騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹

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第3章

第194話 契約

ジョセフィンの話では、俺が魔導科の彼らと話をしていたとき、軽く威圧も放っていて冷風魔法との相乗効果でかなり緊迫した空気になっていたらしい。

マーギットさんは店の外に出て来た時、やたら強い魔力を纏った壁が出来ていて中に割って入る事もできないけど、俺の魔法だとは検討が付いたので解除されるのを待っていたそうだ。

「相乗効果で結果的に、インパクトが強かっただけみたいですよ。」
「マーカス君の魔法は面白いなぁ。」

マーギットさんは特にしつこく再現しろとも言わず、笑っていた。ユリウスは、良くわからないポーズ付きで再現(?)をしていた。俺そんなポーズ取ってないからね。‥‥取ってないよね?

焼き芋の売れ行きは好調で、あっという間に仕入れ値分以上の売上げが出たらしく、クグロフさんが奥さんの治療代とともに返金に来た。
奥さんは、風邪をこじらせたようだ。それと栄養不足気味だったらしい。
俺はクグロフさんが差し出して来たお金の入った革袋を押し戻した。

「まだ治療必要でしょう?クグロフさんも。見舞金として受け取ってください。」
「し、しかし‥‥。」
「じゃあ、業務提携しませんか? 後でうちの商会の従業員寄越すんで。」

クグロフさんの店の立地は凄く良い場所なんだ。
商業旅団や乗り合い馬車が中継する街になっているのに、食事処は足りていない。雪で屋台が出せていない。除雪後に屋台を出すことは可能そうだけどね。
クグロフさんの店でテイクアウトの食品の販売が出来ればかなり人気になるはずだ。

「業務提携‥‥。良いのですか?うちなんかに‥‥。」
「場所は良いし、それに以前街に来たときに食堂で食べたパン、美味しかったですから。あれって多分クグロフさんが焼いたパンでしょう。
治療費も稼いで早く復帰してもらいたいですし。」

俺がそう言うとクグロフさんは目を潤ませて頭を下げた。業務提携に了承してくれたので、すぐに召還獣通信で王都のエルスト商会に連絡した。
午後の便か明日の朝の便で向かうと返事が返って来た。具体的な提携内容は、従業員が来てから相談してもらうことにして、先に契約を済ませてしまう。
実のところ、ドルートル旅団長と街の商工会長が、店の様子をチラチラと見てるんだよね。
あ、儲かるって気がついたんじゃないかな。

店の奥で、書類をじっくりとクグロフさんに確認してもらい契約書にサインをしてもらった。俺もサインをして、商会の印も押した。

「エルスト商会のお名前は聞き及んでおりましたが、‥‥立場の有る方だったのですね。」
「よろしくお願いしますね。」

クグロフさんは、今、仮契約をして後から商会の従業員が来た時に本契約を結ぶ流れだと思っていたらしい。
ちょっと当惑した様子になったので契約を解除するかと聞いたら、単に手続きがあっという間に終わって驚いただけだったようだ。

契約も終わって、店の奥から出たら、クグロフさんに街の商工会長と、ドルートル旅団長が駆け寄って来た。

「クグロフさん、除雪の件では迷惑をかけてすまなかったね。お詫びに、この店で旅団の商品を販売出来る様に取りはからいたいのだが。」
「いやいや、クグロフ君。商工会が協力するよ。まだ怪我をしていて思う様に働けないだろう?」
早速来たね。

割って入って消音魔法を展開して契約書の写しを見せる。消音魔法は今日は大活躍だね。

「はい。既に我がエルスト商会とクグロフパン店は、業務提携の契約済みです。横槍は止めてくださいね。」
「な、なんだ?君は!若造が!」
「ちょ、エネルさん。よしなさい。彼は貴族だよ。」
「え?貴族?」

ドルートルさんから俺が貴族と聞いて、急に表情を変えた商工会長のエネルさん。いやいや、貴族がどうとかじゃなくて、ちゃんと契約してるって言いたかったんだけど。
まあ、話が早い方が面倒でなくてよいか。
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