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3-22 三日月と涙
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「どう?ロザリー。ここのスイーツ、美味しいでしょう?」
アニータがケーキを食べている私に尋ねてきた。
「ええ。とても美味しいわ」
「それは良かったわね」
「ここのスイーツはどれも絶品だもの」
サニーとアリエルが飲み物を飲みながら言う。
今私はアニータ達と共にスイーツショップに来ていた。ここのスイーツは高いだけあって、その味は絶品だった。今私が食べているケーキは『シフォンケーキ』。このお店では一番安い品だった。一緒に飲んでいるお茶も普通の紅茶で、友人たちの注文したメニューより500ダルクは安い。
友人達は私が自分たちよりも明らかに安いメニューを選んで注文している事に気づいていない。恐らく、それが好きなのだろうと思われている。彼女たちは全員お金持ちなので、金銭面に掛けてはおおらかなのだ。なので変に勘ぐられるよりはずっとマシだった。
彼女たちの話はもっぱら今度の週末の話で盛り上がっていた。
「ねぇ、また週末が来るわよね」
サニーが興奮気味に言う。
「ええ。今週は3連休だから嬉しいわ」
アニータがシナモンティーを飲みながら笑みを浮かべた。
「ねぇ。ロザリーは今週も里帰りしないの?」
ナタリーが不意に話を振ってきた。
「ええ、そうなの。私の実家はとても遠いから帰るのが億劫で」
本当は無理をすれば帰れない事も無かった。しかし、旅費がとんでもなくかかってしまう。実家に里帰りしたい気持ちは山々だったがお金を工面する事も出来ない。それならアルバイトをしてお金を貯めた方がずっとマシだった。
「そう…遠すぎるなら仕方ないわよね。元気だして?長期休暇の時に実家に戻ればいいわよ」
「ええ、そうね」
アニータの言葉に私は頷いた―。
****
夜―
アニータが寝た頃に私は実家に手紙を書いていた。今週も実家には帰らない事。アルバイト先が決まった事。そして…あの方が学園にやってきた事…。その事を書こうとしただけで手が震えてしまう。…本当にこの学園に来るまで、私は自分が愚かな幻想を抱いていたことをまざまざと見せつけられた。あの方がそんなに甘いはずはなかったのに…。
「やっぱり…もう諦めるしか無いのね…」
私はため息をついた。その時、イアソン王子が私に掛けた言葉が蘇る。
『何か困ったことがあれば相談に乗るよ』
だけどやはりイアソン王子はどこか信用出来ない。レナート様だったら…?
でもそこで首を振った。
レナート様には相談など出来るはずがない。あの方が感心を示すのはフレデリカ様だけなのだから。逆に相談をしても迷惑に思われるだけに決まっている…。
手紙を封筒にしまい、封をすると窓の外を眺めた。夜空には大きな三日月が浮かんでいる。
「…何もかも…捨てて逃げられればいいのに…」
だけど私にはそれが出来ない。何故なら家族を人質に取られているようなものだから。私が逃げたら…きっとあの方はきっと容赦しないだろう。
「レナート様…」
私は好きな人の名をポツリと呟き…少しだけ泣いた―。
アニータがケーキを食べている私に尋ねてきた。
「ええ。とても美味しいわ」
「それは良かったわね」
「ここのスイーツはどれも絶品だもの」
サニーとアリエルが飲み物を飲みながら言う。
今私はアニータ達と共にスイーツショップに来ていた。ここのスイーツは高いだけあって、その味は絶品だった。今私が食べているケーキは『シフォンケーキ』。このお店では一番安い品だった。一緒に飲んでいるお茶も普通の紅茶で、友人たちの注文したメニューより500ダルクは安い。
友人達は私が自分たちよりも明らかに安いメニューを選んで注文している事に気づいていない。恐らく、それが好きなのだろうと思われている。彼女たちは全員お金持ちなので、金銭面に掛けてはおおらかなのだ。なので変に勘ぐられるよりはずっとマシだった。
彼女たちの話はもっぱら今度の週末の話で盛り上がっていた。
「ねぇ、また週末が来るわよね」
サニーが興奮気味に言う。
「ええ。今週は3連休だから嬉しいわ」
アニータがシナモンティーを飲みながら笑みを浮かべた。
「ねぇ。ロザリーは今週も里帰りしないの?」
ナタリーが不意に話を振ってきた。
「ええ、そうなの。私の実家はとても遠いから帰るのが億劫で」
本当は無理をすれば帰れない事も無かった。しかし、旅費がとんでもなくかかってしまう。実家に里帰りしたい気持ちは山々だったがお金を工面する事も出来ない。それならアルバイトをしてお金を貯めた方がずっとマシだった。
「そう…遠すぎるなら仕方ないわよね。元気だして?長期休暇の時に実家に戻ればいいわよ」
「ええ、そうね」
アニータの言葉に私は頷いた―。
****
夜―
アニータが寝た頃に私は実家に手紙を書いていた。今週も実家には帰らない事。アルバイト先が決まった事。そして…あの方が学園にやってきた事…。その事を書こうとしただけで手が震えてしまう。…本当にこの学園に来るまで、私は自分が愚かな幻想を抱いていたことをまざまざと見せつけられた。あの方がそんなに甘いはずはなかったのに…。
「やっぱり…もう諦めるしか無いのね…」
私はため息をついた。その時、イアソン王子が私に掛けた言葉が蘇る。
『何か困ったことがあれば相談に乗るよ』
だけどやはりイアソン王子はどこか信用出来ない。レナート様だったら…?
でもそこで首を振った。
レナート様には相談など出来るはずがない。あの方が感心を示すのはフレデリカ様だけなのだから。逆に相談をしても迷惑に思われるだけに決まっている…。
手紙を封筒にしまい、封をすると窓の外を眺めた。夜空には大きな三日月が浮かんでいる。
「…何もかも…捨てて逃げられればいいのに…」
だけど私にはそれが出来ない。何故なら家族を人質に取られているようなものだから。私が逃げたら…きっとあの方はきっと容赦しないだろう。
「レナート様…」
私は好きな人の名をポツリと呟き…少しだけ泣いた―。
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