29 / 324
第1章
第29話 早朝ピクニック
しおりを挟む
約束‥‥約束はしたんだっけ。約束から一週間後の早朝、訓練室にやってきたトリー殿下はニコニコして、ジョセフィンが煎れたお茶を飲んでいた。
早朝の訓練室に、ついて来たジョセフィンは、お茶を入れる道具だとか、ちょっと摘むのものなんかを持参していた。
テーブルは、他の場所から借りて来たらしい。
温かいミルクティーと小さなパン。チーズの入ったものと、サラミを刻んだものが入ったもの。
ティーセット、重かったろうにと思うような、きちんとしたカップアンドソーサーで、きちんとした紅茶を入れる。
野営用の簡易湯沸かし道具まで持って来ていて、徹底している。実は楽しんでいるのかもしれない。
「美味しい!楽しい!ピクニックみたい!」
トリー殿下は、イレギュラーな場所でのお茶会を大変お気に召したようだ。
うん、全然、訓練しない流れだけど。
「お友達増えたのも嬉しい! ジョス!お茶煎れるの凄く上手!」
「光栄です。」
ジョセフィンも、お友達に成って攻撃を受けて、すんなり受け入れた。笑顔が柔らかいから、俺につきあって仕方なく、ではない、と、思う。
ジョセフィンに調べてもらったところ、寮の殿下の部屋の前に一応の騎士はいるものの、一階だし、テラスからは出入りしようと思えばできてしまうようだ。
日中、ぎっしりと護衛騎士に囲まれているのに、なんとも雑な感じ。
でも、指摘して、警備が厳しくなると、トリー殿下の息抜きをする余地がなくなるかもしれないので微妙なところ。
‥‥外部から、攻撃を受けたりしないように、何人か手配しておこう。
先日、休憩室の前の廊下で、遭遇した時のように、普段のトリー殿下は、数人のクラスメートと護衛騎士に囲まれて過ごしているんだそうだ。
「なんかねぇ。一応皆気を遣ってくれているんだと思うんだけどね‥‥。」
まだ早朝は冷える。ホカホカしたカップを両手で包むようにもって、ミルクティを一口二口飲んでトリー殿下はふぅーと溜め息をついた。
「寮に入ったら何か楽しい事が待っているような気がしたんだ‥‥。」
トリー殿下の眉がきゅっと下がる。
「楽しくないの?」
「うーん‥‥、あ!今楽しいよ!」
ぱっと顔を上げて、笑顔を見せた。笑顔を見せてくれたけど、先ほどの沈んだ様子が気になる。
「寮では普段はどんな感じなの?」
「王宮とあまり変わらないかな。侍女がいないだけで。あ!湯浴みは自分でできるようになったよ。お湯は持ってきてもらうんだけど。」
寮での食事は、特別室で用意された食事を、日によってご学友と一緒だったりすることもあるが、基本的に一人で食事をし、部屋に戻る。それだけ、だそうだ。
今朝も朝食の時間になると誰かが呼びにくるけれど、それまでは、抜け出しても誰も気がつかないらしい。
学園の手配がずさんなのか、でも王宮でも変わらないのか。
たわいない会話で、トリー殿下は楽しそうに笑う。
ヘンリーがダンスが苦手で、俺とジョセフィンが練習相手で女性パートをやったという話をしただけで大受けだった。
「楽しそう!僕のその練習に加わりたい!」
「あの周りの人達が反対しない?」
「絶対反対する!」
ぷうっとほっぺたを膨らませた。
「特進科のダンスの授業はどんな感じ?」
「決まった令嬢達と踊るけど、皆上手だから。男性が女性パートを踊るとかも全然なくて。」
「まあ、特進科だったら、入学前にしっかりダンスレッスン受けてる人達ばっかりだよね。」
「そうなんだよね。いつも舞踏会みたい。」
「授業なんだし、ダンスが皆上手なのは悪くはないんだろうけどね。」
早朝の訓練室に、ついて来たジョセフィンは、お茶を入れる道具だとか、ちょっと摘むのものなんかを持参していた。
テーブルは、他の場所から借りて来たらしい。
温かいミルクティーと小さなパン。チーズの入ったものと、サラミを刻んだものが入ったもの。
ティーセット、重かったろうにと思うような、きちんとしたカップアンドソーサーで、きちんとした紅茶を入れる。
野営用の簡易湯沸かし道具まで持って来ていて、徹底している。実は楽しんでいるのかもしれない。
「美味しい!楽しい!ピクニックみたい!」
トリー殿下は、イレギュラーな場所でのお茶会を大変お気に召したようだ。
うん、全然、訓練しない流れだけど。
「お友達増えたのも嬉しい! ジョス!お茶煎れるの凄く上手!」
「光栄です。」
ジョセフィンも、お友達に成って攻撃を受けて、すんなり受け入れた。笑顔が柔らかいから、俺につきあって仕方なく、ではない、と、思う。
ジョセフィンに調べてもらったところ、寮の殿下の部屋の前に一応の騎士はいるものの、一階だし、テラスからは出入りしようと思えばできてしまうようだ。
日中、ぎっしりと護衛騎士に囲まれているのに、なんとも雑な感じ。
でも、指摘して、警備が厳しくなると、トリー殿下の息抜きをする余地がなくなるかもしれないので微妙なところ。
‥‥外部から、攻撃を受けたりしないように、何人か手配しておこう。
先日、休憩室の前の廊下で、遭遇した時のように、普段のトリー殿下は、数人のクラスメートと護衛騎士に囲まれて過ごしているんだそうだ。
「なんかねぇ。一応皆気を遣ってくれているんだと思うんだけどね‥‥。」
まだ早朝は冷える。ホカホカしたカップを両手で包むようにもって、ミルクティを一口二口飲んでトリー殿下はふぅーと溜め息をついた。
「寮に入ったら何か楽しい事が待っているような気がしたんだ‥‥。」
トリー殿下の眉がきゅっと下がる。
「楽しくないの?」
「うーん‥‥、あ!今楽しいよ!」
ぱっと顔を上げて、笑顔を見せた。笑顔を見せてくれたけど、先ほどの沈んだ様子が気になる。
「寮では普段はどんな感じなの?」
「王宮とあまり変わらないかな。侍女がいないだけで。あ!湯浴みは自分でできるようになったよ。お湯は持ってきてもらうんだけど。」
寮での食事は、特別室で用意された食事を、日によってご学友と一緒だったりすることもあるが、基本的に一人で食事をし、部屋に戻る。それだけ、だそうだ。
今朝も朝食の時間になると誰かが呼びにくるけれど、それまでは、抜け出しても誰も気がつかないらしい。
学園の手配がずさんなのか、でも王宮でも変わらないのか。
たわいない会話で、トリー殿下は楽しそうに笑う。
ヘンリーがダンスが苦手で、俺とジョセフィンが練習相手で女性パートをやったという話をしただけで大受けだった。
「楽しそう!僕のその練習に加わりたい!」
「あの周りの人達が反対しない?」
「絶対反対する!」
ぷうっとほっぺたを膨らませた。
「特進科のダンスの授業はどんな感じ?」
「決まった令嬢達と踊るけど、皆上手だから。男性が女性パートを踊るとかも全然なくて。」
「まあ、特進科だったら、入学前にしっかりダンスレッスン受けてる人達ばっかりだよね。」
「そうなんだよね。いつも舞踏会みたい。」
「授業なんだし、ダンスが皆上手なのは悪くはないんだろうけどね。」
48
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載。
悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。
その数日後王家から正式な手紙がくる。
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ!
※ざまぁ要素はあると思います。
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる