私の初恋の男性が、婚約者に今にも捨てられてしまいそうです

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
145 / 221

8-19 アンドレアさんの機転

しおりを挟む
「そ、それは…」

どうしてイアソン王子は人目も憚らず、私の事を平気で人前で話すのだろう?私は誰にも自分の出自を知られたくはないのに…。
きっと私が答えるまでアンドレアさんは尋ねて来るのだろう…。

しかし…。

「…やっぱりやめておくよ」

アンドレアさんが肩をすくめた。

「ええっ?!何故?私は聞きたいわっ!」

ミレーユさんが口を尖らせる。

「駄目だ、ミレーユ。誰にだって人には知られたくないことの1つや2つあるだろう?」

アンドレアさんはミレーユさんに言い聞かせた。

「でも…」

「ミレーユ」

アンドレアさんがミレーユさんを見る。

「…分かったわよ。聞かないでおくわよ」

ミレーユさんは背もたれにより掛かると私を見た。

「イアソン王子もあまり人の秘密を暴露するような発言は控えたほうがいいですよ?ロザリーが困っているじゃありませんか」

アンドレアさんがイアソン王子を諌めている。

「…確かにそうだったかもしれない…すまなかった、ロザリー。誰にだって触れてもらいたくないことの1つや2つ…あるものな」

そしてイアソン王子が私に頭を下げてきた。

「イアソン王子…」

「よし、それじゃイアソン王子。これから俺達と一緒に出掛けませんか?ミレーユと美術館に行く予定だったんですよ。確かイアソン王子は絵画に興味がありましたよね?」

「…そうだな。ロザリーは…」

イアソン王子がこちらを見た。

私は美術館で絵画を見るような環境で暮らしては来なかった。なので、恐らく絵を見たとしても、何も分からないだろう。第一、精神的に色々疲れていたので正直に言うと、もう1人きりにさせてもらいたかった。

「あの…申し訳ございませんが、私はご遠慮させて頂けますか?なれない買い物をして、少々疲れてしまいましたので…」

「え…?」

私の言葉にイアソン王子が怪訝そうな表情を浮かべる。

「うん、そうだね。君は何だか疲れているように見えるよ。部屋に帰って休んだほうがいいかもね。ほら、早く戻りな。それとも部屋まで送り届けてあげようか?」

すかさずアンドレアさんが私に声を掛けてきた。

「い、いえ。そこまではいいです…1人で戻れますから」

多分アンドレアさんは私を早く部屋に戻してあげようとしてくれているのだろう。
そして私は立ち上がると、イアソン王子に頭を下げた。

「イアソン王子、本日は色々洋服を買っていただいたり、ご馳走に預かりましてありがとうございました」

「ああ、別に気にすることは無いよ。それじゃあね」

「はい、失礼致します」

イアソン王子に頭を下げると、次にアンドレアさんとミレーユさんにも挨拶をした

「すみません、私はこれで失礼させて頂きます」

「ええ、分かったわ」

「またね、ロザリー」

ミレーユさんはそっけなく答え、イアソン王子は笑みを浮かべて私に手を振る。

こうしてわたしは喫茶店を後にした―。


しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...