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5-18 分不相応な私
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「まぁ、よくお似合いですわ」
店員さんは私を鏡の前に立たせると満足げに頷いた。私が着ているのは薄水色のくるぶし丈までのワンピースドレス。ティアードスカートにはフリルがたっぷりあしらわれ、袖部分は高級そうなレースで作られている。こんなドレスを着るのは生まれて初めてだった。
「貴女は知らないでしょうけど、このワンピースドレスは最近貴族令嬢の間で大人気のドレスなのよ?しかもとても高級だから一部の御令嬢の方々しか購入する事が出来ないと言われているの。貴女はその容姿を使って、うまい事貴族に取り入ったのね」
「え?」
あまりの物言いに驚いて鏡に映る店員さんを見ると、彼女の口元は笑みを浮かべていたけれど…目には怒りが込められていた。…この女性は恐らく私に嫉妬しているのだ。貧しい平民のくせにこんな高級なドレスを買って貰えるなんて…と言わんばかりの眼つきだった。
するとその直後…。
「何ですか?ここの店員は…客に対してそんな物言いをするなんて…とんでもないお店ですわね?」
背後で声が聞こえ、鏡の中にノーラさんが映った。
「あっ!」
途端に女性店員は驚いて振り向くと、必死になってノーラさんに頭を下げて来た。
「も、申し訳ございませんっ!決してそのようなつもりでは…!」
「ならどういうつもりで言ったのでしょうか?説明して頂けませんか?」
「そ、それは…!」
言葉に詰まる彼女にノーラさんは冷たい目を向けた。
「言い訳する事も出来ないでしょう?貴女は始めからこのお方の身なりだけで下に見ていたのは知っています。この方がどのような立場の人かも知らずに…もう時間が無いので、今日のところはこの店で商品を買わせて頂きますが…今回の事は大公殿下に話しておきます」
「そ、そんなっ!そのような事をされれば、この店は…!」
しかし、ノーラさんは耳を貸さずに小切手を切って渡すと言った。
「人を見た目で判断するような人間はこの店には必要ないようですね」
「!」
その言葉に真っ青になって女性店員は震え出した。
「では、参りましょう?ロザリー様」
「は、はい…」
そして私はノーラさんに連れられて店を出た―。
****
揺れる馬車の中でノーラさんが声を掛けて来た。
「あの店、店員の品位は最低でしたが、ドレスを選ぶ目は確かだったようですね。とても良くお似合いですよ?」
ノーラさんは私を見てニッコリと笑みを浮かべる。
「ありがとうございます…このように高級なドレスを買って頂いて。本当に私には分不相応です」
「何を言っておられるのです?ロザリー様は将来ユーグ家に入られるお方なのですから当然の事です」
「はい…」
私は力なく返事をした。そんな私にノーラさんが声を掛けて来た。
「ユーグ様とはレストランで待ち合わせになっております。今日はどうぞお楽しみくださいね」
「はい、ありがとうございます」
とても楽しめるとは思えなかったが、私は返事をした―。
店員さんは私を鏡の前に立たせると満足げに頷いた。私が着ているのは薄水色のくるぶし丈までのワンピースドレス。ティアードスカートにはフリルがたっぷりあしらわれ、袖部分は高級そうなレースで作られている。こんなドレスを着るのは生まれて初めてだった。
「貴女は知らないでしょうけど、このワンピースドレスは最近貴族令嬢の間で大人気のドレスなのよ?しかもとても高級だから一部の御令嬢の方々しか購入する事が出来ないと言われているの。貴女はその容姿を使って、うまい事貴族に取り入ったのね」
「え?」
あまりの物言いに驚いて鏡に映る店員さんを見ると、彼女の口元は笑みを浮かべていたけれど…目には怒りが込められていた。…この女性は恐らく私に嫉妬しているのだ。貧しい平民のくせにこんな高級なドレスを買って貰えるなんて…と言わんばかりの眼つきだった。
するとその直後…。
「何ですか?ここの店員は…客に対してそんな物言いをするなんて…とんでもないお店ですわね?」
背後で声が聞こえ、鏡の中にノーラさんが映った。
「あっ!」
途端に女性店員は驚いて振り向くと、必死になってノーラさんに頭を下げて来た。
「も、申し訳ございませんっ!決してそのようなつもりでは…!」
「ならどういうつもりで言ったのでしょうか?説明して頂けませんか?」
「そ、それは…!」
言葉に詰まる彼女にノーラさんは冷たい目を向けた。
「言い訳する事も出来ないでしょう?貴女は始めからこのお方の身なりだけで下に見ていたのは知っています。この方がどのような立場の人かも知らずに…もう時間が無いので、今日のところはこの店で商品を買わせて頂きますが…今回の事は大公殿下に話しておきます」
「そ、そんなっ!そのような事をされれば、この店は…!」
しかし、ノーラさんは耳を貸さずに小切手を切って渡すと言った。
「人を見た目で判断するような人間はこの店には必要ないようですね」
「!」
その言葉に真っ青になって女性店員は震え出した。
「では、参りましょう?ロザリー様」
「は、はい…」
そして私はノーラさんに連れられて店を出た―。
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揺れる馬車の中でノーラさんが声を掛けて来た。
「あの店、店員の品位は最低でしたが、ドレスを選ぶ目は確かだったようですね。とても良くお似合いですよ?」
ノーラさんは私を見てニッコリと笑みを浮かべる。
「ありがとうございます…このように高級なドレスを買って頂いて。本当に私には分不相応です」
「何を言っておられるのです?ロザリー様は将来ユーグ家に入られるお方なのですから当然の事です」
「はい…」
私は力なく返事をした。そんな私にノーラさんが声を掛けて来た。
「ユーグ様とはレストランで待ち合わせになっております。今日はどうぞお楽しみくださいね」
「はい、ありがとうございます」
とても楽しめるとは思えなかったが、私は返事をした―。
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