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3-12 離宮に来た理由
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「え? セザール!? どうしてここに!?」
セザールに好意を抱いているセイラは慌てて、鞭を背中に隠した。
「セイラ様が離宮に向かわれたと話を聞いて、後を追ってきたのですよ」
するとセイラが不機嫌な顔になる。
「何よ、それってつまりサフィニアが心配でここへ来たっていうわけなのね。……そうよ、セザール! あなたは、私の執事になったんじゃなかったの!? なのに、何故サフィニアを構うのよ! こんな、メイドの子供なんかに!」
セイラがサフィニアを指さした途端。
ドサッ!
鞭が床に落ちる音が響いた。隠し持っていた鞭を床に落としてしまったのだ。
「鞭……」
セザールがポツリと口にすると、セイラは慌てて拾い上げた。
「ち、違うのよ! こ、これは……そう! この侍女がサフィニアを鞭で打とうとしたから私が取り上げたのよ!」
「ええ!? そんな! セイラ様!?」
セイラに指さされた侍女は悲痛な声を上げる。
「……残念ですが、先ほど僕はセイラ様がサフィニア様に鞭を振るおうとしているところを目にしております。噓をつくのはやめていただけますか?」
セザールはため息をついた。
「なっ……!」
途端にセイラの顔が真っ赤に染まる。
「セイラ様、先ほどセイラ様は何故僕がここに来たのかを尋ねましたよね?」
「え、ええ。聞いたわ。どうせサフィニアを気にかけて、ここへ来たのでしょう? 何しろサフィニアはセザールのお気に入りなのだからね!」
憎しみを込めた目で、セイラはサフィニアを睨みつけた。しかし、セザールは静かに首を振る。
「いいえ、僕がこちらへ来たのはセイラ様を追ってきたのです。僕はセイラ様の忠実な執事ですから」
「セ、セザール……」
セザールに見つめられ、セイラの頬が赤く染まる。
「でも、サフィニア様に鞭を振るおうとしていたのを目にするとは思いませんでした。まさかお優しいセイラ様が、そのような真似をなさるなんて……僕はセイラ様のことを買い被っていたのでしょうか?」
「ち、違うわ! ほ、本当に誤解なのよ! 相手に鞭打ちをすると、どれほど痛いか教えてあげようと思っただけよ! そ、その……サフィニアに、むやみと人に鞭打ちをするような主になって欲しくなかったから!」
悲し気に目を伏せるセザールに対して苦しい言い訳をするセイラ。
すると途端にセザールは笑顔になる。
「本当ですか!? それなら安心しました。やはりセイラ様は僕の見立て通り、お優しい方だったのですね? ……ところでセイラ様。本日は何故わざわざ離宮に足を運ばれたのですか?」
「あ、そうだったわ! 今の話で思い出したわ」
セイラは鋭い目つきでサフィニアを見ると、ポケットから1通の手紙を取り出した。
「ほら、あんたに招待状が届いているわよ!」
「招待状……ですか?」
「ええ、そうよ! ほら、受け取りなさい! どうせまともに教育も受けていないだろうから、あんたの専属侍女にでも手紙を読んでもらえばいいでしょう!?」
嫌味をたっぷり含ませながらセイラはサフィニアに手紙を突き付けた。
「……ありがとうございます」
サフィニアは手紙を受け取ると、宛名を読んだ。
「リーネ・ウィルソン侯爵……?」
「そうよ。リーネ・ウィルソン侯爵……えぇ!? 何で文字が読めるのよ!」
すると今まで沈黙していたヘスティアが言った。
「サフィニア様は文字の読み書きが出来ますよ。今はこの国の歴史の本を読んでいらっしゃいます」
「何ですって!? 歴史を!?」
勉強が大嫌いなセイラは憎々し気にサフィニアを見つめた。
「ウィルソン侯爵家はとても名家ですね。確か再来週はリーネ侯爵令嬢の15歳の誕生パーティーが開催されることになっておりましたね。もしかして招待状でしょうか?」
セイラの注意を引くため、セザールが会話に入ってきた。
「え、ええ。そうよ。私と彼女は親友でね。つい最近腹違いの妹がいることを話したの。そうしたら、彼女が自分の誕生パーティーに招待したいと言ったのよ。盛大なダンスパーティーが開かれることになっているの。どう? 嬉しいでしょう? 貴族が集まるパーティーに参加できるのだから」
セイラは意地悪な笑みを浮かべる。
「ダンスもあるのですか……?」
サフィニアは小声で尋ねた。
「ええ、そうよ。楽しいパーティーになるはずよ。この私に感謝しなさい」
胸をそらせるセイラ。
(ふん、どうせあの娘にダンスが踊れるはずないわ。せいぜい思いっきり恥をかくがいいわ)
今からサフィニアの失態を考えてほくそ笑むセイラ。
その様子を少しの間、セザールは見守っていたが……。
「セイラ様、そろそろピアノのレッスンが始まる頃です。屋敷に戻りましょう」
「ええ、そうね。戻りましょう、行くわよ」
セイラは背後にいる侍女に声をかけると、セザールと一緒にリビングを出て行った。
セザールはリビングを出る直前、一瞬サフィニアに視線を向けて会釈した。
(セザール……!)
サフィニアとヘスティアは3人が去って行くのを無言で見届けるのだった――
セザールに好意を抱いているセイラは慌てて、鞭を背中に隠した。
「セイラ様が離宮に向かわれたと話を聞いて、後を追ってきたのですよ」
するとセイラが不機嫌な顔になる。
「何よ、それってつまりサフィニアが心配でここへ来たっていうわけなのね。……そうよ、セザール! あなたは、私の執事になったんじゃなかったの!? なのに、何故サフィニアを構うのよ! こんな、メイドの子供なんかに!」
セイラがサフィニアを指さした途端。
ドサッ!
鞭が床に落ちる音が響いた。隠し持っていた鞭を床に落としてしまったのだ。
「鞭……」
セザールがポツリと口にすると、セイラは慌てて拾い上げた。
「ち、違うのよ! こ、これは……そう! この侍女がサフィニアを鞭で打とうとしたから私が取り上げたのよ!」
「ええ!? そんな! セイラ様!?」
セイラに指さされた侍女は悲痛な声を上げる。
「……残念ですが、先ほど僕はセイラ様がサフィニア様に鞭を振るおうとしているところを目にしております。噓をつくのはやめていただけますか?」
セザールはため息をついた。
「なっ……!」
途端にセイラの顔が真っ赤に染まる。
「セイラ様、先ほどセイラ様は何故僕がここに来たのかを尋ねましたよね?」
「え、ええ。聞いたわ。どうせサフィニアを気にかけて、ここへ来たのでしょう? 何しろサフィニアはセザールのお気に入りなのだからね!」
憎しみを込めた目で、セイラはサフィニアを睨みつけた。しかし、セザールは静かに首を振る。
「いいえ、僕がこちらへ来たのはセイラ様を追ってきたのです。僕はセイラ様の忠実な執事ですから」
「セ、セザール……」
セザールに見つめられ、セイラの頬が赤く染まる。
「でも、サフィニア様に鞭を振るおうとしていたのを目にするとは思いませんでした。まさかお優しいセイラ様が、そのような真似をなさるなんて……僕はセイラ様のことを買い被っていたのでしょうか?」
「ち、違うわ! ほ、本当に誤解なのよ! 相手に鞭打ちをすると、どれほど痛いか教えてあげようと思っただけよ! そ、その……サフィニアに、むやみと人に鞭打ちをするような主になって欲しくなかったから!」
悲し気に目を伏せるセザールに対して苦しい言い訳をするセイラ。
すると途端にセザールは笑顔になる。
「本当ですか!? それなら安心しました。やはりセイラ様は僕の見立て通り、お優しい方だったのですね? ……ところでセイラ様。本日は何故わざわざ離宮に足を運ばれたのですか?」
「あ、そうだったわ! 今の話で思い出したわ」
セイラは鋭い目つきでサフィニアを見ると、ポケットから1通の手紙を取り出した。
「ほら、あんたに招待状が届いているわよ!」
「招待状……ですか?」
「ええ、そうよ! ほら、受け取りなさい! どうせまともに教育も受けていないだろうから、あんたの専属侍女にでも手紙を読んでもらえばいいでしょう!?」
嫌味をたっぷり含ませながらセイラはサフィニアに手紙を突き付けた。
「……ありがとうございます」
サフィニアは手紙を受け取ると、宛名を読んだ。
「リーネ・ウィルソン侯爵……?」
「そうよ。リーネ・ウィルソン侯爵……えぇ!? 何で文字が読めるのよ!」
すると今まで沈黙していたヘスティアが言った。
「サフィニア様は文字の読み書きが出来ますよ。今はこの国の歴史の本を読んでいらっしゃいます」
「何ですって!? 歴史を!?」
勉強が大嫌いなセイラは憎々し気にサフィニアを見つめた。
「ウィルソン侯爵家はとても名家ですね。確か再来週はリーネ侯爵令嬢の15歳の誕生パーティーが開催されることになっておりましたね。もしかして招待状でしょうか?」
セイラの注意を引くため、セザールが会話に入ってきた。
「え、ええ。そうよ。私と彼女は親友でね。つい最近腹違いの妹がいることを話したの。そうしたら、彼女が自分の誕生パーティーに招待したいと言ったのよ。盛大なダンスパーティーが開かれることになっているの。どう? 嬉しいでしょう? 貴族が集まるパーティーに参加できるのだから」
セイラは意地悪な笑みを浮かべる。
「ダンスもあるのですか……?」
サフィニアは小声で尋ねた。
「ええ、そうよ。楽しいパーティーになるはずよ。この私に感謝しなさい」
胸をそらせるセイラ。
(ふん、どうせあの娘にダンスが踊れるはずないわ。せいぜい思いっきり恥をかくがいいわ)
今からサフィニアの失態を考えてほくそ笑むセイラ。
その様子を少しの間、セザールは見守っていたが……。
「セイラ様、そろそろピアノのレッスンが始まる頃です。屋敷に戻りましょう」
「ええ、そうね。戻りましょう、行くわよ」
セイラは背後にいる侍女に声をかけると、セザールと一緒にリビングを出て行った。
セザールはリビングを出る直前、一瞬サフィニアに視線を向けて会釈した。
(セザール……!)
サフィニアとヘスティアは3人が去って行くのを無言で見届けるのだった――
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