12 / 221
1−12 偶然の出来事
しおりを挟む
アニータ達と校舎の前で別れると、私は1人で寮に向けてうつむき加減にトボトボと歩き出した。…本当はお金ならある。あの人からの学生生活支援金も頂いているからだ。けれども私はそれを使いたくはなかった。それを使ってしまえば完全にあの人の思惑通りになってしまいそうな自分がいるから。節約して、なるべくお金を使わないように生活を切り詰め…卒業するときに、あの人にこう言うつもりだった。
「私は貴方の施しなど必要ありません」
そんな事を考えながら寮を目指して歩いていた。その時―。
「キャッ!」
突然誰かにぶつかってしまい、私は尻もちをついてしまった。角から突然現れた人物にぶつかってしまったのだ。すると頭上で声が聞こえた。
「ちょっと!何やってるのよ。無礼な女ねっ!」
「そうよ!フランシスカ様に謝りなさいよ!」
え…?フランシスカ様…?
見上げるとそこには2人の女子生徒を引き連れたフランシスカ様が私をじっと見下ろしていた。
「…」
「あ、あの…」
すると1人の女子生徒が言った。
「ほら、さっさと謝りなさいよ!平民のくせに侯爵令嬢であるフランシスカ様にぶつかるなんて無礼よ!」
「あ、は、はい!」
慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「申し訳ございませんでした」
「…」
しかし、フランシスカ様は無言で私を見ているだけである。
「あ、あの…。お怪我は…」
すると別の女子学生が言った。
「勝手に話しかけるんじゃないわよ!この方はあんたのような平民ごときが気安く口を聞けるような方ではないのよ!」
「は、はい!すみませんっ!」
彼女たちはフランシスカ様の付き人なのだろうか…。何だか少し怖い。すると今迄黙っていたフランシスカ様が突然口を開いた。
「あなた達は先に行って。彼女に用があるから」
「え…?」
「ですが…」
すると強い口調でフランシスカ様が言った。
「早く先に行きなさいって言ってるでしょう?」
「は、はい!」
「申し訳ございませんっ!」
2人の女子生徒は青ざめ、頭を下げると逃げるように走り去って行った。そして私はフランシスカ様と取り残されてしまう。どうしよう…何を言われてしまうのだろうか…?
「貴女…名前は?」
突如、声を掛けられた。
「は、はい!ロザリー・ダナンと申します…」
「そう、ロザリーね」
「はい…」
先程から心臓がドキドキして口から飛び出しそうだった。すると…。
「ごめんなさいね。余所見していたのは私の方だったのに。それに怪我してしまったわね。大丈夫?」
「あ…」
地面に手をついたときに、怪我をしてしまったのかもしれない。
「これくらい手を洗えば大丈夫ですから」
「そう?」
フランシスカ様が心配そうな顔をしている。
「…お優しいんですね」
気付けば言葉が出ていた。
「え?」
「あ!す、すみません。高貴な家柄の方が…こんな平民の私の擦り傷の心配をして下さって…自分でも怪我の事に気付かなかったのに」
「そ、そうかしら」
フランシスカ様は少しだけ顔を赤らめた。
「私はもう大丈夫ですから。どうぞもう行って下さい。私のような身分の者と一緒にいるとフランシスカ様の評判に傷をつけてしまうかもしれませんので」
すると怪訝そうな顔でフランシスカ様が尋ねてきた。
「貴女…新入生のようだけど…私の事知ってるの?」
「あ…はい。有名なお方ですから。それに私、ブランシュ様と同じクラスメイトなのです」
「!そう、レナートと…ということはイアソン王子とも同じクラスなのね?」
「は、はい。そうです」
そこで返事をして、気がついた。そうだ…たしかフランシスカ様はイアソン王子の事を…。
「そう、それじゃ私はそろそろ行くから。彼女たちは私の侍女なのよ。心配しているかもしれないし」
「え?あの方々は…侍女だったのですか?お友達ではなく?」
「ええ、そうよ。私には友達と呼べる人はいないから」
その顔は寂しげだった。
「あ、あの。私が…」
思わず言いかけて口を閉ざす。
「何?」
「い、いえ。何でもありません。侍女の方なら…心配されているかも知れないですね」
「ええ、そうね。それじゃ」
フランシスカ様は立ち去って行った。その後姿を見送る私。
「バカね、私ったら…」
失言しそうになった。
私なんかがフランシスカ様のお友達になど…なれるはずが無いのに―。
「私は貴方の施しなど必要ありません」
そんな事を考えながら寮を目指して歩いていた。その時―。
「キャッ!」
突然誰かにぶつかってしまい、私は尻もちをついてしまった。角から突然現れた人物にぶつかってしまったのだ。すると頭上で声が聞こえた。
「ちょっと!何やってるのよ。無礼な女ねっ!」
「そうよ!フランシスカ様に謝りなさいよ!」
え…?フランシスカ様…?
見上げるとそこには2人の女子生徒を引き連れたフランシスカ様が私をじっと見下ろしていた。
「…」
「あ、あの…」
すると1人の女子生徒が言った。
「ほら、さっさと謝りなさいよ!平民のくせに侯爵令嬢であるフランシスカ様にぶつかるなんて無礼よ!」
「あ、は、はい!」
慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「申し訳ございませんでした」
「…」
しかし、フランシスカ様は無言で私を見ているだけである。
「あ、あの…。お怪我は…」
すると別の女子学生が言った。
「勝手に話しかけるんじゃないわよ!この方はあんたのような平民ごときが気安く口を聞けるような方ではないのよ!」
「は、はい!すみませんっ!」
彼女たちはフランシスカ様の付き人なのだろうか…。何だか少し怖い。すると今迄黙っていたフランシスカ様が突然口を開いた。
「あなた達は先に行って。彼女に用があるから」
「え…?」
「ですが…」
すると強い口調でフランシスカ様が言った。
「早く先に行きなさいって言ってるでしょう?」
「は、はい!」
「申し訳ございませんっ!」
2人の女子生徒は青ざめ、頭を下げると逃げるように走り去って行った。そして私はフランシスカ様と取り残されてしまう。どうしよう…何を言われてしまうのだろうか…?
「貴女…名前は?」
突如、声を掛けられた。
「は、はい!ロザリー・ダナンと申します…」
「そう、ロザリーね」
「はい…」
先程から心臓がドキドキして口から飛び出しそうだった。すると…。
「ごめんなさいね。余所見していたのは私の方だったのに。それに怪我してしまったわね。大丈夫?」
「あ…」
地面に手をついたときに、怪我をしてしまったのかもしれない。
「これくらい手を洗えば大丈夫ですから」
「そう?」
フランシスカ様が心配そうな顔をしている。
「…お優しいんですね」
気付けば言葉が出ていた。
「え?」
「あ!す、すみません。高貴な家柄の方が…こんな平民の私の擦り傷の心配をして下さって…自分でも怪我の事に気付かなかったのに」
「そ、そうかしら」
フランシスカ様は少しだけ顔を赤らめた。
「私はもう大丈夫ですから。どうぞもう行って下さい。私のような身分の者と一緒にいるとフランシスカ様の評判に傷をつけてしまうかもしれませんので」
すると怪訝そうな顔でフランシスカ様が尋ねてきた。
「貴女…新入生のようだけど…私の事知ってるの?」
「あ…はい。有名なお方ですから。それに私、ブランシュ様と同じクラスメイトなのです」
「!そう、レナートと…ということはイアソン王子とも同じクラスなのね?」
「は、はい。そうです」
そこで返事をして、気がついた。そうだ…たしかフランシスカ様はイアソン王子の事を…。
「そう、それじゃ私はそろそろ行くから。彼女たちは私の侍女なのよ。心配しているかもしれないし」
「え?あの方々は…侍女だったのですか?お友達ではなく?」
「ええ、そうよ。私には友達と呼べる人はいないから」
その顔は寂しげだった。
「あ、あの。私が…」
思わず言いかけて口を閉ざす。
「何?」
「い、いえ。何でもありません。侍女の方なら…心配されているかも知れないですね」
「ええ、そうね。それじゃ」
フランシスカ様は立ち去って行った。その後姿を見送る私。
「バカね、私ったら…」
失言しそうになった。
私なんかがフランシスカ様のお友達になど…なれるはずが無いのに―。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる