アゲノルの挑発

霧饅苺香

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 ティティスは美しく着飾った。
 透き通る肌に艶めく布を身にまとい銀の髪飾りをつけた。


  へパイストスの屋敷につくと、へパイストスの妻カリスがティティスを迎えた。
「ティティス、久しぶりね。あなたが訪ねてくるなんて・・・・・・。
 とてもうれしいわ。」

「あら、髪飾り・・・・・・。」
「カリスあなたからの贈り物よ。」

「どう?すてきかしら・・・・・・?」
「ええ。ティティスとてもよく似合っているわ」

「ありがとう。カリス。」
「葡萄よ。召し上がって。」
「とてもおいしいわ。カリス。」
「おいしくてとても肌にいいのよ。ますます美しくなるわね。」
「ええ、そうね。」

  ふたりは久しぶりの再会を楽しんだ。

「カリス・・・・・・。実は、へパイストスに仕事の依頼に来たの。」


 へパイストスは、今日も汗だくになって働いていた。
 ティティスが訪ねてきたことを喜んだ。
 鞴を火から離しておき、道具を銀の櫃に片づけた。
 顔や手の汚れを取って身ぎれいにした。
 太い杖で身体を支えながらいつもより軽い足取りでカリスのそばに歩み寄った。
 そして椅子に腰を下ろした。

「ティティス・・・・・・。しばらく会っていなかったが
 美しさは相変わらずのようじゃ。」
「仕事の依頼に来たのよ。」
「必要なものはなんじゃ? 髪飾りか? 不必要なものを溶かせばよいのか?」
「・・・・・・。へパイトスのつくる髪飾りや腕輪、首輪、
 どれも素敵なものばかりで
 私にはとても必要なのですが・・・・・・。
 今回は違うのです。」
「戦士の防具がほしいのです。」
 
 へパイストスは葡萄酒を一気に飲み干した。

「防具を作ればよいのか。」
「ええ。兜、脛当、胸当、楯が必要なのです。」
「ティティス。兜、楯、胸当、脛当をつくればよいのか。アキレスの防具か。」
「報酬が楽しみな仕事じゃ!」


「アキレスはしばらく戦意を失っていたようだが・・・・・・。
 ようやく出陣する気になったのか。」
「誰もがうらやむような防具を作るからまっておれ。」
 へパイストスの顔が汗やら涙やらできらきらしていた。
 その顔をカリスがふいてやった。
 
 ティティスの顔色は蒼白くなっていた。
「知っていたのですか。アキレスが出陣することを・・・・・・。」
「アキレスが戦意を失って
 船に引きこもってしまったときは戦がおわらないのでないかと
 随分と心配しました。
 戦闘の意欲が奪われた後は幼き時からの友と大事にしていた楯を奪われました。
 私の息子アキレスには何も残ってはいないのです。」
 ティティスはへパイストスとカリスに願った。
「どうかアキレスのためにすばらしい武具をつくってください。」
 
 へパイストスは頷いた後,葡萄酒とパンをがつがつと食べ始めた。




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