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3-10 セイラの驚くべき提案
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小太りの身体に膨張色のオレンジ色のドレスを着たセイラは、意地悪そうな笑みを浮かべて腕組みしている。
そしてまた、セイラに付き添った侍女も冷たい視線でサフィニアを見つめていた。
「セイラ様に御挨拶申し上げます」
サフィニアは慌てて立ち上がると、挨拶をした。
「セイラ様……?」
ヘスティアは小声で名前を呟き、すぐに来客が誰か気付いて慌てて頭を下げる。
2人が挨拶の姿勢を崩さない様子を、少しの間セイラは無言で見つめていたが……。
「あんたたち、顔を上げなさいよ」
セイラに言われて、恐る恐る顔を上げる2人。
するとセイラは、じっとヘスティアを見つめる。
「あ、あの……どうかされましたか?」
セイラがあまりにもジロジロと自分を見つめるのでヘスティアは尋ねた。
「あんたがヘスティア・キャンベルね? サフィニアの新しい侍女になったっていう」
「はい、そうですが……」
「ふ~ん。……全く。お父様といいい、あんたといい物好きね。こんな卑しいメイドが生んだ娘の侍女になるなんて」
「!」
卑しいメイドの娘と言われ、サフィニアの顔がカッと熱くなる。
「ねぇ、聞いたわよ? あんたはお金の為にサフィニアの侍女になったんだって? あんなのの侍女なんかやめてしまいなさい。その代わり私の侍女にしてあげるわよ」
「「「え!?」」」
セイラの提案に、ヘスティアとサフィニア。さらにはセイラの侍女まで、驚いた顔になる。
「あんた、中々人目を惹く容姿をしているから連れて歩くにはいいと思うのよね? どう? もし侍女になったら、私からも同じだけの手当てを月々払ってあげる。ど悪い話じゃないでしょう?」
すると真っ先に反応したのは、セイラの侍女だった。
「あの、セイラ様。あの者を侍女にしても、私はまだセイラ様の侍女を続けられるのですよね?」
媚びを売るような笑顔で尋ねる侍女。
「はぁ? 何言ってるの。私には専属メイドが何人もいるのよ? だから侍女なんて一人で十分。もし彼女を侍女に決めたら、あんたなんかいらない。クビよ、クビ。それくらい当然でしょう?」
「そ、そんな……!」
侍女の顔が真っ青になる。しかし、セイラは気にする素振りも見せず、再度ヘスティアに尋ねた。
「それで、どうするの? 私の侍女になる気はあるの? もしなれば身の回りの世話をするメイドは沢山いるのだから、仕事がずっと楽になるわよ。今だって貴族令嬢として嗜みを、な~んにも分かっていないから教えてあげていたんでしょう? 出来の悪い主を持つと苦労が増えるだけよ? だけど私の処に来れば仕事は減って、お金は沢山貰えるわ。こんな良い話、他にはないでしょう?」
「……」
ヘスティアは黙ってセイラの話を聞いている。
隣にいるサフィニアはヘスティアの顔を見つめた。
(そうだわ、セイラ様の言う通りだわ。ヘスティアはお金の為に、私の侍女になってくれた。より沢山のお金を貰えるのなら……セイラ様の侍女になるのが一番よね。私ではヘスティアの為に何もしてあげられないもの。私の侍女を断りにくいなら、こちらから提案してあげるべきよね?)
「あのね、ヘスティア……」
その時。
「申し訳ございませんが、侍女のお話はお断りさせていただきます」
ヘスティアは、きっぱりと言った――
そしてまた、セイラに付き添った侍女も冷たい視線でサフィニアを見つめていた。
「セイラ様に御挨拶申し上げます」
サフィニアは慌てて立ち上がると、挨拶をした。
「セイラ様……?」
ヘスティアは小声で名前を呟き、すぐに来客が誰か気付いて慌てて頭を下げる。
2人が挨拶の姿勢を崩さない様子を、少しの間セイラは無言で見つめていたが……。
「あんたたち、顔を上げなさいよ」
セイラに言われて、恐る恐る顔を上げる2人。
するとセイラは、じっとヘスティアを見つめる。
「あ、あの……どうかされましたか?」
セイラがあまりにもジロジロと自分を見つめるのでヘスティアは尋ねた。
「あんたがヘスティア・キャンベルね? サフィニアの新しい侍女になったっていう」
「はい、そうですが……」
「ふ~ん。……全く。お父様といいい、あんたといい物好きね。こんな卑しいメイドが生んだ娘の侍女になるなんて」
「!」
卑しいメイドの娘と言われ、サフィニアの顔がカッと熱くなる。
「ねぇ、聞いたわよ? あんたはお金の為にサフィニアの侍女になったんだって? あんなのの侍女なんかやめてしまいなさい。その代わり私の侍女にしてあげるわよ」
「「「え!?」」」
セイラの提案に、ヘスティアとサフィニア。さらにはセイラの侍女まで、驚いた顔になる。
「あんた、中々人目を惹く容姿をしているから連れて歩くにはいいと思うのよね? どう? もし侍女になったら、私からも同じだけの手当てを月々払ってあげる。ど悪い話じゃないでしょう?」
すると真っ先に反応したのは、セイラの侍女だった。
「あの、セイラ様。あの者を侍女にしても、私はまだセイラ様の侍女を続けられるのですよね?」
媚びを売るような笑顔で尋ねる侍女。
「はぁ? 何言ってるの。私には専属メイドが何人もいるのよ? だから侍女なんて一人で十分。もし彼女を侍女に決めたら、あんたなんかいらない。クビよ、クビ。それくらい当然でしょう?」
「そ、そんな……!」
侍女の顔が真っ青になる。しかし、セイラは気にする素振りも見せず、再度ヘスティアに尋ねた。
「それで、どうするの? 私の侍女になる気はあるの? もしなれば身の回りの世話をするメイドは沢山いるのだから、仕事がずっと楽になるわよ。今だって貴族令嬢として嗜みを、な~んにも分かっていないから教えてあげていたんでしょう? 出来の悪い主を持つと苦労が増えるだけよ? だけど私の処に来れば仕事は減って、お金は沢山貰えるわ。こんな良い話、他にはないでしょう?」
「……」
ヘスティアは黙ってセイラの話を聞いている。
隣にいるサフィニアはヘスティアの顔を見つめた。
(そうだわ、セイラ様の言う通りだわ。ヘスティアはお金の為に、私の侍女になってくれた。より沢山のお金を貰えるのなら……セイラ様の侍女になるのが一番よね。私ではヘスティアの為に何もしてあげられないもの。私の侍女を断りにくいなら、こちらから提案してあげるべきよね?)
「あのね、ヘスティア……」
その時。
「申し訳ございませんが、侍女のお話はお断りさせていただきます」
ヘスティアは、きっぱりと言った――
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