【完結】悪役令嬢に転生しちゃったけど、婚約者様とヒロイン(仮)に溺愛されちゃいそうです！？

新学期

キースが帰った後、私は自室にて先ほど貰った白い小箱を眺めていた。
(今夜、私がキースを振り切って逃げた後、庭で爆発騒ぎを起こしたのはキースで間違いない。さっき焦げ臭い匂いがかすかにしたもの。) そこまで考えたところで、私は目の前の箱を手に取り、恐る恐るリボンをほどいてみた。

中から出てきたのは、海の色を閉じ込めたかのようにきれいな青い宝石が付いたシルバーのネックレスだった。(キースの瞳のような色ね。盗聴器とか付いてたりして。あ、でもこの世界だとそういう技術はないか。)　私はそれを箱にそっと戻すと、ベットの上で横になった。


あの騒動の夜から、キースは度々家を訪問しては、海外視察の時に購入したお土産をプレゼントしてくれた。あの夜以来、キースは殊更に優しく、何事もなかったかのように私に接してきた。セインの言葉を忘れたわけではないが、私はキースと上手くやっていた。

反対に肝心のセインは、というと、定期的に魔法便と呼ばれる、読んだら消える不思議な紙を使って、私に近況を訪ねてきた。ただし、あの夜以来一度も会っていないので、あの黄金色の瞳は幻だったんじゃないかと時折思う。彼の呪いを解く方法はないかと、屋敷中の本を探したがそれらしい記述は見当たらなかった。

また、最近は前世の記憶もかなり鮮明に思い出してきた。もちろん、この世界での記憶も、だ。(もうすぐ新学期も始まるし、とりあえず記憶が戻ったのは嬉しい。でも1つだけ引っかかることがあるのよね。この世界の雰囲気は私が遊んだ乙女ゲームのはずなのに、話が全然違う。そもそも)と考えたところで、「うわっ」私は階段を踏み外しそうになって、たたらを踏んだ。

その瞬間、私の中にはっきりと映像が浮かんできた。(そっか、私あの時階段から転げ落ちたんだった。)　このところ記憶が戻ったといっても、どうしても思い出せなかった転生原因を思い出した。とともに、もう一つの考えが浮かんだのだ。他にも転生している人がこの世界にいるのでは、と。(でも、確かめるは難しいし、とりあえずは、まぁいっか。)と思い直して、明日から始まる新学期に向けて支度を始めたのだった。


(学校なんで本当に久しぶり!魔法とか習うのかしら?　確かキースは1つ上の学年よね?)そんなことを思いながら、私は校門をくぐり抜けた。すると、向こうから桜色の髪の毛をした女の子、ローズが駆け寄ってきた。「おはよう!　ルーナ。」彼女とは私が転生前の記憶を取り戻す前から友達だったが、あの爆発の一件以来、心配して私のことを訪ねてきてくれてからさらに仲を深めることとなった。「ローズ、おはよう。」私は彼女とともに教室に向かって歩き出した。