50 / 272
2-15 働き者のサフィニア
キィイイイ~……
少しきしんだ音を立てて離宮の扉が開いた。4年ぶりの我が家に足を踏み入れたサフィニアは……。
「クシャン! す、すごい埃だわ」
たまらずくしゃみをしてしまった。
床には埃がたまり、天井には蜘蛛の巣が張っている。
「まずは窓を開けて換気しなくちゃ」
サフィニアは部屋中の全ての窓を開けて回り、階段下の納戸へ向かった。
扉を開けると、中にはバケツや箒等の掃除用具が入っている。
「良かった……まだ掃除道具が残っていて」
納戸の中には古くなってあちこち破れていたシーツも残されていた。これは母、ローズが雑巾代わりに残しておいた物だ。
親子で、貧しい生活をしていたのでローズは再利用できる物はどんなものでも残しておいたのだ。
「ママ……」
ぽつりと呟き顔を上げると、サフィニアは掃除用具を持って納戸を出ると早速大掃除を始めた。
はたきでゴミを払い、箒で床を掃いてゴミを取り除く。
「井戸の水はまだ出るかしら……?」
サフィニアはバケツを手に取ると、井戸がある中庭へ向かった。
「まぁ……雑草だらけだわ」
中庭に出てきたサフィニアは目を見開いた。ローズと暮らしていた頃は芝生が見える状態になっていたが、今は背丈の伸びた雑草だらけで井戸の場所も見えなくなっている。
「酷い庭だけど、まずは屋敷の掃除が優先ね。え~と……確か井戸はこの辺りにあったはずだけど……」
ガサガサと雑草をかき分け、サフィニアは笑顔になった。
「あった! 井戸だわ!」
この井戸は手押しポンプの井戸になっており、子供のサフィニアでも難なく水を汲みだすことが出来るようになっている。
「錆びていなければいいけど……」
試しにハンドルを押してみると、少し軋んだ音が出るものの動かすことが出来た。
「……動いた! ならお水はどうかしら?」
20回ほどハンドルを押し続けていると、やがてゴボゴボと音が聞こえ始め水口から水が出始めた。
「お水が出てきたわ」
嬉しさのあまり、サフィニアの顔に笑みが浮かぶ。最初は赤錆が混じった水だったが、やがて徐々に澄んだ水になってきた。
「今は、お掃除に使うだけだからこれくらいでいいかしら?」
持ってきたバケツに水を汲むと、持ち上げた。
「お、重い……」
足元をふらつかせながら、サフィニアはバケツを持って部屋に戻ると今度は雑巾がけの掃除を始めた――
****
「……ふぅ」
サフィニアは掃除を終えた部屋を見渡した。
「奇麗になったわ。……2部屋だけど」
誰も使用していない小さな離宮とはいえ、この屋敷はエストマン公爵家の物なので10部屋以上ある。
そこでとりあえず必要最低限な炊事場と、リビングだけを掃除したのだ。
その時、キュルキュルとサフィニアのお腹が小さく鳴った。
「お腹すいたわ……今何時かしら?」
壁にかけてある時計は止まっている為、時間がさっぱり分からない。
「何か食べましょう」
サフィニアは炊事場からカゴを取ると、再び中庭へ向かった。
「……あったわ! 良かった……」
中庭にはラズベリーの木が何本も生えており、かわいらしい実がたくさんついている。
これは少しでも食費を浮かすため、母と二人で植えた物だった。
「ちょうど実が成る季節で良かったわ」
カゴいっぱいにラズベリーの実を入れると、サフィニアは屋敷に戻り……目を見開いた。
家の前に馬に乗ったセザールがいたのだ。
「セザール!」
名前を呼ぶと、セザールは振り向いた。
「あ! サフィニア様!」
馬から素早く降りると、セザールはサフィニアに駆け寄った――
少しきしんだ音を立てて離宮の扉が開いた。4年ぶりの我が家に足を踏み入れたサフィニアは……。
「クシャン! す、すごい埃だわ」
たまらずくしゃみをしてしまった。
床には埃がたまり、天井には蜘蛛の巣が張っている。
「まずは窓を開けて換気しなくちゃ」
サフィニアは部屋中の全ての窓を開けて回り、階段下の納戸へ向かった。
扉を開けると、中にはバケツや箒等の掃除用具が入っている。
「良かった……まだ掃除道具が残っていて」
納戸の中には古くなってあちこち破れていたシーツも残されていた。これは母、ローズが雑巾代わりに残しておいた物だ。
親子で、貧しい生活をしていたのでローズは再利用できる物はどんなものでも残しておいたのだ。
「ママ……」
ぽつりと呟き顔を上げると、サフィニアは掃除用具を持って納戸を出ると早速大掃除を始めた。
はたきでゴミを払い、箒で床を掃いてゴミを取り除く。
「井戸の水はまだ出るかしら……?」
サフィニアはバケツを手に取ると、井戸がある中庭へ向かった。
「まぁ……雑草だらけだわ」
中庭に出てきたサフィニアは目を見開いた。ローズと暮らしていた頃は芝生が見える状態になっていたが、今は背丈の伸びた雑草だらけで井戸の場所も見えなくなっている。
「酷い庭だけど、まずは屋敷の掃除が優先ね。え~と……確か井戸はこの辺りにあったはずだけど……」
ガサガサと雑草をかき分け、サフィニアは笑顔になった。
「あった! 井戸だわ!」
この井戸は手押しポンプの井戸になっており、子供のサフィニアでも難なく水を汲みだすことが出来るようになっている。
「錆びていなければいいけど……」
試しにハンドルを押してみると、少し軋んだ音が出るものの動かすことが出来た。
「……動いた! ならお水はどうかしら?」
20回ほどハンドルを押し続けていると、やがてゴボゴボと音が聞こえ始め水口から水が出始めた。
「お水が出てきたわ」
嬉しさのあまり、サフィニアの顔に笑みが浮かぶ。最初は赤錆が混じった水だったが、やがて徐々に澄んだ水になってきた。
「今は、お掃除に使うだけだからこれくらいでいいかしら?」
持ってきたバケツに水を汲むと、持ち上げた。
「お、重い……」
足元をふらつかせながら、サフィニアはバケツを持って部屋に戻ると今度は雑巾がけの掃除を始めた――
****
「……ふぅ」
サフィニアは掃除を終えた部屋を見渡した。
「奇麗になったわ。……2部屋だけど」
誰も使用していない小さな離宮とはいえ、この屋敷はエストマン公爵家の物なので10部屋以上ある。
そこでとりあえず必要最低限な炊事場と、リビングだけを掃除したのだ。
その時、キュルキュルとサフィニアのお腹が小さく鳴った。
「お腹すいたわ……今何時かしら?」
壁にかけてある時計は止まっている為、時間がさっぱり分からない。
「何か食べましょう」
サフィニアは炊事場からカゴを取ると、再び中庭へ向かった。
「……あったわ! 良かった……」
中庭にはラズベリーの木が何本も生えており、かわいらしい実がたくさんついている。
これは少しでも食費を浮かすため、母と二人で植えた物だった。
「ちょうど実が成る季節で良かったわ」
カゴいっぱいにラズベリーの実を入れると、サフィニアは屋敷に戻り……目を見開いた。
家の前に馬に乗ったセザールがいたのだ。
「セザール!」
名前を呼ぶと、セザールは振り向いた。
「あ! サフィニア様!」
馬から素早く降りると、セザールはサフィニアに駆け寄った――
あなたにおすすめの小説
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪
山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」
「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」
「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」
「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」
「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」
そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。
私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。
さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪
捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?
ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」
ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。
それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。
傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……
【完結】ハーレム構成員とその婚約者
里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。
彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。
そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。
異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。
わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。
婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。
なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。
周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。
コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
第一王子様が最後に選んだのは、妹ではなく私だったようです
睡蓮
恋愛
姉であるオルシナと、妹のマリーシア。マリーシアは小さな時から周囲の人物を次々と味方につけ、オルシナの事を孤立させていった。マリーシアに対しては誰もがちやほやと接してくるのに、オルシナに対しては冷たい態度を取る者がほとんどで、それがこれから先も続くものと思われていた。そんな中、二人のもとに一通の手紙が届く。差出人はフォルグ第一王子であり、二人のうちのいずれかを婚約者として迎え入れるということが書かれていた…。
どうかこの偽りがいつまでも続きますように…
矢野りと
恋愛
ある日突然『魅了』の罪で捕らえられてしまった。でも誤解はすぐに解けるはずと思っていた、だって私は魅了なんて使っていないのだから…。
それなのに真実は闇に葬り去られ、残ったのは周囲からの冷たい眼差しだけ。
もう誰も私を信じてはくれない。
昨日までは『絶対に君を信じている』と言っていた婚約者さえも憎悪を向けてくる。
まるで人が変わったかのように…。
*設定はゆるいです。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login