1 / 221
1-1 出会い
しおりを挟む
9月1日―
良く晴れた青空の下で大きな門に囲まれた、まるでお城のような美しい建物の前で私は口をポカンと開けて立っていた。
「ここが明日から私が通う学園なのね…なんて綺麗な校舎なのかしら…」
この学園の名前は『リーガルスクール』
私は明日からこの学園で3年間寮生活を送りながら通う事になっている。
「宜しくお願いします」
ペコリと頭を下げると、意気揚々と大きなキャリーバッグを引っ張りながら私は門の中へと入って行った―。
****
この学園は中等学校、高等学校、そして大学が併設されている。遠方の地域からわざわざこの学園に入学して来る学生も多く、半数が寮生活をしている。かくいう私も明日の入学式に備えて、今日から『リーガルスクール』へとやって来たのだ。
『リーガルスクール』では【全ての学生は皆平等で、同じ教育を受ける権利がある】をモットーに掲げている為、上級貴族から下級貴族、そして平民までが通う事の出来る特殊な学園であった。その為、私もこの学園に通う事に決定したのだが…。
果たして本当に学生達は皆平等の立場に置かれていると言えるのだろうか?
何故ならこの学園には『階級』と呼ばれるものが存在しているからである。それが制服に現れていた。例えば王族や上級貴族…彼等や彼女たちの制服は真っ白と決められていた。下級貴族は紺色の制服、そして平民はグレーの制服と決められていたのだ。勿論私が今着ている制服は…当然グレーである。
「本当にこの学園は平等なのかしら…」
大きなキャリーバッグを引っ張りながら歩いていると、同じ新入生と見られる学生たちの姿がチラホラと見えて来た。入学前に事前に送られてきていた校舎の案内図が描かれた紙を見ながら私は女子寮を目指した。
「え~と…私達平民の学生達は西の建物だったわよね…」
私は案内図を見ながら歩いていた為、前方に人が立っている事に全く気が付いていなかった。
ドンッ!
突然衝撃を感じ、私はそこで初めて前方に人がいたことに気が付いた。
「何だよっ!痛ってーなっ!」
乱暴な男性の声で慌てて打ち付けてしまった鼻を押さえながら顔を上げると、そこには紺色の制服を着た学生が私を睨み付けながら立っていた。その学生の周りには他に2名の同じ紺色の制服を着た学生がいる。
「あ…すみませんっ!前方不注意で前に人がいる事に気付きませんでした!」
慌てて頭を下げると、頭上で鼻で笑う声が聞こえた。
「フンッ!何だ…平民の新入生かよ」
「平民のくせに貴族である俺達にぶつかって来るとは図々しい女だな」
「ああ、本当に平民のくせに学問を学ぼうなんて…生意気な奴らだ」
平民…確かに私の今の立場は平民に違いない。けれども…ここまで差別する事は無いのに。思わずじっと3人を見ると、ひとりの学生が睨み付けるように言った。
「何だ?その反抗的な目は…?」
「いえ、別に反抗するつもりは全くありません」
本心で言ったのに、彼等は信じてくれない。
「いいや、お前らは俺達を見てこう思っているんだろう?『中途半端な貴族』ってな」
「生意気だから、少し教育してやるか」
別の学生が突然私の腕を強く掴んできた。
「や…っ!い、痛い…離してっ!」
周囲には遠巻きにしている学生たちがいたけれども、全員私と同じグレーの制服を着ている。…しかし、それは当然だろう。何故ならこの場所は平民の学生たちが暮らす寮の敷地内なのだから。きっとこの3人は…そんな事はとっくに知っていて、わざといちゃもんをつける為にこの場所に来ていたのかもしれない。
「何だ?その口の利き方は…命令するんじゃねえよっ!ここは『離して』じゃなくて、『どうぞ離して下さい、お願いします』って頼むんだろう?」
「一発引っぱたいておくか」
別の学生が言う。
引っぱたく?!
そ、そんな…っ!
学生が手を振りあげたので、目をつぶった途端…。
「やめろっ!」
凛とした声が響き渡った。
え…?
思わず声の聞こえた方向に目をやると、そこには『上級貴族』の証である真っ白な制服を着た学生が立っていた。
「その女子生徒から手を離すんだ!」
その学生は怖気づく3人の学生達に厳しい口調で睨み付けた。
これが、私と彼…レナート・ブランシュとの初めての出会いだった―。
良く晴れた青空の下で大きな門に囲まれた、まるでお城のような美しい建物の前で私は口をポカンと開けて立っていた。
「ここが明日から私が通う学園なのね…なんて綺麗な校舎なのかしら…」
この学園の名前は『リーガルスクール』
私は明日からこの学園で3年間寮生活を送りながら通う事になっている。
「宜しくお願いします」
ペコリと頭を下げると、意気揚々と大きなキャリーバッグを引っ張りながら私は門の中へと入って行った―。
****
この学園は中等学校、高等学校、そして大学が併設されている。遠方の地域からわざわざこの学園に入学して来る学生も多く、半数が寮生活をしている。かくいう私も明日の入学式に備えて、今日から『リーガルスクール』へとやって来たのだ。
『リーガルスクール』では【全ての学生は皆平等で、同じ教育を受ける権利がある】をモットーに掲げている為、上級貴族から下級貴族、そして平民までが通う事の出来る特殊な学園であった。その為、私もこの学園に通う事に決定したのだが…。
果たして本当に学生達は皆平等の立場に置かれていると言えるのだろうか?
何故ならこの学園には『階級』と呼ばれるものが存在しているからである。それが制服に現れていた。例えば王族や上級貴族…彼等や彼女たちの制服は真っ白と決められていた。下級貴族は紺色の制服、そして平民はグレーの制服と決められていたのだ。勿論私が今着ている制服は…当然グレーである。
「本当にこの学園は平等なのかしら…」
大きなキャリーバッグを引っ張りながら歩いていると、同じ新入生と見られる学生たちの姿がチラホラと見えて来た。入学前に事前に送られてきていた校舎の案内図が描かれた紙を見ながら私は女子寮を目指した。
「え~と…私達平民の学生達は西の建物だったわよね…」
私は案内図を見ながら歩いていた為、前方に人が立っている事に全く気が付いていなかった。
ドンッ!
突然衝撃を感じ、私はそこで初めて前方に人がいたことに気が付いた。
「何だよっ!痛ってーなっ!」
乱暴な男性の声で慌てて打ち付けてしまった鼻を押さえながら顔を上げると、そこには紺色の制服を着た学生が私を睨み付けながら立っていた。その学生の周りには他に2名の同じ紺色の制服を着た学生がいる。
「あ…すみませんっ!前方不注意で前に人がいる事に気付きませんでした!」
慌てて頭を下げると、頭上で鼻で笑う声が聞こえた。
「フンッ!何だ…平民の新入生かよ」
「平民のくせに貴族である俺達にぶつかって来るとは図々しい女だな」
「ああ、本当に平民のくせに学問を学ぼうなんて…生意気な奴らだ」
平民…確かに私の今の立場は平民に違いない。けれども…ここまで差別する事は無いのに。思わずじっと3人を見ると、ひとりの学生が睨み付けるように言った。
「何だ?その反抗的な目は…?」
「いえ、別に反抗するつもりは全くありません」
本心で言ったのに、彼等は信じてくれない。
「いいや、お前らは俺達を見てこう思っているんだろう?『中途半端な貴族』ってな」
「生意気だから、少し教育してやるか」
別の学生が突然私の腕を強く掴んできた。
「や…っ!い、痛い…離してっ!」
周囲には遠巻きにしている学生たちがいたけれども、全員私と同じグレーの制服を着ている。…しかし、それは当然だろう。何故ならこの場所は平民の学生たちが暮らす寮の敷地内なのだから。きっとこの3人は…そんな事はとっくに知っていて、わざといちゃもんをつける為にこの場所に来ていたのかもしれない。
「何だ?その口の利き方は…命令するんじゃねえよっ!ここは『離して』じゃなくて、『どうぞ離して下さい、お願いします』って頼むんだろう?」
「一発引っぱたいておくか」
別の学生が言う。
引っぱたく?!
そ、そんな…っ!
学生が手を振りあげたので、目をつぶった途端…。
「やめろっ!」
凛とした声が響き渡った。
え…?
思わず声の聞こえた方向に目をやると、そこには『上級貴族』の証である真っ白な制服を着た学生が立っていた。
「その女子生徒から手を離すんだ!」
その学生は怖気づく3人の学生達に厳しい口調で睨み付けた。
これが、私と彼…レナート・ブランシュとの初めての出会いだった―。
3
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる