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疑惑の婚約者
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そんな時、庭の方で何やら物音がした。エドワードが何事かとさっと窓際に行ったので、私はこっそりと安心した。ただし、エドワードが言った次の一言で私はすぐに凍り付いた。「キース様がお見えになったようです。」彼はそう言うと、少し待っていてください、と私に言い残し、玄関へと走って行った。
(どどど、どうするのよ。まぁ、婚約破棄はされないことは既に確認済みだわ。でも、おそらくセインが話したことは真実だと思うし、そうだして、私はさっき逃げたことをどう説明するべきかしら。) 私は頭を抱えていた。そうこうするうちに、エドワードが戻って来て、
「お嬢様、キース様はたいそう心配されておいででした。体調が優れないのは重々承知ですが、少しだけお姿をお見せになられては?」と提案した。さすがに屋敷にまで訪ねてきてくれている手前、それに向こうは次期王という立場も踏まえても、ここは出ていくしかないだろうと私は思った。だから私は「わかったわ、すぐに行きます。」と答えた。エドワードは頷くと、私の言葉を伝えに、キースの元へと向かった。
私はエドワードが部屋を出ると、手早く汚れた服を着替え、結っていた髪をさっとおろして、階下へと降りていった。客間に入ると、そこには先ほど見た銀髪の男性、キースがいた。ただし、シャンデリアの光を受けて輝く髪の毛は、少しばかりくすんでいた。キースは私が部屋に入ってくるのを見ると、駆け寄ってきて「ルーナ嬢、ご無事で何よりです。先ほどは突然お声掛けし、驚かしてしまい、申し訳ありませんでした。」と言った。私は「い、いえ、こちらこそ大人気もなく逃げてしまい、申し訳ございませんでした。」と俯きながら小さく答えた。(とにかくちょっと無理があるかもしれないけれど、突然のことに思わず逃げ出した、ということにしよう。相手もどうやら驚かせたと思っているみたいだし。) 俯いているので、相手の表情はわからないが、どうやら私の返答で一応は納得してくれたみたいだった。
その証拠に「今日はもう遅いので帰ります。こうして誤解も解けたことですから。」そういうと、キースは踵を返して帰ろうとした。が、そこで一旦立ち止まり、ああ、そうだ、と呟いて戻って来た。そして「これを私たちの婚約記念にお渡しします。本当はさっきお渡ししたかったのですが。」と言って小さな青いリボンで結ばれた白い小箱を俯く私に差し出した。私は何の気なしに(さっき、パーティーの会場で婚約の話を切り出したのはこのためだったのね。納得。) なんてことを考えながら、「ありがとうございます。」と言って受け取ろうと手を伸ばした。
その瞬間、手をぐっと掴まれて彼のもとに引き寄せられた。そして「ちょっと失礼。」と彼は言うと、驚いて彼の顔をハッと見た私をよそに、髪の毛をさっと撫でた。その時ふわりと漂ってきたムスクの香の中に焦げたような匂いが混じっていた。私はさっきのセインの言葉を思い出して肝がヒヤリとしたが、なんとか平静を装った。「綺麗な御髪にゴミがついていたものですから。」キースはそういうと、大したことはない、といった具合に私に向かってほほ笑んだ。
(どどど、どうするのよ。まぁ、婚約破棄はされないことは既に確認済みだわ。でも、おそらくセインが話したことは真実だと思うし、そうだして、私はさっき逃げたことをどう説明するべきかしら。) 私は頭を抱えていた。そうこうするうちに、エドワードが戻って来て、
「お嬢様、キース様はたいそう心配されておいででした。体調が優れないのは重々承知ですが、少しだけお姿をお見せになられては?」と提案した。さすがに屋敷にまで訪ねてきてくれている手前、それに向こうは次期王という立場も踏まえても、ここは出ていくしかないだろうと私は思った。だから私は「わかったわ、すぐに行きます。」と答えた。エドワードは頷くと、私の言葉を伝えに、キースの元へと向かった。
私はエドワードが部屋を出ると、手早く汚れた服を着替え、結っていた髪をさっとおろして、階下へと降りていった。客間に入ると、そこには先ほど見た銀髪の男性、キースがいた。ただし、シャンデリアの光を受けて輝く髪の毛は、少しばかりくすんでいた。キースは私が部屋に入ってくるのを見ると、駆け寄ってきて「ルーナ嬢、ご無事で何よりです。先ほどは突然お声掛けし、驚かしてしまい、申し訳ありませんでした。」と言った。私は「い、いえ、こちらこそ大人気もなく逃げてしまい、申し訳ございませんでした。」と俯きながら小さく答えた。(とにかくちょっと無理があるかもしれないけれど、突然のことに思わず逃げ出した、ということにしよう。相手もどうやら驚かせたと思っているみたいだし。) 俯いているので、相手の表情はわからないが、どうやら私の返答で一応は納得してくれたみたいだった。
その証拠に「今日はもう遅いので帰ります。こうして誤解も解けたことですから。」そういうと、キースは踵を返して帰ろうとした。が、そこで一旦立ち止まり、ああ、そうだ、と呟いて戻って来た。そして「これを私たちの婚約記念にお渡しします。本当はさっきお渡ししたかったのですが。」と言って小さな青いリボンで結ばれた白い小箱を俯く私に差し出した。私は何の気なしに(さっき、パーティーの会場で婚約の話を切り出したのはこのためだったのね。納得。) なんてことを考えながら、「ありがとうございます。」と言って受け取ろうと手を伸ばした。
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