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2章 3 僕のところにおいで
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ニコルが泣きながら連れ去られていく様子を遠巻きに見ていた人々がこれみよがしに囁いている。
「見た? 今の」
「ああ。酷いことをするな」
「泣いている弟を引き離したぞ」
「よくあんな人でなしの事ができるわ……」
数少ない参列者たちは、誰もが私を非難している。ここにいる人たちは……父の死を悼んでくれる人は誰もいない。
そのことがより一層、悲しみが込み上げてくる。
祈りの言葉を捧げてくれる神父様はまだ来ない。
この小さな教会は神父が不在で、他の教会から派遣されてくることになっている。
私の家にはお金が無い。
ごく僅かな献金しか出来ないので他の葬儀の後回しにされているのだ。
いつ、この小さな教会に神父が現れるかも分からない状況でじっと悲しみに耐えて待っていたその時。
「フローネ……」
背後から声をかけられた。
その声を聞いた時、我慢していた涙が溢れてきた。振り向くと、側に立っていたのは……。
「ク……クリフ……」
クリフは喪服姿で悲しそうな顔で私を見つめていた。
「遅くなってごめん、フローネ……辛かっただろう?」
クリフが私の頭をそっと撫でてくる。
「クリフ……クリフッ!」
立ち上がり、気付けば彼の胸に顔を埋めていた。
「クリフ……お父様が……亡くなってしまったの……そ、それだけじゃないわ……弟のニコルまで……い、いなくなってしまったの……!」
私は周囲の目もはばからず、声をあげて泣いた。そして泣きじゃくる私をクリフは黙って抱きしめ、そっと頭を撫でてくれた――
****
あの後、すぐに神父様が教会に現れて寂しいお葬式が始まった。
神父様のお別れの祈りの言葉を聞きながら、私は父の棺をじっと見つめていた。そして隣には私に寄り添ってくれるクリフがいる。
私は今、完全に孤独になってしまったけれども……隣にいるクリフの温もりがとてもありがたく、嬉しかった。
そうだ、私は一人ではない。
私のことを思って、執事長にお金を渡してくれたリリス。そして葬儀の間、側に寄り添ってくれるクリフがいるのだ。
だから、私は……頑張って生きる。
一生懸命働いて、お金を貯めて……そしてニコルを迎えに行って一緒に幸せに暮らしていくのだから。
だから、お父様。
心配しないで、安らかに天国で眠って下さい……。
私は父の棺にお花を手向けながら、心の中で語りかけた――
****
父の遺骸は教会の裏手の墓地に埋葬されることになった。
近所の人々が土を掘って、棺を収める様子を呆然と見つめているとクリフが声をかけてきた。
「フローネ……これからどうするんだい?」
「まだ分からないわ……不動産屋さんは、後半月はあの家に住んでもいいと言ってくれているけど、早めに出てもらいたい様子だったの。明日にでもどこかアパートメントを探すわ。私一人だから、部屋は小さくても構わないし」
「そう……。あのさ、フローネ」
不意にクリフが私の手を握りしめてきた。
「何?」
クリフの顔を見上げると、彼は真剣な眼差しで私を見つめている。
「フローネ。もし、行くところが無いなら……僕のところにおいでよ。君さえよければ、僕が一生面倒を見てあげるから……家においで」
「え……? クリフ……?」
一生面倒を見てあげるって……それって……もしかして、私のことを……?
「い、いいの……クリフ……?」
「当然だよ、だってフローネは僕にとって特別な人だからね」
優しく笑みを浮かべるクリフ。
「ありがとう……クリフ。とっても嬉しいわ……」
私は涙を浮かべながら感謝の言葉を述べた。
このときの私は本当に弱っていた。誰かにすがりたい気持ちで一杯だった。
だから勘違いしてしまったのだ。
クリフの言葉の本当の意味を――
「見た? 今の」
「ああ。酷いことをするな」
「泣いている弟を引き離したぞ」
「よくあんな人でなしの事ができるわ……」
数少ない参列者たちは、誰もが私を非難している。ここにいる人たちは……父の死を悼んでくれる人は誰もいない。
そのことがより一層、悲しみが込み上げてくる。
祈りの言葉を捧げてくれる神父様はまだ来ない。
この小さな教会は神父が不在で、他の教会から派遣されてくることになっている。
私の家にはお金が無い。
ごく僅かな献金しか出来ないので他の葬儀の後回しにされているのだ。
いつ、この小さな教会に神父が現れるかも分からない状況でじっと悲しみに耐えて待っていたその時。
「フローネ……」
背後から声をかけられた。
その声を聞いた時、我慢していた涙が溢れてきた。振り向くと、側に立っていたのは……。
「ク……クリフ……」
クリフは喪服姿で悲しそうな顔で私を見つめていた。
「遅くなってごめん、フローネ……辛かっただろう?」
クリフが私の頭をそっと撫でてくる。
「クリフ……クリフッ!」
立ち上がり、気付けば彼の胸に顔を埋めていた。
「クリフ……お父様が……亡くなってしまったの……そ、それだけじゃないわ……弟のニコルまで……い、いなくなってしまったの……!」
私は周囲の目もはばからず、声をあげて泣いた。そして泣きじゃくる私をクリフは黙って抱きしめ、そっと頭を撫でてくれた――
****
あの後、すぐに神父様が教会に現れて寂しいお葬式が始まった。
神父様のお別れの祈りの言葉を聞きながら、私は父の棺をじっと見つめていた。そして隣には私に寄り添ってくれるクリフがいる。
私は今、完全に孤独になってしまったけれども……隣にいるクリフの温もりがとてもありがたく、嬉しかった。
そうだ、私は一人ではない。
私のことを思って、執事長にお金を渡してくれたリリス。そして葬儀の間、側に寄り添ってくれるクリフがいるのだ。
だから、私は……頑張って生きる。
一生懸命働いて、お金を貯めて……そしてニコルを迎えに行って一緒に幸せに暮らしていくのだから。
だから、お父様。
心配しないで、安らかに天国で眠って下さい……。
私は父の棺にお花を手向けながら、心の中で語りかけた――
****
父の遺骸は教会の裏手の墓地に埋葬されることになった。
近所の人々が土を掘って、棺を収める様子を呆然と見つめているとクリフが声をかけてきた。
「フローネ……これからどうするんだい?」
「まだ分からないわ……不動産屋さんは、後半月はあの家に住んでもいいと言ってくれているけど、早めに出てもらいたい様子だったの。明日にでもどこかアパートメントを探すわ。私一人だから、部屋は小さくても構わないし」
「そう……。あのさ、フローネ」
不意にクリフが私の手を握りしめてきた。
「何?」
クリフの顔を見上げると、彼は真剣な眼差しで私を見つめている。
「フローネ。もし、行くところが無いなら……僕のところにおいでよ。君さえよければ、僕が一生面倒を見てあげるから……家においで」
「え……? クリフ……?」
一生面倒を見てあげるって……それって……もしかして、私のことを……?
「い、いいの……クリフ……?」
「当然だよ、だってフローネは僕にとって特別な人だからね」
優しく笑みを浮かべるクリフ。
「ありがとう……クリフ。とっても嬉しいわ……」
私は涙を浮かべながら感謝の言葉を述べた。
このときの私は本当に弱っていた。誰かにすがりたい気持ちで一杯だった。
だから勘違いしてしまったのだ。
クリフの言葉の本当の意味を――
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