私の初恋の男性が、婚約者に今にも捨てられてしまいそうです

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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4−7 現れない人

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 今日は初日だと言う事で午前中は裏方の仕事をやった。切り花の鮮度を保つために茎を切ったり、切り花の水やり、バケツの水替え。傷んだ葉や花を取り除く作業等…私は一生懸命働いた。
お昼休憩は1時間取らせて貰って、近くのパン屋さんで買ってきたパンと牛乳で食事を取った。そして午後はカトリーヌさんの側で接客業を学びながら働き…あっという間にアルバイトの終了時間になった―。


****


17時―

「お疲れ様、ロザリー。今日の貴女の仕事は終わりよ」

花の茎をハサミで切っている時にカトリーヌさんが声を掛けてきた。

「あ、もうそんな時間だったのですか?何だかあっという間に感じました」

「ええ、そうよ。今日はよく働いたから疲れたでしょう?ゆっくり休むといいわ」

カトリーヌさんが笑顔で言う。

「はい、それではまた明日宜しくお願いします」

エプロンを外すとカトリーヌさんに頭を下げ、帰り支度を始めた。




「すみません、それでは帰りますね」

お店に出ていたカトリーヌさんに声を掛けると呼び止められた。

「待って、ロザリー」

「はい?」

「手を出してくれる?」

「は、はい」

右手を出すと、カトリーヌさんが小さな包み紙を置いた。

「どうぞ」

「え?これは…何ですか?」

「キャンディーよ。疲れたときには甘いものが一番よ」

「ありがとうございます」

私はキャンディーを握りしめると笑顔で頭を下げた。



 花屋を出ると、早速包み紙を広げてキャンディーを取り出して口に入れた。途端に甘い味が口の中に広がる。

「フフ…美味しい」

本当に甘いものを口に入れると何だか幸せな気持ちになれる。

そして寮目指して歩き始めた―。


 
****

 寮に到着したのは17時20分だった。昨夜あんな事さえなければ17時半に寮のベンチでレナート様と待ち合わせだったのだけれど…。

「きっとレナート様は来ないかもしれないわよね…」

だけど、もし来ていたらレナート様をお待たせしてしまうことになる…。

そうだ。
ひょっとするとレナート様は来られるかもしれないから…やっぱり待ち合わせした場所で待っていよう。

そして私は昨日レナート様と待ち合わせをしたベンチへと向かった―。



待ち合わせ場所のベンチに座り、私はレナート様を待った。

しかし、オレンジ色の空がだんだん暗くなってきても一向にレナート様は現れない。
やっぱりこないのだろうか?

でも、もう少し…

後少しだけ…。

けれど、ついにあたりがすっかり暗くなり、星が輝き始める頃になってもレナート様は現れなかった。

「そうよね…。私はレナート様を怒らせてしまったのだから…来るはずないわ…」

ノロノロとベンチから立ち上がり、私は自分の寮へと足を向けた。



「え…?」

 女子寮が見えかけてきた時、前方から2人の人影が此方に向かって歩いてくる姿を発見し…私は驚きの余り、足を止めてしまった。何故なら2人の人影はレナート様とフランシスカさまだったのだ。
レナート様はにこやかにフランシスカ様に話しかけているが、フランシスカ様の態度は相変わらずだった。
けれど、はっきりしていることがある。

それはレナート様とフランシスカ様は今日、2人で出掛けてきたということが。

その時―

「あら…?そこにいるにはロザリーじゃないの?」

フランシスカ様が私に気付いて声を掛けてきた―。




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