孤独な公女~私は死んだことにしてください

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
76 / 233

4-2 リーネ侯爵令嬢の誕生パーティ 2

しおりを挟む
 馬車がウィルソン侯爵家に向かって走り出すと、早速ヘスティアが笑顔でセザールに話しかけた。

「セザール様。本日はお迎え、ありがとうございます」

「いいえ。当然のことですから、お礼など結構ですよ」

にこやかに返事をするセザール。

「でも私たちの迎えに来て大丈夫だったの?」

サフィニアは心配になって尋ねた。

「え? 何故そう思われるのですか?」

「だって、セザールはセイラ様の専属執事でしょう? それなのに……私たちの迎えに来ていいのかと思って……」

すると意外なセリフがセザールの口から出てきた。

「僕は別にセイラ様の専属執事というわけではありませんよ?」

「え!?」
「そうだったのですか?」

サフィニアとヘスティアが同時に驚く。

「はい、そうです。専属執事になれるのは成人年齢を迎えてからなのです。僕は現在17歳、まだ見習い執事のようなものなので専属執事にはなれない年齢なのです。ただセイラ様に何かと言いつけられる機会が多いのは確かです。ひょっとしてそれでアンジェリカ様は僕が専属執事だと勘違いされたのではありませんか?」

「そうだったの。知らなかったわ」

その話を聞いて、サフィニアはホッとした。

「侍女と執事とでは違うのですね」

専属侍女であるヘスティアが感心したように頷く。

「そうですね。執事は屋敷全体のことも管理しなければなりませんから。色々と学ぶべきことが多岐に渡っているんですよ」

「それではセイラ様は誰が付き添っているの?」

サフィニアは一番知りたかったことを尋ねた。

「セイラ様なら、双子の兄でいらっしゃるラファエル様が付き添ってらっしゃいますよ」

「え? ラファエル……様?」

サフィニアは、おぼろげな昔の記憶を思い出していた。4年前、初めてエストマン家の家族に会った時。
セイラとエストマン夫人はサフィニアに対して激怒していたが、ラファエルは感心すら抱いていない様子だった。

「セイラ様は双子だったのですか? 少しも知りませんでした。それでお2人は似てらっしゃいますか?」

双子と言うことに興味を持ったのか、ヘスティアが質問する。

「いえ、双子ではありますが……正直な話、僕としてはお2人は似ているとは思えません。言われなければ、誰も気づくことは無いでしょう。パーティー会場に行けば会えると思いますよ」

セザールはにこやかに答えるが、サフィニアは不安でならなかった。

(セザールはセイラ様のお気に入り。私がセザールに付き添ってもらって誕生パーティーに主席すればイヤな顔をされるに決まっているわ)

「どうかしましたか? サフィニア様、何やら浮かない顔をしておりますが? もしかして具合でも悪いのですか?」

セザールが声をかけてきたが、サフィニアは首を振った。

「いいえ、大丈夫よ。ただ、何だか意外に感じたの。まさかセイラ様がお兄様との付き添いを頼んだことが」

「いえ、セイラ様が頼んだわけではありません。ラファエル様の方から申し出たのですよ。ウィルソン侯爵令嬢の誕生パーティーに付き添いたいと」

「ラファエル様は妹思いの方なのですね」

ヘスティアが感心したように頷く。
でも、サフィニアにはそんなふうには思えなかった。

(そうかしら……? 4年前、初めて会ったときはそんなふうには見えなかったけど。でもあれから変わったのかもしれないし……)

「何故ラファエル様が付き添いを申し出たかは、パーティー会場に着けば分かると思いますよ?」

そしてセザールは意味深に笑みを浮かべるのだった――

しおりを挟む
感想 400

あなたにおすすめの小説

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

私達、婚約破棄しましょう

アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。 婚約者には愛する人がいる。 彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。 婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。 だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~

marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」 「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」 私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。 暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。 彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。 それなのに……。 やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。 ※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。 ※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。

処理中です...