悪魔との100日ー淫獄の果てにー

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51日目―悪魔”との”……(後編)― 

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 心臓が止まったかと思った。
 臓腑の芯から冷え固まって、蛍の喉が干上がる。呼吸が飛んで、ただ一言、絞り出すような声が口をついた。
「………嘘」
「ホントだよ」
 力なく首を振っても、鼓膜を揺らすその声は、この数年ずっと焦がれていた妹のもので。
 こつん、と靴を鳴らし、朝宮あかりは蛍の前に立つ。
「本当に、久しぶりだねお姉ちゃん」
「あかり………」
 久しぶりに見た妹は、少し髪が伸びているものの、最後に会った時と変わらず、優しげな表情を浮かべていた。
 明らかに敵側に取り込まれているけれど。
 裸で吊られた姉を前に助けるでもなくアイリーンの指示に従っているけれど。
 だけど、とにかく。
「生きてて、よかった………っ」
 目には理性も伺えて、会話もできる。体つきも健康そうだった。少なくとも梓が前に言っていたような、絶望的な改造をされた様子はない。
 目を潤ませる蛍に、あかりは困ったように眉を下げた。
「ああもう、泣かないでよ」
「だって、ぇ……」
「それにしても、本当にこんなとこまで来ちゃったんだね。昔っから無鉄砲というかなんというか……。そのうち痛い目見るよって、いろんな人に言われてたのに」
 はあ、とあきれたようなため息をつくあかり。
 その背中に後ろから抱きついて、アイリーンは頬を膨らませた。
「ちょっとぉ。私を差し置いて親密な感じ出さないでもらえるかしら?」
 しなだれかかる金髪の女に、蛍の頭が沸騰する。
―――おまえのせいで、あかりは……っ!
「あかりに、触るなっ!」
 吊られた腕を起点に体を持ち上げ、アイリーンの腹部に蹴りを繰り出す。
 しかし。
「だめ」
 妹の腕に阻まれて、蛍は足を大きく広げた体勢で固定された。
「あ、ちょっと……、あかり!」
「主様に手を出すのは、許さない」
「主様って何よ! 目を覚まして」
「あかりは正気よ?」
 鉄壁の盾に身を隠して笑うアイリーンが言う。
「他の奴隷と違って、あかりには薬は使っていないもの。楽しくお話しただけよ。ねえ、あかり?」
「あ、……ぁ、は、い」
 すすす、と首元からあかりの胸に手を入れて、陶器のような感触を楽しむ。
 たちまち色づいていくあかりの前髪を優しく梳いて、アイリーンは囁く。
「あかりだって、たった数年会わなかっただけで妹を忘れて、敵陣で昏倒させるような非情なお姉ちゃんより、私の方がいいわよねえ」
 ね? と耳元で言われ、主の意図を理解したあかりは蛍に向き直る。
「そうだよ、お姉ちゃん。本気で殴ったでしょ? すっごく痛かったんだから」
「ごめ、ん……。でもそれは………っ!」
「逃げれば後から助けを呼べると思った? でも本当に? お姉ちゃんは、心のどこかで『妹のために必死な自分』に酔ってただけじゃないの?」
「そんな、こと……」
 すう、と目を細めて感情の抜けていくあかりの表情に蛍はぶるりと身を震わせる。
 おっとりとしていて、ときどき抜けているけれど誰よりも優しくて、ひまわりのような笑顔が可愛かった妹。
 そんな、夜の帳を下ろしたような、深くて圧のある表情は、知らない。
 あかりは、蛍の頬を優しく撫でて。
 もう片方の手を、姉の熟れた女陰にそっと添えた。
「お仕置きだよ、お姉ちゃん」

■■■

「お、ねがい。あかりっ、やめて、やめなさいよっ! あ、うっ……」
「すごい、濡れてる……。梓さんの薬って、すごいんですね」
 妹に秘部を暴かれて、官能と背徳で心身がいっぱいいっぱいになる蛍。助けに来たはずの妹に受ける快楽責めに、頭が混乱を起こしていた。
 助けるべき妹、嫌悪を抱こうにも抱けない妹、愛しい妹。
 殴ってしまったという罪悪感も枷となり、心の防波堤を失った蛍はただ快楽を受け止める。
「あ、うううっ、……はあ、あかり、やめ、ろぉ……、くあっ!」
「気持ちいい? お姉ちゃん」
―――いやあ、いい絵ねえ。
 あかりも蛍も、恣意的にデザインされたこっち側に劣らないぐらい美しい。
 くちゅくちゅ、と優しい手つきで愛撫されて悶える蛍を見て、アイリーンはくるりと向き直った。
「ほら、いつまで項垂れてるのよ、元首席」
「あうっ! は、ぁ……。この、くそっ、たれ、ぇ!」
 手慰みにたぷたぷと胸を揉んでやると、感電したように梓は腰を震わせる。
 ぴん、と乳首を跳ねて、アイリーンはあかりに声をかけた。
「あかりー? どっちがたくさんイかせられるか競争しない?」
「ええ……、勝てっこないから嫌ですよ……」
「3分勝負ね。あかりが負けたらアラーム30分早くするから」
「主様ぜったい起きてくれないじゃないですか⁉」
 早朝からどろどろになる未来がありありと想像できて、あかりはひっ、と声を漏らす。
 そして、とばっちりを受けた蛍は、ぴんと背筋を張って快楽に打ち震えた。
「あああああっ!」
 腰を持ち上げんばかりにあかりの指が膣奥まで滑り込み。
 さらにもう片方の手で肥大化した陰核をつままれる。
 びりびりと頭にしびれが走る蛍に、あかりはふっと囁いた。
「たくさんイって、お姉ちゃん。」
「あ、………もう、あかりっ、お願い……やめ、てぇぇええっ」
 妹に極めさせられる、という最低の背徳を我慢できたのは、せいぜい数秒だった。
 あかりの細い指にぴゅ、と潮を噴いて、蛍は腰を震わせる。
「ああああああああああああああああっ!」
「もっと……っ」
「待って、それ、無理ぃっ!」
 アイリーンと比べて、あかりが唯一上回っているのは身体能力だ。
 だからというわけではないが。
 膣を抉っている指を起点に、あかりは蛍を持ち上げる。
 足が浮き、腰を震わせることもできなくなって最奥に体重がかかった蛍は、締まった太腿で妹の腕を挟んで、再び果てた。
 ぎゅうぎゅうと、あかりの指を食いちぎらんばかりに締め上げて、再び愛液を噴き上げる。
「あ、ああああうっ! い、やあああああああああああああああっ!」
「3分ならこのまま持てそう……。もっとイって、お姉ちゃん」
 対して、アイリーン。
 梓の感度を知っているアイリーンは、変な小細工を弄したりはしなかった。
 ただ弄ぶ。
 逃げられないように背中側から抱き、左手で両乳首を転がし、右手は陰核とGスポットを擦り上げる。
 裸身を晒す天才は、それだけで馬鹿になったようにふりふりと尻を揺らすのだから、面白い。
「あ、あ、ああ………。はあっ! こ、の、やろぉっ!」
「はいはい、私が憎いのはわかってるから、とりあえず果ててね」
「くそ、くっ……そ、い、あ、あああああああああああっ!」
 イく、と言うのだけはなんとかこらえたが。
 そんな抵抗も虚しく果てて、さらに感度を上げた梓はどこまでも絶頂を重ねていく。
「あ、もう……っ! いや、だいやだいやだあああっ! あ、また、イ、っぐ、ああっ!」
「あはは! もうちょっと慎みを持てないのかしら?」
 気だるげにふかふかの椅子に座っていた主席はもういない。
 上下の口から涎を垂らして淫心に理性を攫われていく梓に、アイリーンは加虐心を煽られて、どこまでも責め手を激しくしていった。
 
■■■
 
 あかりとアイリーンの技術というより、蛍と梓の感度差が勝敗を分けた。
 軽く撫でるだけで寸前まで押し上げられる梓が延々と絶頂を重ね、大差で負けたあかりはがくりと項垂れる。
「………せめて今夜は早く寝かせてください」
「無理よ、これの引継ぎ業務がたまってるもの」
「ふぇぇ……」
 これ、と言われぽんぽんと肩を叩かれて、梓は反射のように喘ぎ声を漏らす。
 その髪を引き上げて、アイリーンは梓に言った。
「あなたのせいであかりが困ってるじゃない、どうしてくれるのよ?」
「……お前の、せいだろう、がっ!」
「私のミスは奴隷のミスよ」
 言って、アイリーンは、かつて梓が持っていたリモコンを操作する。
 蛍の淫臭が染みついたベッドをせり上げさせると、側面に付属している一本の管を引っ張ってきた。
 蛍の陰核を改造した、繊毛の詰まった魔の管だ。
「ア、イリーン……うそ」
「嘘じゃないわよ? ほら」
 きゅ、と梓の陰核にそれを取り付け、スイッチに手をかける。
「いや……いやだ、いやだっ」
「あなた、今まで蛍さんにそれ言われてためらったことあるのかしら?」
 無慈悲にスイッチを押した。
 一瞬だけ、梓は体をこわばらせて。
 直後、前後から叩かれているように、激しく体を前後に揺らす。
「あああああっ! も、うやだ、イっく、また、あああっ! 止めて、ぇぇええっ!」
「あっはは! まあ今日の夜には迎えに来るから。それまで楽しくやってなさい」
 あ、蛍さんは休んでていいわよ。という言葉を最後に。
 アイリーンとあかりは部屋を出て行った。
 出がけに蛍が必死で呼びかけるも、あかりは困ったように笑うだけで返事をせず。
―――なんなのよ、どうなってるのよ、どうすればいいのよっ!
 妹が見つかった喜びはあったものの。
 それらを加味しても、わからないことが多すぎて苛立ちが収まらない。
―――それにしても……。
「あ、ああああっ! ま、た……イく、……ほ、たるちゃん、見ない、で……、ああ、いやあああああああああっ!」
「あ、ご、ごめん……」
 まただ。なぜか、梓の痴態から目が離せなくなる時がある。
 卑猥なダンスを踊り、うわごとのようにつぶやく梓から、蛍は慌てて目を逸らした。
 それでも、耳は塞げない。
 たらたらと床に落ちる愛液の音と、梓の嬌声だけが響く白い部屋で。
 二人の囚人は、夜まで裸で吊られ続けた。
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