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第3章
第158話 なるべく優しく聴取しよう
ゼラルド伯爵令息がコクリと頷いた。
「そう。エルマーさんは良い人なんだ。ちょっとズレてるところはあるけど。‥‥でも‥‥従者が‥‥。従者に恵まれなかったんだと思う‥‥。」
エルマーさんが図書委員に加入すると同時にエルマーさんの従者のカティス男爵令息も加入してきた。
そこまでは問題なかった。けれど、何故か同じ特進科のクラスでもそれまで全く交流がなかったラウム伯爵令息までもが図書委員に加入したいと申し出て来て、そこから何かおかしくなってきたという。
ラウム伯爵令息はおだてたりするのが上手いらしく、エルマーさんに上手く取り入っていつの間にか侍従候補と呼ばれるようになっていた。
活動拠点である図書委員の執務室は何の断りもなく模様替えされて、活動自体が図書とはほぼ関係がないおしゃべりやお茶で時間を費やすような事しかしなくなってしまった。
ゼラルド伯爵令息の意見はほぼ無視されていた。
しかしエルマーさんはゼラルド伯爵令息が図書室に籠って読書に明け暮れるのことを邪魔したりはしなかったから、ゼラルド伯爵令息も割り切っていたそうだ。
委員会が廃止になって、委員の特典である希少図書の保管室への入出が出来なくなるよりよい思っていたとのこと。
ある時、ラウム伯爵令息が淑女科の女性徒を連れて来た。それがロセウス子爵令嬢だった。
割り切ってある程度メンバーから距離を置いた気持ちで居たはずなのに、ロセウス子爵令嬢におだてられたり甘えられたりしているうちに、巻き込まれてしまったそうだ。
「‥‥ペンダントは本当に誰がどうしたのかは知らない。でも、あの三人のうちの誰かなんだろうけど‥‥。
盗まれたと思ったら、見つかったって言ってた。そしてこれはチャンスなんだって言われた。」
「何のチャンス?」
ゼラルド伯爵令息がやっとペンダントの件について話し始めてくれた。色々気になるけどなるべく話の腰を折らないように気をつけながら聞こう。ボソリボソリとゼラルド伯爵令息が続けた。
「エルマーさんが‥‥、子供の頃に家同士で決められた婚約から解き放たれるチャンスだって。アイヴリンガー侯爵令嬢の持ち物からペンダントが発見されれば、
それだけで婚約解消の事由になるって。」
「家同士で決まった婚約を解消したいって、エルマーさんが言っていたの?」
「いや‥‥。それはと思う。でも、可哀想だ可哀想だって皆が言っていたんだ。」
「『可哀想』って、なんで?」
話を聞いていても、彼らの行動の理由が理解できなくてつい突っ込んで訊いてしまう。
「同じ図書委員だから話をしていただけなのに、女子と二人で居たからと婚約者から苦情を言われていたって。そんな自由すらないのは可哀想だって。
そしてそんなに心が狭い婚約者と、卒業と同時に結婚をさせられるなんて可哀想だって‥‥。」
「‥‥婚約者がいるなら、男女で二人きりでいたら苦情を言われるのは当然だと思うけど。」
「『そうかもしれないけど、まだ学生なのに可哀想』ってマリエルが‥‥。」
可哀想、可哀想って意味不明だよな。俺が少し苛ついて来たのが伝わったのか、ゼラルド伯爵令息の声音が弱まって来た。いけない。なるべくゆっくり優しい口調で言う様に努めよう。深呼吸して質問を続けた。
「子爵令嬢がそう言ったのを真に受けたの?」
「『想い合っているのだからせめて学生のうちだけでも一緒にいたいだけなのに』って‥‥。」
「想い合っているって誰と誰のこと? エルマーさんと子爵令嬢?」
「‥‥。」
確認しようとしたら、ゼラルド伯爵令息がギュッと唇を引き結んだ。え?ここまで話して黙秘?
「そう。エルマーさんは良い人なんだ。ちょっとズレてるところはあるけど。‥‥でも‥‥従者が‥‥。従者に恵まれなかったんだと思う‥‥。」
エルマーさんが図書委員に加入すると同時にエルマーさんの従者のカティス男爵令息も加入してきた。
そこまでは問題なかった。けれど、何故か同じ特進科のクラスでもそれまで全く交流がなかったラウム伯爵令息までもが図書委員に加入したいと申し出て来て、そこから何かおかしくなってきたという。
ラウム伯爵令息はおだてたりするのが上手いらしく、エルマーさんに上手く取り入っていつの間にか侍従候補と呼ばれるようになっていた。
活動拠点である図書委員の執務室は何の断りもなく模様替えされて、活動自体が図書とはほぼ関係がないおしゃべりやお茶で時間を費やすような事しかしなくなってしまった。
ゼラルド伯爵令息の意見はほぼ無視されていた。
しかしエルマーさんはゼラルド伯爵令息が図書室に籠って読書に明け暮れるのことを邪魔したりはしなかったから、ゼラルド伯爵令息も割り切っていたそうだ。
委員会が廃止になって、委員の特典である希少図書の保管室への入出が出来なくなるよりよい思っていたとのこと。
ある時、ラウム伯爵令息が淑女科の女性徒を連れて来た。それがロセウス子爵令嬢だった。
割り切ってある程度メンバーから距離を置いた気持ちで居たはずなのに、ロセウス子爵令嬢におだてられたり甘えられたりしているうちに、巻き込まれてしまったそうだ。
「‥‥ペンダントは本当に誰がどうしたのかは知らない。でも、あの三人のうちの誰かなんだろうけど‥‥。
盗まれたと思ったら、見つかったって言ってた。そしてこれはチャンスなんだって言われた。」
「何のチャンス?」
ゼラルド伯爵令息がやっとペンダントの件について話し始めてくれた。色々気になるけどなるべく話の腰を折らないように気をつけながら聞こう。ボソリボソリとゼラルド伯爵令息が続けた。
「エルマーさんが‥‥、子供の頃に家同士で決められた婚約から解き放たれるチャンスだって。アイヴリンガー侯爵令嬢の持ち物からペンダントが発見されれば、
それだけで婚約解消の事由になるって。」
「家同士で決まった婚約を解消したいって、エルマーさんが言っていたの?」
「いや‥‥。それはと思う。でも、可哀想だ可哀想だって皆が言っていたんだ。」
「『可哀想』って、なんで?」
話を聞いていても、彼らの行動の理由が理解できなくてつい突っ込んで訊いてしまう。
「同じ図書委員だから話をしていただけなのに、女子と二人で居たからと婚約者から苦情を言われていたって。そんな自由すらないのは可哀想だって。
そしてそんなに心が狭い婚約者と、卒業と同時に結婚をさせられるなんて可哀想だって‥‥。」
「‥‥婚約者がいるなら、男女で二人きりでいたら苦情を言われるのは当然だと思うけど。」
「『そうかもしれないけど、まだ学生なのに可哀想』ってマリエルが‥‥。」
可哀想、可哀想って意味不明だよな。俺が少し苛ついて来たのが伝わったのか、ゼラルド伯爵令息の声音が弱まって来た。いけない。なるべくゆっくり優しい口調で言う様に努めよう。深呼吸して質問を続けた。
「子爵令嬢がそう言ったのを真に受けたの?」
「『想い合っているのだからせめて学生のうちだけでも一緒にいたいだけなのに』って‥‥。」
「想い合っているって誰と誰のこと? エルマーさんと子爵令嬢?」
「‥‥。」
確認しようとしたら、ゼラルド伯爵令息がギュッと唇を引き結んだ。え?ここまで話して黙秘?
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