【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮

文字の大きさ
7 / 43

断罪

しおりを挟む


国王ジョーセフの容体が回復し、毒の件を調査しようとした矢先、新たな事件が起こる。


今度は、側妃カレンデュラが毒を盛られたのだ。
使われた毒は、国王ジョーセフを狙ったものと同じだった。




「カレンッ!」


王妃の部屋、カレンデュラが眠るベッドにジョーセフが走り寄る。

カレンデュラが毒で倒れたとの報告を執務中に聞き、取るものもとりあえず駆けつけたのだ。


側には5歳になる第一王子セドリックと3歳のリゼット王女、そして乳母に抱かれた10か月の第二王子マーカスがいた。


「ちちうえ、ははうえが」

「大丈夫、大丈夫だ。お前の母は必ず助ける。死なせてなるものか」


涙を浮かべるセドリックの頭を撫で、ジョーセフは側に控える医師に心配そうに視線を向ける。


「ご安心を。妃さまが口にされた毒はかなりの少量でございました。茶の味が変だとすぐに吐き出されたそうです。数時間後には目を覚まされるかと」

「そうか・・・そうか・・・」


命に別状はないと聞き、ジョーセフの胸に安堵が満ちる。

それと同時に、ふつふつと怒りが湧いてきた。


ジョーセフ自身、毒を盛られたからその苦しみを知っている。
今それを、他ならぬ彼の最愛が味合わされているのだ。


「・・・許さぬ」

「陛下?」

「犯人を決して許しはせぬ。俺を狙うに飽きたらず、カレンまで・・・っ」





ジョーセフは全臣下を召集した。

そして、側妃の毒殺を指示した人物として、正妃アリアドネの名をあげた。

事件発生時、その場にいたカレンデュラ付きの侍女が証言したのだ。毒入りの茶葉は正妃からの贈り物だったと。


その繋がりで、先に起こったジョーセフ毒殺未遂も、アリアドネによる犯行とされた。


アリアドネはそれを否定した。

自分は毒など盛っていない。そもそも茶葉を贈ってもいない。カレンデュラにもジョーセフにも、そんな恐ろしい事を企んだりしないと。


だが、ジョーセフがそれを信じる筈もない。



「悪足掻きをするな。証人もいるというのになんと諦めの悪い、醜い女だ」



その後、約10日かけて全土から召集した全貴族の前で、ジョーセフはアリアドネを糾弾した。

本当なら、王国で一番高貴な女性である筈のアリアドネの両腕には枷が嵌められている。
さすがに拷問までは行われなかったが、心労のせいかアリアドネの顔色は酷く悪かった。

アリアドネの父であるデンゼル・ポワソン辺境伯が「陛下」と声を上げる。


「どうか再度よくお調べになってください。妃陛下はそのような事を企てる方では・・・っ」

「黙れ、デンゼル。これ・・が娘だからとて私情を挟むでない。一族諸共処刑されたいか」

「・・・っ!」


ぐっと言葉に詰まるデンゼルに向かってジョーセフは更に続ける。


「前の王国騎士団長を務めた男であれば、この件の早期解決に尽力すべきであろう。デンゼル、お前は清廉潔白な男だと思っていたが、やはり家族の情の前では正義を曲げる事も厭わぬか」

「・・・っ、決してそのような・・・っ」

「ならば、せめて黙していよ。裁きの邪魔をするな」


ここでふと、ジョーセフが何かを思い出したかのように顎に手を当て、目を見開いた。


「裁き・・・そうだ、そういえばいにしえの言い伝えにあったではないか。精霊王の裁きとやらが」

「な・・・っ」


その時、広間で驚愕の声を上げたのは誰だったのか。一人や二人ではなかった事だけは確かだ。


それだけ、国王の発した言葉は異常だった。





しおりを挟む
感想 307

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

処理中です...