは、お前がどう生きるかだ」
ラファエルはゆっくりと頭を下げた。
「温情をいただき……感謝いたします。
処分、確かに受け入れました」
「では衛兵、その男を連れ出せ」
国王の命令により衛兵が近づき、
ラファエルの腕に手を添える。
小さく頷いた、ラファエルは背を向けると
扉へ向かって歩き出す。
「……」
その様子をじっと見つめるサフィニア。
するとラファエルはサフィニアへ視線を向けた。
「……悪かったな、サフィニア。
守ってやらなくて」
「ラファエル様……」
サフィニアの瞳が揺れる。
ラファエルは、
ほんの僅かだが口元に笑みを浮かべた。
「……幸せになれよ」
その一言を残し、
ラファエルは静かに謁見室から連れ出されていく。
(さようなら……ラファエル様)
遠ざかっていくラファエルの背中に
サフィニアは心の中で語り掛けた――
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