地面に埋まっていた幼女を引っこ抜いたら理解できない言語を喋りだして漸く理解したら世界が滅びるとか言い出したが俺には遅すぎた件

中の人など居ない

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薄氷裏の日常6

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——3月29日(金) AM20:00

周囲の住宅地に溶け込むありきたりな二階建ての一軒家の台所にて
刻まれたじゃがいも、人参、牛肉、玉ねぎ等が浸されたカレーが中火でグツグツと煮込まれている。

「ただいま…」

そこへ譜夏が帰宅し、鼻を引くつかせる。

「おや、カレーか?」

玄関から台所兼ダイニングまでは距離はなく、その匂いが流れてくる。
その声を聞くなり、エプロン姿の零士は猛スピードで台所からお玉を片手に顔を覗かせて不自然な笑顔を作る。

「おかえり、姉さん。今カレー作ってるから食べる?」

「んん?珍しいな、どうゆう風の吹き回しだ?
いつもはさっさと一人で食べて部屋に引きこもっているだろう?」

「俺なりに反省してるんだ。
いつもお疲れな姉さんにもう少し楽になってもらいたいんだ。」

「な、なんだ?なんか気色悪いな…」

嘘は言ってはいない。
今日の一件にしても零士のために自らの幸せを犠牲にしているのかと懸念していたところだった。
実際、普段から零士も自炊はしているのだ。だが今日は別の理由があった。

「そうか、なら先に風呂入ってこようかな…?」

譜夏が家の奥の脱衣所に向かおうとするのを零士は必死に体を張ってディーフェンスしようとする。

「ねぇ、どうして邪魔するの?」

「も、もう少しでできるからさ。せっかくだから食べてからにしない?
冷めたら温め直すの大変だしさ、
あ、そうそうカレーに合う特製のお茶も用意してるんだ。
Zamanonお取り寄せの本場インド産!
疲労回復効果もあってななな~んとビタミンCも従来比の30倍!」

零士はいつになく必死に捲し立てる。

「???なぜそんな必死なんだ?」

そう、すでに高度な心理戦は始まっているのだ。
零士は何としてでも譜夏を家の風呂に行かせるのを阻止せねばならなかった。
なぜなら、今あそこには件の泥だらけの幼女が入っているからだ。
さらに着替えは古い自分のものを用意しておいたが、
汚れ物を放り込んだ乾燥機付き洗濯機もこの時間では四方や完了していないであろう。

だが、姉が早く帰宅することも零士は織り込み済みで
姉に準備しておいたカレーを食べさせているうちにすべての事を済ませてしまおうという算段だ。
名付けて鬼の居ぬ間に洗濯作戦!

姉に年端も行かぬ幼女を連れ込んでいる自体なぞ知られてはならない。
知られれば社会不適合者として「死」あるのみである。

想定外!それは譜夏がこんなにも早く帰ってくるのは零士の計算外だった。
仮に件の幼女を回収できたとしても洗濯物の方は言い逃れできないだろう。
最悪、乾燥は諦めて取り出すしか!!
この間、僅か0.1秒!零士の脳裏で思考は完結していた。

「…怪しいわね!通しなさい!」

訝しげに思った譜夏は問答無用で押し通ろうとする。
阻止しようとして腕を伸ばす零士!
予想外!それは意図せず姉の豊満な胸に触れたことである。

「あ!ちょっと!!」

「おうふっ…!」

全てがスローモーションとなりその瞬間、女体の神秘の振動を残し世界は止まった。
次の瞬間、譜夏は反射的に胸を隠し、肩を戦慄せ般若の如き形相となる。

「零士~~~~!!!!」

逆鱗に触れた零士には社会的死以前に物理的な確実な死が待ち受けていた。

「のわーーー!!!」

譜夏はその腕を掴み、見事な一本背負いを繰り出すと
零士は床に叩きつけられ、激しい衝撃音が起こる。

「縺ェ縺ォ繧医€∽ス輔�髻ウ��シ�」

その音に驚き、慌ててバスタオルで身を包んだ幼女が脱衣所から飛び出してきた。

背景、父さん、母さん。そして姉さん。——ごめんなさい。
あっ、はい、なんていうか、生まれてきてごめんなさい。
全てを失った無念の涙が一筋、瞳からスゥーッと流れ落ち零士は意識を失う。


十数分後、三人は食卓に座り、うち二人は特に気まずそうに匙でカレーを突いていた。

「——で、この子どうするの?」

「最初は交番に届けようとしたさ、でも嫌がってさ、
泥だらけだし夜道に放っておくわけにもいかなくてさ。」

「それでうちに連れてきたわけ?」

「仕方ないだろ…言葉もわからないし、こっちの言葉は理解してるみたいだけど」

話題の幼女、νは心配そうに二人を見つめる。

「ともかく!ご飯食べたら交番に引き渡しにいくわ。親御さんも心配してるでしょう。
貴方もついてきなさい。」

「へいへい…ってあれ…?」

先程まで幼女がいた席には空のカレー皿だけが残っており、その姿は忽然と消えていた。
その後ろの窓は開いており、バタバタとカーテンが夜風ではためいていた。
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