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5-7 手助け
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台車を引いて10分程歩いていた時―。
ガツンッ!
車輪から大きな音が聞こえ、全く台車が動かなくなってしまった。
「え?」
慌てて持ち手を引っ張ってみてもびくともしない。
「どうして動かないのかしら…?」
持ちてから手を離して、車輪の方に回ってみると、左後輪部分が溝に完全にはまってしまっていた。
「これが原因だったのね」
溝から車輪を外すために台車を持ち上げようとしても、びくともしない。どんなに頑張って持ち上げようとしても私の力では上げることが出来なかった。
「そんな…ユーグ様がお待ちなのに…」
誰か手伝ってくれないだろうか?辺りをキョロキョロ見渡しても、誰もが知らんふりをして通り過ぎている。でもそれは仕方無かったかもしれない。私がいる通りは高級レストランやホテル、ブランド店が軒を連ねている大通りで、私の様な貧しい身なりの人間は誰もいなかった。その証拠に彼らは冷たい瞳で私を見ながら通り過ぎていく。まるで貧乏人はここから出ていけと言われているようだった。
「どうしたらいいの…?」
台車を置いて花束を抱えてホテルまで迎えばいいだろうけど、台車を置いたまま去ることは出来なかった。この台車はお店の大切な備品だったし、こんな所に台車を置き去りにすれば、誰かに通報されて罰を受けるかもしれない。
何としても台車を置いていくわけにはいかなかった。
「何としても引き抜かなくちゃ…」
そして再度台車を持ち上げようとした時―。
「僕が抜くよ」
背後から突然声を掛けられた。
「え?」
その声に振り向き、驚いた。何とそこに立っていたのはレナート様だったのだ。
「あ…レ…」
言いかけて私は口を閉ざした。きっとレナート様は私に名前も呼んで貰いたくも無いはずだから。
レナート様は台車の車輪を掴むと勢いよく上に持ち上げた。
ズッ!
大きな音と共に、車輪が溝から外れた。
「もう大丈夫だよ」
レナート様が私に言った。
「はい…どうもありがとうございます。お手を汚してしまい、申し訳ございませんでした」
私は視線を合わすこと無く、うつむき加減に礼を述べて頭を下げた。
「いいよ、困っている人を助けるのは当然だから」
「…感謝申し上げます。それでは…」
そして台車の持ち手を握りしめ、再び歩き始めた時…。
「そんなに大きな花束を持って何処へ行くんだい?」
レナート様が声を掛けてきた。
「お客様のご依頼で滞在先のホテルにお花を届けに行くのです」
「…そうなんだ。それでさ…」
尚も声を掛けてくるレナート様に私は言った。
「申し訳ございません…大切なお客様なので早目にお花を持っていかなければならないのです。失礼致します」
ユーグ様もいらしているのだから、尚更私はレナート様に関わるわけにはいかなかった。
私はレナート様から逃げるように急ぎ足で台車を引いてその場を立ち去った―。
ガツンッ!
車輪から大きな音が聞こえ、全く台車が動かなくなってしまった。
「え?」
慌てて持ち手を引っ張ってみてもびくともしない。
「どうして動かないのかしら…?」
持ちてから手を離して、車輪の方に回ってみると、左後輪部分が溝に完全にはまってしまっていた。
「これが原因だったのね」
溝から車輪を外すために台車を持ち上げようとしても、びくともしない。どんなに頑張って持ち上げようとしても私の力では上げることが出来なかった。
「そんな…ユーグ様がお待ちなのに…」
誰か手伝ってくれないだろうか?辺りをキョロキョロ見渡しても、誰もが知らんふりをして通り過ぎている。でもそれは仕方無かったかもしれない。私がいる通りは高級レストランやホテル、ブランド店が軒を連ねている大通りで、私の様な貧しい身なりの人間は誰もいなかった。その証拠に彼らは冷たい瞳で私を見ながら通り過ぎていく。まるで貧乏人はここから出ていけと言われているようだった。
「どうしたらいいの…?」
台車を置いて花束を抱えてホテルまで迎えばいいだろうけど、台車を置いたまま去ることは出来なかった。この台車はお店の大切な備品だったし、こんな所に台車を置き去りにすれば、誰かに通報されて罰を受けるかもしれない。
何としても台車を置いていくわけにはいかなかった。
「何としても引き抜かなくちゃ…」
そして再度台車を持ち上げようとした時―。
「僕が抜くよ」
背後から突然声を掛けられた。
「え?」
その声に振り向き、驚いた。何とそこに立っていたのはレナート様だったのだ。
「あ…レ…」
言いかけて私は口を閉ざした。きっとレナート様は私に名前も呼んで貰いたくも無いはずだから。
レナート様は台車の車輪を掴むと勢いよく上に持ち上げた。
ズッ!
大きな音と共に、車輪が溝から外れた。
「もう大丈夫だよ」
レナート様が私に言った。
「はい…どうもありがとうございます。お手を汚してしまい、申し訳ございませんでした」
私は視線を合わすこと無く、うつむき加減に礼を述べて頭を下げた。
「いいよ、困っている人を助けるのは当然だから」
「…感謝申し上げます。それでは…」
そして台車の持ち手を握りしめ、再び歩き始めた時…。
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「…そうなんだ。それでさ…」
尚も声を掛けてくるレナート様に私は言った。
「申し訳ございません…大切なお客様なので早目にお花を持っていかなければならないのです。失礼致します」
ユーグ様もいらしているのだから、尚更私はレナート様に関わるわけにはいかなかった。
私はレナート様から逃げるように急ぎ足で台車を引いてその場を立ち去った―。
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