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12-1 突然の客
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レナート様とフランシスカ様が学園を去る頃…レナート様を襲った3年生達の処罰が下った。
彼等は全員退額処分を受け、特にレナート様の左目を切りつけて失明させてしまった3年生は傷害罪により逮捕された。さらに伯爵家の称号を剥奪されるという処罰が下るという結果に終わった―。
****
レナート様とフランシスカ様が学園を去り、季節は春を迎えていた―。
週末、いつものように私は花屋のアルバイトをしていた。
最近仕事に慣れてきたお陰で、アルバイトが楽しくてたまらない。
そして、つい欲が出てしまった。
学園卒業後も、ずっとここで働ければどんなにかいいのに…と―。
お店の奥で納品されてきたお花の選別をしていると、カトリーヌさんが姿を現した。
「ロザリー。お客様がいらっしゃって花束を作りたいそうなのよ。貴女に頼みたいんですって。ちょっと応対してもらっていいかしら?」
「え…?私にですか?でも、私なんかで本当に良いのでしょうか?」
「ええ、お客様からの申し出なのよ。お店で待っているから対応してあげてくれる?」
「は、はい…」
訳もわからないまま店内に行くと、こちらに背を向けて花を見ている男性がいた。
その後姿に見覚えがある。
「あの、私に花束を作って貰いたいそうですが…」
すると、その人物はこちらを振り向き…私は息を呑んだ。
「姉さん…会いたかったよ…」
その人物は…弟のダミアンだったのだ。
そ、そんな…。どうしてダミアンが…?
「ダ、ダミアン…?ど、どうしてここへ…?」
ドクン
ドクン
心臓が煩いくらいに鳴っている。
「どうして?久しぶりに会えたのに…あんな別れ方をしてしまったのに、最初に言う言葉がそれなの?」
ダミアンは悲しげな表情を浮かべた。
「あ…ご、ごめんなさい。別に変な意味で言ったわけではないのよ?ただ、あまりにも突然だったから…お、驚いてしまって…」
心の動揺を押し隠しつつ、何とか必死で笑みを浮かべる。
「そうだよね…いきなり来たら誰だって驚くよね?だけど…予め手紙でも出そうものなら…姉さんが逃げてしまいそうだったから…」
逃げる…。
自分の心をダミアンに見透かされたようで、益々心臓の鼓動が激しくなる。
迂闊だった。
今迄ダミアンのことなどすっかり忘れていた。もう二度と会うことは無いだろうと自分の中で勝手に思い込んでいた。
けれど…ダミアンは違ったのだ。
ダミアンは私が黙っているからなのか…1人で話し始めた。
「大変だったんだ…ここまで来るの。父さんには内緒でお金を貯めて…ずっとここへ来るチャンスを伺っていたんだ。僕はずっと父さんに監視されていたからね。だけど、ついに僕に運が回ってきたんだよ。父さんが組合の出張で家を3日間留守にすることになったんだ。だからそのすきを狙って、取るものもとりあえず…急いで汽車の切符を買って、ここまでやってきたんだよ。…姉さんは嫌がるかもしれないけれど、足りない分は…ユーグ様からの支援金を使わせて貰ってね。ごめんよ、姉さん。あれ程ユーグ様のお金は手を付けないようにって言われていたのに…。でもそのおかげでこうして姉さんに会いに来ることが出来たのだから…許してくれるよね?」
ダミアンが息もつかせぬ勢いで話す姿に、レナート様のときとは違う恐怖を感じた。
「そ、それよりも花束を買いにきたお客様って…ダミアンだったの?」
何とか話をそらせる為にダミアンに尋ねた。
「そうだよ、姉さんに花束をプレゼントしたかったからだよ。2人が再会出来た記念にね?」
そしてダミアンは笑みを浮かべて私を見た―。
彼等は全員退額処分を受け、特にレナート様の左目を切りつけて失明させてしまった3年生は傷害罪により逮捕された。さらに伯爵家の称号を剥奪されるという処罰が下るという結果に終わった―。
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レナート様とフランシスカ様が学園を去り、季節は春を迎えていた―。
週末、いつものように私は花屋のアルバイトをしていた。
最近仕事に慣れてきたお陰で、アルバイトが楽しくてたまらない。
そして、つい欲が出てしまった。
学園卒業後も、ずっとここで働ければどんなにかいいのに…と―。
お店の奥で納品されてきたお花の選別をしていると、カトリーヌさんが姿を現した。
「ロザリー。お客様がいらっしゃって花束を作りたいそうなのよ。貴女に頼みたいんですって。ちょっと応対してもらっていいかしら?」
「え…?私にですか?でも、私なんかで本当に良いのでしょうか?」
「ええ、お客様からの申し出なのよ。お店で待っているから対応してあげてくれる?」
「は、はい…」
訳もわからないまま店内に行くと、こちらに背を向けて花を見ている男性がいた。
その後姿に見覚えがある。
「あの、私に花束を作って貰いたいそうですが…」
すると、その人物はこちらを振り向き…私は息を呑んだ。
「姉さん…会いたかったよ…」
その人物は…弟のダミアンだったのだ。
そ、そんな…。どうしてダミアンが…?
「ダ、ダミアン…?ど、どうしてここへ…?」
ドクン
ドクン
心臓が煩いくらいに鳴っている。
「どうして?久しぶりに会えたのに…あんな別れ方をしてしまったのに、最初に言う言葉がそれなの?」
ダミアンは悲しげな表情を浮かべた。
「あ…ご、ごめんなさい。別に変な意味で言ったわけではないのよ?ただ、あまりにも突然だったから…お、驚いてしまって…」
心の動揺を押し隠しつつ、何とか必死で笑みを浮かべる。
「そうだよね…いきなり来たら誰だって驚くよね?だけど…予め手紙でも出そうものなら…姉さんが逃げてしまいそうだったから…」
逃げる…。
自分の心をダミアンに見透かされたようで、益々心臓の鼓動が激しくなる。
迂闊だった。
今迄ダミアンのことなどすっかり忘れていた。もう二度と会うことは無いだろうと自分の中で勝手に思い込んでいた。
けれど…ダミアンは違ったのだ。
ダミアンは私が黙っているからなのか…1人で話し始めた。
「大変だったんだ…ここまで来るの。父さんには内緒でお金を貯めて…ずっとここへ来るチャンスを伺っていたんだ。僕はずっと父さんに監視されていたからね。だけど、ついに僕に運が回ってきたんだよ。父さんが組合の出張で家を3日間留守にすることになったんだ。だからそのすきを狙って、取るものもとりあえず…急いで汽車の切符を買って、ここまでやってきたんだよ。…姉さんは嫌がるかもしれないけれど、足りない分は…ユーグ様からの支援金を使わせて貰ってね。ごめんよ、姉さん。あれ程ユーグ様のお金は手を付けないようにって言われていたのに…。でもそのおかげでこうして姉さんに会いに来ることが出来たのだから…許してくれるよね?」
ダミアンが息もつかせぬ勢いで話す姿に、レナート様のときとは違う恐怖を感じた。
「そ、それよりも花束を買いにきたお客様って…ダミアンだったの?」
何とか話をそらせる為にダミアンに尋ねた。
「そうだよ、姉さんに花束をプレゼントしたかったからだよ。2人が再会出来た記念にね?」
そしてダミアンは笑みを浮かべて私を見た―。
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