アゲノルの挑発

霧饅苺香

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 ヘパイストスはアキレスのために戦士だったら惚れるであろう、
  武具を作る決意をした。
 ヘパイストスは硬い青銅、錫、上質な金や銀を火中に投じた。

「光や炎を集める楯を作るのじゃ!」

 頑丈できらびやかな楯が完成した。
 三重の縁がめぐらされ、本体には五重の装飾が細工されている。
 地上があり、天空があり、天空にはすべての星座が描かれている。
 太陽は休むことなく働き、月は満ちると欠ける。
 そして星のみはオケアノスの流れにのまれない。
 楯の端の縁にはオケアノス河が描かれた。次に
 火も光もきらめかせる胸当を作った。
 星々を埋め込んだ兜を作った。
 錫で脛当を作った。


「カリス、アキレスのためにヘパイストスは強い楯を作ってくれると思う?」
「ティティス・・・・・・。地上で一番強い楯が完成するわ。
 きっと・・・・・・。」

「エリュノメとふたりで育てたヘパイストスですもの・・・・・・。」
「エリュノメと海の家でかくまっていたころ、ヘラに秘密でブローチや耳飾り、
 ネックレス、ブレスレット。」
「たくさんつくってもらいましたわ。エリュノメと私の秘密の宝物・・・・・・。」

 エリュノメはオケアノス河の姫君でティティスの大切な友人だ。

「ティティス。ヘパイストスは海の岩場での9年間のことは忘れてはいないわ!」
「でもね・・・・・・。」
「ヘパイストスの母ヘラが怖いのよ。ここだけの秘密にしておいて!お願いよ。」
 
 ティティスの顔色が蒼白くなった。

「ティティス、武具が完成するまで時間があるわ。
 薔薇の湯にでもつかりましょう。」
「ティティス、身体が冷えているわよ・・・・・・。」

 カリスはヘパイストスのために葡萄酒とパンを用意した。
 ヘパイストスは武具一式を完成させた。
「これで戦いには勝つ!報酬が楽しみじゃ・・・・・・。」
 ティティスは見事な武具一式に感嘆した。
「素敵だわ・・・。」
 
 ティティスはヘパイストスから武具一式を受け取ってアキレスのもとへと向かった。

「カリス、この戦で、死の運命を持つアキレスにあのような楯はミスマッチだったか?」
「またしても母ヘラの思惑にはめられたのか?
 母ヘラが愚かゆえに恐ろしいのじゃ」
「ヘパイストス。戦が終わるまでアキレスは楯を離さないでしょう。
 戦いが終わった後、美しき王子の手におさまるでしょうね。」
 
 カリスはアキレスの武具を装備した王子を想像してゾクゾクした。






  
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