80 / 221
5-9 鉢合わせ
「あの…私はお花を届けに伺っただけで…今、アルバイト中です。なのでもう帰らなければならないのですが…」
「10分位なら構わないだろう?それとも馬車を外で待たせているのか?」
「いいえ。歩いてここまで来ました」
私の言葉に驚いたのかユーグ様は目を見開いた。
「何と?ここまで歩いて来たのか?そんなに大量の花束を抱えて?」
「いえ。お花は台車に乗せて運んできました」
「ひょっとしてそなたは台車を引いてここまで歩いて来たのかね?」
「はい…そうです」
するとユーグ様は大きな溜息をついた。
「何と言う事だ…。そのような貧しい身なりをしてアルバイトをするだけでなく、台車を引いてここまで歩いて来たとは…」
「はい」
「何度も話したであろう?ロザリー。そなたはこのような過酷な環境に置かれるような身分では無いと言う事を。何故私からの援助を受けないのだね?」
「援助なら受けております。学費を全て払って頂いておりますから。ですがそれ以外は…自分で何とか工面します」
だって…これ以上貸を作りたくは無かったからだ。
「そんな強情を張らずとも素直になれば良いのに…。まぁ、そういうところも可愛らしいがな」
その言葉に背筋がゾクリとする。
「まぁ…引き留めてアルバイト先の人物に迷惑をかけるわけにもいかないからな。だが、帰りは馬車を使う様に。お金ならこちらから支払おう」
「い、いえ!大丈夫です。歩いて帰れますから」
「しかし、雇い主側からすれば早く帰って来てもらった方が助かるのではないかな?」
「そ、それは…」
確かにユーグ様の仰る通りだ。私は先週ただでさえ、風邪をひいてアルバイトをお休みしている。迷惑をかける訳にはいかない。
「はい…。分りました」
頷くとユーグ様が立ち上がった。
「それでは私も出口まで見送ろう」
「…ありがとうございます…」
ユーグ様が先に立ち、扉を開けるとそこにはノーラさんが立っていた。
「彼女を花屋まで送り届けて、お金を支払ってくれ」
「はい、承知致しました」
頭を下げるノーラさん。
「よし、それでは参ろうか?」
「はい」
そして私達は部屋を出た―。
****
ホテルのフロントまで3人で出てきた時、突然私は声を掛けられた。
「ロザリー」
振り向き、私は驚いた。何と、そこにレナート様が立っていたからだ。
「え…?な、なぜここに…?」
私は自分の目を疑った。まさか…ここまで私の後をつけてきたのだろうか?
「誰かね?彼は」
ユーグ様の目が光った。
「あ…あの方は…」
途惑っていると、レナート様はこちらへ近づいてい来ると口を開いた。
「始めまして。僕はレナート・ブランシュと申します。こちらにいるロザリーとは同じクラスメイトです。大層ご立派な方とお見受け致しましたが、失礼ですが…一体どのようなご関係でしょうか?」
するとユーグ様は少し考えた素振りを見せた。
「レナート・ブランシュ?ブランシュ…ああ、ひょっとすると公爵家のかね?」
「僕の事を御存じの様ですね?」
「あの、この方はお花屋さんのお客様なのです。お届けに上がったところ、帰りは送って下さるそうなのでついて来て頂いただけです」
この2人が顔を合わせるのはまずい…何故か私はそう感じた。それに私はレナート様に嫌われている。ユーグ様が私の学費を出していることが知られれば、ますます軽蔑されてしまいそうだ。思わず身体が震えた。
「…」
そんな様子の私をユーグ様は黙って見下ろしていたけれども、レナート様に向き直った。
「君は一体ロザリーに何をしたのだね?」
ユーグ様は冷たい声でレナート様に尋ねた―。
「10分位なら構わないだろう?それとも馬車を外で待たせているのか?」
「いいえ。歩いてここまで来ました」
私の言葉に驚いたのかユーグ様は目を見開いた。
「何と?ここまで歩いて来たのか?そんなに大量の花束を抱えて?」
「いえ。お花は台車に乗せて運んできました」
「ひょっとしてそなたは台車を引いてここまで歩いて来たのかね?」
「はい…そうです」
するとユーグ様は大きな溜息をついた。
「何と言う事だ…。そのような貧しい身なりをしてアルバイトをするだけでなく、台車を引いてここまで歩いて来たとは…」
「はい」
「何度も話したであろう?ロザリー。そなたはこのような過酷な環境に置かれるような身分では無いと言う事を。何故私からの援助を受けないのだね?」
「援助なら受けております。学費を全て払って頂いておりますから。ですがそれ以外は…自分で何とか工面します」
だって…これ以上貸を作りたくは無かったからだ。
「そんな強情を張らずとも素直になれば良いのに…。まぁ、そういうところも可愛らしいがな」
その言葉に背筋がゾクリとする。
「まぁ…引き留めてアルバイト先の人物に迷惑をかけるわけにもいかないからな。だが、帰りは馬車を使う様に。お金ならこちらから支払おう」
「い、いえ!大丈夫です。歩いて帰れますから」
「しかし、雇い主側からすれば早く帰って来てもらった方が助かるのではないかな?」
「そ、それは…」
確かにユーグ様の仰る通りだ。私は先週ただでさえ、風邪をひいてアルバイトをお休みしている。迷惑をかける訳にはいかない。
「はい…。分りました」
頷くとユーグ様が立ち上がった。
「それでは私も出口まで見送ろう」
「…ありがとうございます…」
ユーグ様が先に立ち、扉を開けるとそこにはノーラさんが立っていた。
「彼女を花屋まで送り届けて、お金を支払ってくれ」
「はい、承知致しました」
頭を下げるノーラさん。
「よし、それでは参ろうか?」
「はい」
そして私達は部屋を出た―。
****
ホテルのフロントまで3人で出てきた時、突然私は声を掛けられた。
「ロザリー」
振り向き、私は驚いた。何と、そこにレナート様が立っていたからだ。
「え…?な、なぜここに…?」
私は自分の目を疑った。まさか…ここまで私の後をつけてきたのだろうか?
「誰かね?彼は」
ユーグ様の目が光った。
「あ…あの方は…」
途惑っていると、レナート様はこちらへ近づいてい来ると口を開いた。
「始めまして。僕はレナート・ブランシュと申します。こちらにいるロザリーとは同じクラスメイトです。大層ご立派な方とお見受け致しましたが、失礼ですが…一体どのようなご関係でしょうか?」
するとユーグ様は少し考えた素振りを見せた。
「レナート・ブランシュ?ブランシュ…ああ、ひょっとすると公爵家のかね?」
「僕の事を御存じの様ですね?」
「あの、この方はお花屋さんのお客様なのです。お届けに上がったところ、帰りは送って下さるそうなのでついて来て頂いただけです」
この2人が顔を合わせるのはまずい…何故か私はそう感じた。それに私はレナート様に嫌われている。ユーグ様が私の学費を出していることが知られれば、ますます軽蔑されてしまいそうだ。思わず身体が震えた。
「…」
そんな様子の私をユーグ様は黙って見下ろしていたけれども、レナート様に向き直った。
「君は一体ロザリーに何をしたのだね?」
ユーグ様は冷たい声でレナート様に尋ねた―。
あなたにおすすめの小説
王太子様お願いです。今はただの毒草オタク、過去の私は忘れて下さい
シンさん
恋愛
ミリオン侯爵の娘エリザベスには秘密がある。それは本当の侯爵令嬢ではないという事。
お花や薬草を売って生活していた、貧困階級の私を子供のいない侯爵が養子に迎えてくれた。
ずっと毒草と共に目立たず生きていくはずが、王太子の婚約者候補に…。
雑草メンタルの毒草オタク侯爵令嬢と
王太子の恋愛ストーリー
☆ストーリーに必要な部分で、残酷に感じる方もいるかと思います。ご注意下さい。
☆毒草名は作者が勝手につけたものです。
表紙 Bee様に描いていただきました
白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。
けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。
それでも旦那様は優しかった。
冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。
だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。
そんなある日、彼女は知ってしまう。
旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。
彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。
都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る
静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。
すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。
感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
【完】私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした
迦陵 れん
恋愛
「俺は君を愛さない。この結婚は政略結婚という名の契約結婚だ」
結婚式後の初夜のベッドで、私の夫となった彼は、開口一番そう告げた。
彼は元々の婚約者であった私の姉、アンジェラを誰よりも愛していたのに、私の姉はそうではなかった……。
見た目、性格、頭脳、運動神経とすべてが完璧なヘマタイト公爵令息に、グラディスは一目惚れをする。
けれど彼は大好きな姉の婚約者であり、容姿からなにから全て姉に敵わないグラディスは、瞬時に恋心を封印した。
筈だったのに、姉がいなくなったせいで彼の新しい婚約者になってしまい──。
人生イージーモードで生きてきた公爵令息が、初めての挫折を経験し、動く人形のようになってしまう。
彼のことが大好きな主人公は、冷たくされても彼一筋で思い続ける。
たとえ彼に好かれなくてもいい。
私は彼が好きだから!
大好きな人と幸せになるべく、メイドと二人三脚で頑張る健気令嬢のお話です。
ざまあされるような悪人は出ないので、ざまあはないです。
と思ったら、微ざまぁありになりました(汗)
旦那様、本当によろしいのですか?【完結】
翔千
恋愛
ロロビア王国、アークライド公爵家の娘ロザリア・ミラ・アークライドは夫のファーガスと結婚し、順風満帆の結婚生活・・・・・とは言い難い生活を送って来た。
なかなか子供を授かれず、夫はいつしかロザリアにに無関心なり、義母には子供が授からないことを責められていた。
そんな毎日をロザリアは笑顔で受け流していた。そんな、ある日、
「今日から愛しのサンドラがこの屋敷に住むから、お前は出て行け」
突然夫にそう告げられた。
夫の隣には豊満ボディの美人さんと嘲るように笑う義母。
理由も理不尽。だが、ロザリアは、
「旦那様、本当によろしいのですか?」
そういつもの微笑みを浮かべていた。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話